阿部有希結婚相談所 代表 山形もがみ寺子屋婚活塾 塾長 最上広域婚活実行委員会2019年度委託事業者 元山形県最上町地域おこし協力隊
阿部 有希さん
チャレンジ分野:

プロフィール

天童市出身。仙台市で会社員をしている時に、最上町出身の夫と出会い結婚。

2016年1月に一家で夫の地元へ移住。寺子屋婚活塾代表の阿部惠理子氏に師事し、最上町地域おこし協力隊として町の婚活の活動を始め、以後3年に渡り任務を全うする。

2019年4月に「阿部有希結婚相談所」を立ち上げ、地域に密着した結婚支援を行っている。

チャレンジのきっかけ

 仙台市で女性の起業支援の仕事に携わりながら、自身でも「起業したい」という目標を掲げていた阿部さん。そんな矢先の2011年3月、東日本大震災で被災する。
 電気もガスも水道も使えない。これから一体どうしたらいいんだろうと途方に暮れ、1人では生きていけないとその時初めて気が付いたという。それから自身の婚活を始め、最上町出身の男性と知り合い、約1年後に結婚した。
 子どもが生まれ、生活環境が少しずつ変化していく中で、一つの転機は夫が実家に戻り農業を始めることになったこと。阿部さんが師匠と呼ぶ阿部惠理子さんが、以前最上町で婚活の講演をしたことがあり、そのご縁もあって、地域おこし協力隊として町の婚活支援に関わることを提案してくれた。
 「起業する」ことを目標としていたが、この時はまだ、婚活を仕事にすることになるとは夢にも思っていなかったという。
 最上町は人口が8400人ほどの小さな町。移住したばかりで地域には知り合いはおらず、さまざまな迷いや不安もあった。しかし、町長や周りの皆さんから背中を押され、最上町の地域おこし協力隊として、何かひとつのことをやり遂げてみようという気持ちになった。この決断が、阿部さんの新たなチャレンジの一歩となっていく。

チャレンジの道のり

 「婚活」を専任とした活動を行う地域おこし協力隊は、最上町では初めての試みだった。町では、「結婚相談所」として旧満沢小学校の職員室と校長室を利用した活動拠点を提供してくれた。

 結婚したい男女の年齢層は幅広く、本人からの相談はもちろんあるが、子どもの結婚を心配する親御さんがたくさん来ていた。中には仲人さんからの相談もあった。最上地域の市町村をはじめ、村山地域、遠くは置賜地域からも足を運んでくる人もいたという。
 活動は相談業務だけではなく、親御さんを対象とした婚活講座や、地元や近隣町村民を対象とした結婚応援セミナーなど、さまざまなイベントを開催し、メディアにも多数取り上げられた。
  阿部さんはその活動の中で「高校生による先生のための婚活イベント」として、新庄市内の高等学校で1年間に渡り、総合の授業を担当した。はじめは何をやったらいいのかわからなくて、物怖じしていた生徒たちが、次第にコミュニケーションも上手くなり、人前でも堂々と発言できるようになった。

 イベントに向けて真剣に取り組む姿にとても感動し、生徒たちの将来に少しでも役立つお手伝いができたかなと思える瞬間を味わう。最後の授業では生徒一人一人から手書きの手紙をもらい、3年間で一番心に残る活動となった。高校生による婚活イベントのことは山形新聞にも掲載され、県内に広く知れ渡る良い機会となったという。

職員室を改装した室内。ウェディングドレスが目を引く。
静かで落ち着いた環境で気兼ねなく話ができる。
生徒たちがデザインした婚活イベントのチラシ
婚活イベントへ向けての総合の授業での様子

現在の活動内容

 3年の任期を終えた阿部さんは、2019年4月に、「阿部有希結婚相談所」を立ち上げ、これまでと変わらず、同じ場所で地域に根差した婚活の支援を行っている。完全予約制で、周囲にはわからないようにプライバシーが守られた静かな環境で婚活ができるように配慮されている。

 さまざまな相談を受ける中で、昔ながらのしきたりや風習が根強く残っている土地柄で育ってきた男女は、自分の背負っている環境を守らなければいけないと考えている人が多いというのが見えてきた。地域の特性も関係しているのか、口下手で奥手の人が多いようにも感じる。多人数の婚活イベントには向かない人も中にはきっといるので、そのような人ほど、利用してほしいのが結婚相談所だ。

今後の目標・メッセージ

 1人でも多くの人を結婚に結び付けられる活動を目指し、自らを現代版仲人と呼び、結婚したい男女、その親御さんたちに向けて、昔と今の結婚事情は違うということや本人たちの気持ちを理解したうえで結婚支援を今後も行っていく。
  都会では当たり前の結婚相談所だが、田舎では『恥ずかしい』とか『最後の砦』というイメージが根強く残っている。本来それは違い、結婚相談所に来たほうが絶対に近道だと思っている。『結婚相談所は恥ずかしくない』というキャッチフレーズを掲げてこれからも活動し、また、仲人養成のための講座も開催していく。

 「婚活男女が結婚しやすい環境を作っていきたいですし、そのためには地域の支援者を動かすことも必要です。婚活支援は1人ではできないことなので、一緒に活動してくれる仲間を増やしていきたいと考えています。まだまだ難しい問題はありますが、前向きに捉え、『やってできないことはない』の精神で進んできたいと思います」。

(令和元年6月取材)