救急救命士
佐藤 真由さん
チャレンジ分野:

プロフィール

1996年 山形県酒田市生まれ 

2012年 山形県立酒田光陵高等学校入学

2015年 茨城県の専門学校に入学 救急救命士の資格取得を目指す

2017年 救急救命士の国家試験に合格

2019年 西置賜行政組合消防本部(長井市)に入職

チャレンジのきっかけ

 佐藤さんが救急救命士を目指すきっかけとなったのは、2011年3月に発生した東日本大震災。被災地で活動する消防署員らの活動をテレビで観て、心を動かされた。当時中学生だった佐藤さんは、看護師の姉の影響で将来の夢は医療職に就きたいという漠然とした想いは持っていた。しかし、多くの人が目指す看護師ではなく、もっと別な道はないかと模索していたときに目にしたのが、災害現場で奮闘する消防署員たち。佐藤さんはその姿に、将来の自分を重ねた。

 

消防の訓練を積む佐藤さん

チャレンジの道のり

 夢を抱き続け、高校を卒業後茨城県にある専門学校に進み、救急救命士の資格取得のため学び始めた。通常4年かけて取得するところをわずか2年間でこなすというカリキュラムだったこともあり、専門学校時代は多忙を極めた。覚えることが多すぎて、勉強は予想以上に大変だった。しかし、同期と励まし合って、乗り越えることができた。
 こうして努力を重ね、救急救命士の国家資格は見事一発合格した。しかし、救急救命士として働くためには公務員試験に合格する必要があるため、卒業後はそのための勉強をスタートさせた。実家がある酒田市へ戻り、アルバイトをしながら勉強を続けた。残念ながら公務員試験突破はすぐに叶わなかったが、めげることなく挑戦し続け、晴れて合格。2019年4月より長井市にある西置賜行政組合消防本部にて、西置賜地域で初めての女性救急救命士としての第一歩を踏み出した。救急救命士の資格をなんとしても活かしたかったので、公務員試験はあきらめたくなかった。友人たちが合格し、一足早く仕事を始める姿を見て焦りもあったが、もともと負けず嫌いな性格なので、それが功を奏したようだ。

苦労を共にした専門学校時代の仲間と(写真右 佐藤さん)

現在の活動内容

 勤務時間は、朝8時30分から翌朝8時30分までの24時間。もちろん途中、仮眠をとることができるが、要請が入れば休みなく勤務することになる。24時間勤務は2日分の勤務と数えられるため、勤務が明ければ非番だ。こうしたシフトをほぼ交互に繰り返している。最初はなかなか慣れなかったシフトも、最近はやっと慣れてきた。とはいえ、たとえ休みの日だったとしても、大規模な火災があれば応援に駆け付けることもある。
  仕事の中心は火災、交通事故などの出動要請への対応だ。救急や消防のどちらも、男性と変わらない業務をこなしている。この他、火災の予防業務として立入検査や訓練など、業務は多岐に渡る。最近やりがいを感じているのは、訓練だ。何秒以内に正確に動作を行うかを目指すもので、1年前よりも早くできるようになっているのを実感すると嬉しくなる。
 こうして日々全力投球で過し、休みの日は、中学・高校時代から続けているバスケットボールでリフレッシュをしている。現在はバスケットボールのクラブチームに所属する他、高等学校のバスケットボール部でボランティアとして指導にあたっている。また、時折地元に帰り、友人と会う時間が息抜きとなっている。

救急訓練
勤務引継ぎの大交替

今後の目標・メッセージ

 佐藤さんが今後高めていきたいと考えているのは、医療の知識。それは自身の苦い経験がもとになっている。
 「以前救急で対応した際、患者さんの症状を的確に判断できず、病院に到着した際、大勢の医療スタッフに迷惑をかけてしまいました。私の説明が悪く、重篤な患者が搬送されてくると思わせてしまったことが原因です。医師が欲しい情報をきちんと聞き取り、選んで伝えることができている先輩のようになれるよう、訓練しています。救急救命士は医療従事者として、高い医療知識が必要なのです。」

  現在、山形県内で勤務する女性の救急救命士は約20人。西置賜管内では消防署員111人中、佐藤さんただ一人だ。佐藤さん自身は、男性の中にいても気苦労はないというが、今後女性の仲間が増えてくれることを心待ちにしている。
 「やはり同性で同世代の話し相手は欲しいですね。特にお弁当の時間…。消防士、救急救命士というと男性の仕事という印象があるかもしれませんが、女性だからこそできること、力を発揮できる場面がたくさんあると感じています。興味を覚えたら、迷わずこの道を選んで欲しいです。」
  現場で女性の患者に心電図をつけるときなど、同性ならではの視点で救急をサポートしている佐藤さん。また女性の取得者がまだ少ない大型免許の取得にも挑戦中で、将来は消防車など大きな車の運転もこなしたいと意欲的に取り組んでいる。
 忙しい毎日ではあるが家族から離れた土地で、健康を考え自炊をしながら一人暮らしでがんばる佐藤さんは、これからも持ち前の負けず嫌いな精神を活かしてチャレンジを続けていく。

笑顔で寄り添う救急救命士を目指す
訓練前に見せるお茶目な素顔
指導してくれる上司、先輩と

(令和2年6月取材)