メープルと哲学の山里「暮らし考房」主宰
栗田和則さん・栗田キエ子さん

プロフィール

平成 5年 山村での豊かな暮らしを考える「暮らし考房」設立
平成 6年 山里フォーラムinかねやま開催
平成 9年 山崎農研 第22回山崎記念農業賞受賞
平成10年 「共生のむら・すぎさわ」誕生
平成11年 第17回東北ふるさと賞受賞
平成14年 家の光農村文化振興myビジョン 最優秀賞受賞
平成16年 山里フォーラムを「山里哲学精舎」に衣替え
        空き家の共同利用「山形・金山スロー村」を開始
平成17年 川村造林記念山形県林業賞受賞
平成18年 ショップ&カフェ「メープル楓」オープン
        山形県男女共同参画社会づくり功労者等知事表彰 「チャレンジ賞」受賞
平成19年 山村力(やまぢから)コンクール 山村力発揮リーダー賞受賞(林野庁長官表彰)

チャレンジのきっかけ

日本経済のバブル崩壊後、米の減反、木材価値の下落により林業・山村の活力が衰退していく中、もう一度山村の豊かさ、この土地で豊かに生きるとは何かを問い直さなければならないと感じ、山村での豊かな暮らしを考える活動の拠点として「暮らし考房」を立ち上げた。

チャレンジの道のり

暮らし考房を立ち上げて間もなく、視察で訪れたドイツでグリーンツーリズムと出会った。日本でもグリーンツーリズムができたらと夢を抱いた。
暮らし考房の活動は、人を招いて語り合う「出会いふれあい語る会」から始まり、やがて山村での暮らし体験を希望する旅人が訪れるようになった。当時日本では、グリーンツーリズムを実践している例はほとんどなく、グリーンツーリズムの先駆けといわれ、研究者なども訪れた。
また、哲学者内山節氏の山里哲学(自然と人間の関わり、労働の在り方)に共感し、内山氏を講師に「山里フォーラム」を開催した。後にこれは「内山節の山里哲学精舎」に名称を変え、県内外からの入門者30名で現在も続けている。
平成10年に町に滞在型の宿泊施設が建設され、宿泊客の体験受け入れを依頼されたのを機に、村全体で体験交流を図る「共生のむら・すぎさわ」が誕生、平成16年には都市の人たちとの共同出資で買い取った杉沢の空き家を共同利用する「山形・金山スロー村」をスタートした。
さらに、杉沢地区に古くから「2月泣きイタヤ」と伝えられているメープルサップ(イタヤカエデの樹液)を使った商品の開発やイタヤカエデの植栽による楓の森づくりなど「メープルの里づくり」にも取り組んできた。

「暮らし考房」の拠点施設の1つであるログハウス風の建物(民泊棟)奥には研修・体験棟、カフェ&ショップなどがある
イタヤカエデの樹液(メープルサップ)を使った商品(左)メープルビール楓酔(ふうすい),(中)メープルサップきさらぎふうろ,(右)メープルシロップ楓の雫

現在の活動内容

本藍染・草木染、チェーンソークラフト、メープルサップ(イタヤカエデの樹液)の採取などの山村での暮らし体験や民泊の受け入れ、森づくりや森遊びによる森林環境教育などを実践しているほか、哲学者内山節氏を招き毎年開催している「山里哲学精舎(一部を山里フォーラムとして公開)」、メープルサップ商品の開発と販売などを行っている。
しかし、これらは「営業」ではなく山村で豊かに暮らすことを考え、創造し、伝えていく「活動」である。自分たちのありのままの暮らしを公開することで山村の暮らしに触れ、豊かさを享受する場になればと考えている。

今後の目標・メッセージ

自分たちの活動の軌跡は、お互いの足をがっちり結び付けて歩くという意味での「二人三脚」ではなく、お互いの感性や能力を認め、それぞれが自由な発想で活動してきた結果だと思う。最初もこれからも「山村で豊かに暮らす」という根本的な思いは変わらない。現在13戸の小さな山村であるが、ここで豊かに生きることやこれからの山村の在り方を考え、もっと生活に密着した里山を創っていきたい。

(平成20年3月取材)