人形劇サークル とんとん
チャレンジ分野:

プロフィール

■活動履歴

代表の村山恵美子を中心に主婦6人で平成元年設立。昨年結成20周年を迎えた。

サークル名の「とんとん」は子どもの心を「とんとん」とノックして一緒に楽しもうという意味がある。人形劇を通した子どもたちとの交流を目的に活動している。「やまがた人形劇の会」に所属し、毎年5月の「人形劇のつどい」、10月の「人形劇合同公演」に出演している。また他団体とのジョイント公演にも出演し、活動の幅を広げながら相互研鑽に励んでいる。

とんとんには演劇を専門にやってきたメンバーはいないが、常に試行錯誤と改良を重ねて「進化し続けるとんとん」をモットーに前進している。こうした長年の実績から根強いファンに支えられ、県内各地の幼稚園、保育園、小学校、公民館、障害者施設、高齢者施設等で公演している。年間約25回の公演をこなしている。

 

チャレンジのきっかけ

当時3世代同居の専業主婦だった私(村山)の行動エリアは、自宅のほかに近くのスーパーと公園、それに子どもが通っている幼稚園だけだった。
そんな時、幸運にも「一緒に人形劇をやらない?」と誘われた。目の前がパッと開け「私も社会参加したい」と3人の子どもを連れて活動を始めた。
人形劇を通して社会参加することにより世の中への「目」が開かれ、いろいろなボランティア活動に関わるようになった。そしてボランティアで関われば関わるほど世の中の矛盾と理不尽さに気が付き、「世の中のことをもっと知りたい」と思い、通信で大学の社会学部に入学した。大学での学びは活動に厚みと深さを与え、社会学部卒業後は法学部に入学し、ボランティア活動とともに学生生活を続けている。
こんな母親を見てきた子どもたちは、それぞれに自分の道を見つけているように思う。長女は20歳になったとき、「お母ちゃんが、自分のやりたいことをどんどんやってきたので、私も自分のやりたいことが出来る」と言っていた。
また夫は生活的自立を獲得しつつあり、それぞれに相手を尊重した老後を楽しめそうである。
これまでその時その時の状況に合わせながら活動を続けてきた。続けられたのは家族の支えと仲間がいたことに尽きると思う。心から感謝している。
(村山恵美子)

三女が七ヶ月の時に人形劇を始め、背中におんぶして練習したり母乳を飲ませながら音響をしたり・・・、幼稚園に入るまで練習日はいつも一緒でした。その子も今年成人式を迎えました。
私がとんとんに丸20年いられたのは、子どもがいて家族に支えられたのと、『人形劇が大好き』だからです。人形劇のほかに幼児グループで月1回一人で、絵本、わらべうた、紙芝居をさせてもらっています。その幼児グループの親子が、人形劇を観に来てくれるのが一番うれしいです。
もうひとつの好きなことは、参加型紙芝居を手作りし幼児グループで発表することです。参加型紙芝居は子どもたちとのふれあいがあるので大好きです。
人形劇、紙芝居・・・いろいろやって来て,子どもたちの笑い声、反応して出る言葉、「たのしかった」「またきてね」の言葉に元気とパワーをもらい、励まされています。人形劇を通して「自分が知らない自分」を引き出されるのがとても楽しい。お母さん達が人形劇に興味を持って、子どもたちと楽しい時間を過ごしてくれるといいな~。若いときこそ、子どもと一緒に好きなことにチャレンジして欲しいと思います。
(原田陽子)

上演風景
子供たちとの人形遊び

チャレンジの道のり

とんとん結成時は資金が無くバザーをやって調達し、子どもが通っている幼稚園で上演させてもらった。その後図書館の「子どものつどい」や市民会館の「人形劇合同公演」に参加するようになり、活動が広がっていった。

人形、大道具、小道具、音響、脚本は全て手作りで「とんとんのオリジナル」に徹している。春から夏は人形制作と稽古。秋から冬にかけて県内各地で公演している。公演終了後すぐに来年の予約が入ることもあり、多くの人に支えられている。

人形劇はその制作過程と上演過程に魅力があると思う。演目を決め、脚本、人形、大道具、小道具、音響効果と一つひとつ作り上げていく魅力。そして稽古を重ね上演するときのライブの醍醐味。観ている子どもたちと一緒にひとつの舞台を作り上げていく魅力である。この魅力の虜になり、気が付けば20年経っていたのである。

毎年新作又はリメイクで一作品を作っている。基本的に昔話から題材をとっているが、マンネリに陥らないように日本の昔話と世界の昔話を交互に取り入れている。また配役にも変化をもたせ、いろいろなキャラクターに挑戦している。とにかく演じるとんとんのメンバーと観客がとことん楽しめる人形劇を目指して活動を続けているのである。

この20年間にメンバーの入れ替わりがあったが、自然に新しいメンバーが加入して来ることは「とんとんの魅力」かもしれない。さらに本番中のアクシデントにもチームワークと度胸でカバーできることも「とんとんの魅力」と思っている。

人形劇を始めてからの私自身の成長は、①こんなに長くひとつのことを続けてこられたこと!②信頼できる仲間を得られたこと!③必ずしも同じ考えでなくても良いことを知り、いろいろな意見を言い合いながら成長してこられたこと!④家庭以外の自分の居場所が持てたこと!⑤いろいろなハプニングにも動じない度胸がついたこと!⑥病気やケガをしなくなったこと!いや、できなくなったこと!なぜなら、1年も前から予約して楽しみに待っていてくれる人がいるから!

人形劇をやっていることで、日々の中に〝シャン〟とした自分を感じることができて嬉しい。家族も私が活き活きしていることで嬉しそう。子どもたちは自分を表現することを上手くやっていると思う。

あるディサービスでの公演で、とんとんの人形劇を観たおばあちゃんが人形に向かって「ご苦労様。これで長生きできる元気をもらいました」と、嬉しそうに頭を下げていたことが忘れられない。こんな私たちでもおばあちゃんに元気をあげられたことが、本当に嬉しかった。人形劇を通して人の心に何かを届けられる〝よ ろ こ び″が、私の元気の源になっている。

人形劇にしかできない仕掛けや演出、また演者と観客の生のやりとりをいっぱい楽しんで欲しい。

(神尾瑠美子)

人形劇をやってきたことで、「○○ちゃんのお母さん」というだけでなく、自分自身の役割、居場所が出来たような気がする。

数年前、娘が「お母さんみたいな仕事がしたい」と言ってくれたのがうれしかった。舞台を走りまわって演じるので体力的には疲れるが、それ以上に楽しいのが家族に伝わっていると思う。

台詞を覚えるとき、夫や子ども達に相手役をしてもらうこともあるが、結構ノリノリでやってくれる。

10年間子どもと「とんとん」の追っかけをしてとんとんに入った。子どもたちの笑顔を見るのが、毎回楽しみ!

(長谷川実穂)

専業主婦として家事、育児の毎日。家に居るとやる事が次々・・・。自分の時間というものについて考えるようになった。そしてその〝何か″を模索すること数年・・・。

第2子の小学校入学を期に「読み聞かせ」を始め、子どもたちの笑顔を見ることに喜びを感じました。その仲間との何気ない会話「ゆくゆくは人形劇をやってみたい!」から、とんとんへ。

転勤で山形へ来て9年、やっと頭の片隅にあったことが実現しました。「いっしょうけんめい」は、わが子にも伝わっていると思います。

(針生明美)

現在の活動内容

現在では人形劇のほか「絵本の読み聞かせ」活動や「人形劇あそびのワークショップ」も行っている。毎月定期的に依頼されている施設もあり、益々活動が広がっている。公演先の子どもたちの「おもしろかったよ」「また来てね」の言葉に励まされ、元気をもらっている。

忙しい主婦業と自己実現を両立させる活動は、なによりも家族の応援が支えとなっている。また活き活きと活躍する妻と母の姿は、家族にとっての大きな応援団となっていると自負している。

今後の目標・メッセージ

今後の目標は人形劇と子どもたちを結びつけること。子どもたちに生の劇を(観るのではなく)体験してほしいと思っている。

さらに究極の目標は、今関わっている子どもたちが大人になったとき、「子どもの頃、あんな大人に会えてよかった」と言われる大人になることです。まだまだ発展途上ですが、目標は大きく、倦まずたゆまず進んでいきます。

活動をはじめる方へのメッセージは、一歩ずつ活動と経験を積み上げていって下さい。振り返ったとき自分の世界が広がっています。そして仲間を作って下さい。一人で出来ないことも仲間と一緒なら出来ます。

(平成22年2月取材)