ふらっと☆輝くママの会
吾妻 ひろ美さん
チャレンジ分野:

プロフィール

2011年9月に福島市から山形市へ長男とともに自主避難してきた。

2014年から、得意なハンドメイドを生かしてボランティア活動に関わり始め、そうした活動をベースに、2020年に山形市在住の避難者たちと「ふらっと☆輝くママの会」を立ち上げた。

また、天然キャンドルアートセラピストやアニマルコミュニケーターの資格を持ち、会とは別にマルシェを主催するなど精力的な活動を行っている。

福島市出身、山形市在住。

チャレンジのきっかけ

 2011年の東日本大震災が起きてすぐに西日本へ避難したが、その年4月に長男の新学期がスタートするため、福島市へ戻った。しかし、原発事故による放射能汚染に対する考え方で周りの人たちとの間に温度差を感じ、気持ちが通じず悲しい思いをすることもあった。
 2か月経っても放射能汚染への不安と恐怖が払拭できず、長男と二人で山形市へ自主避難することを決意し、同年9月に山形市へ引っ越してきた。知らない土地での暮らしに不安がないわけではなかったが、それよりも「子どもの健康が保たれる」という安堵感のほうが強くあった。とはいえ、避難してきてからの2~3年は外に出歩くこともなく、家の中に引きこもるような日々を送っていた。これではいけないと思い、避難者の集まる場所に出向くようになる。当初は支援を受ける側として参加していたが、2014年の「やまがた樹氷国体」で配る小物や、市内の児童支援施設に寄付する小物の製作にボランティアの立場で関わったことがきっかけとなり、徐々に活動の範囲を広げていく。

 震災から数年が経って福島へ帰る人たちも増え、集まる機会が激減し、避難者支援の内容も変わってきた。だからと言って避難者たちの課題や悩みが消えたわけではない。これまでの経験から、同じ環境の人たちと話をするだけで気持ちが楽になることを実感していたため、当事者である自分たちで交流の場をつくろうと、2020年に「ふらっと☆輝くママの会」を立ち上げた。

チャレンジの道のり

 福島に戻ったものの、環境や生活のリズムになかなか慣れず、「帰りたいと思って帰ったわけじゃなかった」「子どもたちが山形での生活に馴染んでいたのに」「帰るんじゃなかった」という声を聞くことも少なくない。
 また、避難者が求めていること(もの)と支援する側とに「気持ちのズレがある」ことをずっと感じていた。当事者同士でないとオープンに話せないこともある。当事者同士なら思いを受け止めつつそれぞれの考えを素直に共有し合える。そうした思いから、山形市に避難している人と福島に帰った人がメンバーとなって、「孤立しない、させない」ことを大切にして、任意団体としての活動を検討していった。

現在の活動内容

 「ふらっと☆輝くママの会」の活動は月3回、6月~3月に行なっている。運営メンバーは5人で、2020年の参加者の延べ人数は約400人。フラワーアレンジやハンドメイドを楽しみながら情報交換をしたり、施術者を呼んで心と体の両面から癒してもらったり、食事をテーマにした健康講座を開いたりと活動はさまざまだ。その中で、福島に戻った人たちから現状を教えてもらっている。

クリスマスリース作り
フラワーアレンジ
ブレスレット作り
和気あいあいとした雰囲気
心と体を癒すひととき
ヨガ体験

 

 また、「ふらっと☆輝くママの会」は、令和3年度やまがた女性のつながり緊急サポート事業を受託し、生理用品の配布の他、ふんどしパンツを作って「温活」の講座を開催している。生理用品に関しては、ナプキンを使う場合に布を1枚当てるだけでも体への負担が少ないことを伝えている。ただ、困窮者に生理用品を配ろうとしても、どの人が困窮者なのかを知ることは難しいというのが正直なところだ。

 個人的には、「ふらっと☆輝くママの会」の活動の他に天然キャンドルアートセラピストやアニマルコミュニケーターとしての活動、さらにはマルシェを主催するなど活動は多岐に渡る。
 天然キャンドルアートセラピストを目指したのは、毎年3月11日に文翔館で開かれる「キャンドルナイト」を見に行ったのがきっかけだった。蜜蝋キャンドルの灯りに癒され、自分も作ってみたいと思うようになり、福島県までキャンドル作りを習いに行った。現在は、天然素材にこだわったキャンドルの販売や、希望者には作り方を教えている。
 また、福島県に住んでいた時に動物病院で働いていた経験から、2017年にアニマルコミュニケーターの資格を取った。アニマルコミュニケーターというのは、言葉を話せない動物と人間の間に立ち、動物の気持ちを言葉に置き換える通訳のような仕事。実際にセッションを受ける前は、「動物の気持ちを知るのが怖い」という飼い主さんもいるが、逆に動物との絆がより一層深まることも期待できる。今後はアニマルコミュニケーターを目指す人たちに指導できるよう、さらにスキルアップを図っていくつもりだ。

 「平日マルシェ」をスタートしたのは2017年の秋からで、3か月に1度のペースで開いている。2021年10月にはビッグウイングを会場に、オーガニックやビーガン(※1)にこだわった食べ物の物販、癒しや占いなど各日70店舗に出店してもらってイベントを行い、2日間で1,500人を集客した。各地で開催されているマルシェの多くは土・日曜日のため、子どもの用事で行きたくても行けないお母さんたちも多い。そこで平日に開催するマルシェを企画した。
 自分が欲しいこと、楽しいと思えることを、みんなと共有したいという考えが、すべての活動の原動力になっている。

 ※1 ビーガン・・・肉や魚に加え、卵・乳製品、蜂蜜などを食べず、またシルク、ウール、革などの動物性の素材も身につけない人たちのことを言います。

今後の目標・メッセージ

 「福島に戻ってはみたものの放射能のことが気になり、周りに打ち明けても『まだ気にしているの?』と言われ、一人で悩みを抱えてしまう人もいます。今後は、そうした人たちが集まれる場を福島市につくり、戻った後のケアをする体制づくりにも力を入れていきたいです」。

(令和4年2月取材)