西川町『かわどい亭』代表
髙橋 みつ子さん

プロフィール

寒河江市出身。

結婚を機に西川町の農家で暮らし48年、3世代7人家族の“お母さん”として家族を見守りながら、「かわどい亭」の代表として活動している。

髙橋みつ子さん

「かわどい亭」のメンバーは、西川町吉川地区に住む60~70代の女性が7人。

閉校になった校舎を活用して食事を提供することで住民の“拠り所”を復活させ、活性化にも寄与している。

チャレンジのきっかけ

 地域のシンボル的存在だった川土居小学校が2012年に閉校したことで、地域から子ども達の声が聞こえなくなり、校舎からは明かりが消えた。そうした状況に危機感を覚えた住民たちから、校舎を再活用できないかという声が上がった。
 白羽の矢が立ったのは、地域の“料理好きな”お母さんたち。料理コンテストで最優秀賞に輝くなど料理の得意な女性が地元に多いことから、旧校舎を利用して料理を提供してはどうかと町の人達から提案されたのだった。町外からも多くの人に来てほしいという願いがあった。そんな地域の期待を一身に受け、2014年の春に「かわどい亭」の活動がスタートした。

旧川土居小学校校舎

 
旧校舎の再活用から「かわどい亭」がスタートした

チャレンジの道のり

 同年秋のオープンに向けて、具体的な取り組みが始まった。「どんな料理を提供するか」「今流行りの料理は作れない」とメンバーから様々な意見が出された。そして決まったのが、自分たちの畑で採れた野菜を使い、いつも家で作って食べている料理を提供していくことだった。給食室と食堂、給食用に使用していた食器もそのまま利用できる。食材は自分たちが育てた野菜を持ち寄ることにし、まずは山菜とキノコの季節にだけ営業することになった。

 これで「作る」環境は整った。しかし、いざ開業してはみたものの、最初のうちは集客に苦労することも多かった。ネックとなったのは発信力がないことで、告知することなくオープンしたことが要因だった。時には親戚や友人に声をかけて来てもらったり、自分たちのできる範囲で集客していくうちに“お母さんたちの店”の評判は、口コミやSNSで少しずつ広がりを見せていった。
 また、町民からの協力も得られた。この辺りはその昔、出羽三山参りの宿坊として栄えた地区。当時、宿坊を営んでいた住民からは、使わなくなった御膳や食器が提供され、徐々に「かわどい亭」としての形ができてきた。

現在の活動内容

 旧川土居小学校の校舎内には、「かわどい亭」の他、西川町歴史文化資料館も併設されることが決まり、同時にこれまで理科室や保健室だったところにお菓子と惣菜の加工所が造られることになった。10か月が経ち、こうして改装したことから、いつでも営業できる環境が整い、2019年5月に季節の営業から、毎週末オープンの食堂として本格的に始動した。

 「かわどい亭」は、現在は地域で行うイベントにも積極的に関わっている。恒例の「そばまつり」では天ぷらを作り、夏はビアパーティーの料理、高齢者の集まりの時はお弁当を提供するなど、お母さんたちの料理が住民の交流の場をつくり、地域に元気を与えている。
 メニューは普段家庭で作っている料理から、メンバーでアイデアを出し合ってアレンジしたものまでバリエーションも豊富だ。特に、予約が必要な「御膳料理」には凍み大根や凍みもち、しそ巻、あけびの焼物など、昔から食べられてきた郷土料理が並ぶ。
 こうした「かわどい亭」の活動は新聞でも取り上げられ、採れたての野菜を使った家庭料理が食べられると話題になり、客数も大幅に増えた。お客さんの帰り際には、感謝の気持ちを込めて全員で見送る姿が。自分の家に帰ってきたようなお母さんたちの温かさと、ほっとできる空間がこの店の魅力だ。

バリエーション豊富なメニューが並ぶ

今後の目標・メッセージ

 「“おいしかった!”と言ってもらえることが何よりもうれしいです。気心の知れた仲間たちと楽しく活動しながら、人に必要とされ、お客さんに喜んでもらえることがやりがいにつながっています。私たちの活動を通して受け継がれてきた郷土料理を若い人たちにもっと伝えていきたいです。」

(令和元年11月取材)