You Tuber
渋谷 真子さん

プロフィール

2018年 7月  仕事中の事故により脊髄を損傷。下半身不随となる

2019年 8月  You Tubeで車イス生活の動画発信を始める

2020年11月  書籍「普通で最高でハッピーなわたし~特別でもなんでもない二度目の
        人生~」発売

2021年 6月  絵本「1日1日をハッピーに“Make each day a happy day”」発売

チャレンジのきっかけ

 山形県鶴岡市(旧朝日村)田麦俣、出羽三山のふもとの山間で茅葺き職人の娘として生まれ、幼い頃から自然の中で育った。学校を卒業後は会社員として働いていたが、父親の跡を継ぎたいと考え、退職。春は山菜など山の幸を収穫、夏と秋は茅葺きの修行、加えて実家で営む民宿の仕事を手伝うという生活をしていた。

 仕事の内容や山奥での暮らしからはイメージができない、いわゆる「ギャル」と言われるビジュアルで、当時から人目を引く存在だったが、特に気にすることもなく、茅葺きの修行に精を出していた。ところが26歳の夏、茅葺き屋根の補修中に転落。脊髄を損傷し下半身不随となり、車イスでの生活を余儀なくされることになる。

<怪我をする前の真子さん>

チャレンジの道のり

 大手術を終え、目を覚まし、今後は車イス生活になることを聞かされても落ち込むことはなかった。それよりも「車イス生活、だから何?」とすぐさま携帯電話を手にし、世界には車イスで暮らす人がどのくらいいて、どのような生き方をし、どのような活動をしているのかを調べ始めた。もし世界中で車イス生活なのが自分ひとりなら絶望していたかもしれないが、そうではない。車イスと共に生活をしている人が世界中にはたくさんいる。また、車イスで生活をしている人がいるからこそ仕事が成り立っている人もいる。そう前向きに受け止めることができた。

 もちろんリハビリは辛いし難しい。でもいつかはできるようになると信じてコツコツと取り組んだ。常にバランスボールに座って行動するような感覚のため、体幹を鍛えることが重要だった。腕だけで車イスの乗り降りをする場面も多くある。それらに慣れた今でも大変だと感じることは多いし、時には失敗してしまうこともある。しかし、できることはできるだけ自分でこなしている。中でも移動はすべて1人。東北地方なら車を運転し、遠方なら飛行機や新幹線も利用する。You Tuberとして車イスでの生活を発信していることがメディアでも取り上げられたことで講演の依頼も多く、周囲が驚くほどの行動力で全国津々浦々を飛び回っている。

<講演会の様子>

現在の活動内容

 You Tuberとして話題を集める中、2020年11月に書籍「普通で最高でハッピーなわたし~特別でもなんでもない二度目の人生~」(扶桑社)を発売。2021年6月には絵本「1日1日をハッピーに“Make each day a happy day”」が完成。絵本は、自身が車イス生活になったエピソードをもとにしたストーリーで、クラウドファンディングで資金を集めて完成に至った。車イスでもHappyに暮らしている人がたくさんいることを伝えたいという想いを込めて、庄内地域の幼稚園・保育園、小中学校の約200施設に寄贈。絵本はホームページ等でも購入することができる。英訳もされているので、世界にも発信していきたいと考えている。

 また、再生医療を受けるために、仕事の合間を縫って福岡と山形を行き来している。自身の幹細胞を培養する特殊な医療で、保険適用外なので1回の治療に何百万円もの費用がかかる。いつかは損傷した脊髄を再生し、再び歩くことを目指して、現時点では終わりの見えない治療に向き合っている。さらに、自身が治療で結果を出し、それを広く発信することでいつの日か保険が適用され、多くの人が治療を受けることができるよう働きかけも行なっていきたいと考えている。

今後の目標・メッセージ

 将来の目標と言われてもいろいろありすぎる、というのが現状だ。まずは、自身の絵本をもっと普及したい。そして山形をもっと盛り上げていきたい。例えば地元の鶴岡市をバリアフリー化して、車イスでの出羽三山観光を容易にするなど、多くの人が訪れることができる観光地にしていきたいと思っている。
 また車イス利用者は運動不足になりがち。生活習慣病のリスクも上がることから、ジムを経営する兄と共に、車イスの人も利用できるジムを作りたい。

 とにかく、Happyな人生は自分で作るしかない。今自分がやっていることは、自分が楽しくなるためにやっていることばかり。自分が楽しくなりたいからその環境を整えているだけ。どうしようもないことは一旦忘れて、違うことを考える。「楽しいは自分で作る!」その前向きな想いだけを抱いている。
 チャレンジすること、一歩踏み出すことは、最初は少し怖いかもしれないけれど、踏み出してみると意外といけるもの。やらない後悔よりもやって後悔した方がいい。そして前向きに、ちゃんと取り組んでいれば、何かしら結果はついてくる。そのことを信じて、これからもやりたいことをやっていくのみ!

(令和3年7月取材)