プロフィール
平成13年7月 第1回山形小児糖尿病サマーキャンプを開催
平成14年 蔵王かえでの会を設立
平成25年7月 第13回山形小児糖尿病サマーキャンプを開催
(実施事業)
平成25年度 「小児糖尿病勉強会」
「小児糖尿病サマーキャンプ」
「24時間テレビ募金」
「芋煮会」
「総会・クリスマス会」
チャレンジのきっかけ
「蔵王かえでの会」は、1型糖尿病の子どもやその保護者らでつくる会。現在は大人の患者も含め、約30人が所属している。同様の患者・家族会は全国にあり、各県ごとに、同じ病気をもつ子どもたちがレクリエーションを楽しんだり、病気や治療法について学んだりするサマーキャンプを開催している。山形県では、平成13年に第1回が開催され、蔵王かえでの会はこれを機に、翌年の平成14年に設立されている。
同会の役員を務める管理栄養士の市野亜希子さんも、患者の一人として、この催しに参加。小児科クリニック、山形大学医学部や山形市立病院済生館の小児科医師、看護師、栄養士、医療従事者を目指す学生ボランティアとともに、キャンプの運営、子どもたちのサポートに携わっている。
「なかなか同じ病気の人と知り合う機会のない患者たちにとって、なにより心の支えになるのは同じ病気をもつ仲間との交流です。キャンプに参加して一緒に遊んだり、悩みを話し合ったり、また病気の特徴についてもしっかり学んで、病気とうまく付き合いながら楽しく生活してほしいと思っています」
チャレンジの道のり
1型糖尿病は、主に小児期に発症する難病。何らかの原因で膵臓からのインスリンの分泌が極度に低下、またはほとんど分泌されなくなる。糖尿病患者の99%を占める生活習慣の影響による2型糖尿病とは、原因も治療の考え方も全く異なる疾患であり、そのほとんどは発症に自己免疫的機序が関与している。日本での年間発症率は10万人あたり1~2名。ただし、適切量のインスリンを毎日注射して血糖値をコントロールすれば、合併症を気にすることなく、発症前と同じ日常生活を送ることができる。基本的に食事制限の必要もない。
「私が発症したのは中学3年生の時です。病気を受け入れることができず、自暴自棄になった時期もありましたが、同じ病気に悩む子どもたちの役に立ちたいと考えて大学に進学し管理栄養士の資格を取得しました。現在は、栄養士養成の短大勤務を経て山形に戻り、主治医である小児科医のクリニックで勤務したことをきっかけに、会の運営やサマーキャンプの開催に関わっています。患者の一人として、また悩みを乗り越えてきた先輩として、子どもたちの力になりたいと思い、会員の皆さんとともに活動しています」
現在の活動内容
メインの活動はサマーキャンプの開催。このほか、病気についての勉強会や芋煮会、クリスマス会なども開きながら、情報交換、交流を深めている。また、エコキャップ回収や1型糖尿病医療費助成の請願署名活動にも取り組んでいる。
サマーキャンプは平成25年夏の開催で13回目。メンタルケアの場として仲間同士でレクリエーションを楽しむ場であり、インスリンの自己注射や血糖値の自己測定など、自己管理に必要な知識・技術を身につける勉強の場を提供している。また、ボランティアスタッフとして参加している看護学生や栄養学生たちの学びの場にもなっている。
「キャンプの内容は毎年違います。昨年はバイキング料理を企画して、炭水化物の摂取量からインスリンの補充量を決めるカーボカウントという方法を学びました。講師としてカーボカウントを研究している九州の栄養学生の方にご協力いただきました。また、東京と徳島から患者でもある2名の医師に参加していただき、医師と患者という両面の立場からのお話をうかがいました」
「サマーキャンプには幼児から高校生まで参加します。幼児は楽しむことが中心。小学生になれば自分で血糖値を測り、インスリンを注射することが目標。もう少し上の年齢になれば、食事の量や質、運動量に応じて、インスリンの補充量を自分で決めて、血糖値をコントロールすることが目標になります。それぞれの年齢に合わせたプログラムを考えています」
今後の目標・メッセージ
「1型糖尿病は、一般の人にはほとんど知られていません。生活習慣が悪いために病気になったなどの周囲の誤解、偏見から心無い言葉を掛けられ、傷つく子どもたちもいます。ぜひ、この病気について一人でも多くの人に正しく理解してほしいと思います。患者はもちろん、家族や医療従事者の方々も同じ思いです。また、周りに自分の病気のことをどう伝えるか。これは患者に一生ついて回る課題です」
「私と同じように思春期になってから発症すると、なかなか周りに言い出せずに悩んでしまいます。そういう時に同じ悩みをもつ仲間が集まってざっくばらんに話し合い、悩んでいるのは自分一人ではない、助けてくれる仲間がいることを知るのはとても重要なことだと思います。蔵王かえでの会にはそういう役割があります。そして、病気とうまく付き合いながら、健やかに成長してほしいと見守っている家族やドクターの思いがあります。私も患者の一人として、管理栄養士として、子どもたちに寄り添い、病気と向き合うためのサポートをしていきたいと思っています」