山形逸品店 義風堂代表
袴田 芳さん

プロフィール

平成23年11月  「米沢まちづくりプラン大賞」コンペで優秀賞受賞
平成23年12月  「よねざわ魅力発信隊」を発足
平成26年 1月  山形逸品店―義風堂、ネットショップオープン
平成26年 2月  山形逸品店―義風堂、実店舗オープン

チャレンジのきっかけ

「よねざわ魅力発信隊」の隊長を務める袴田さんは、メンバーらと一緒にフェイスブックなどの情報ツールを活用して米沢の魅力を世界に発信する一方、中国などの海外消費者向けに、米沢の特産品や県産品の魅力をアピールして売り込むネットショップ「山形逸品店義風堂」を運営している。
出身は中国蘇州。日本企業への就職を機に来日し、結婚。夫の転勤で米沢に移り住み、2人の子どもの子育てに専念していた。チャレンジのきっかけとなったのは、その子どもたちからの一言だったという。
「中国から日本に戻り、空港で入国手続きを行う際、子どもを連れて外国人用の通路を通ったところ、『なぜ私たちは日本人なのに外国人の通路を通るのか』と聞かれ、ハッとしました。子どもは日本で生まれ、日本で育っていますから、自分を日本人としか思っていません。私は外国人ですから、あえて日本に合わせる必要はないと思っていたのですが、これから、この子どもたちを違和感なく育て、この地で楽しく暮らしていくためには、もう外国人の立場ではなく、日本国民として地域に関わっていかなければならない。母親として自分の考えを変えるしかないと思いました」

チャレンジの道のり

東日本大震災の後も、多くの外国人が出国する中、「自分は日本人だから残る」という子どもたちの声に、袴田さんは「残るのなら、風評被害を払拭したい。自分にも何かできることはないだろうか」と考え、米沢市社会教育体育課の「まちづくり人材育成講座」を受講。
平成23年11月に行われた「米沢まちづくりプラン大賞」コンペティションでは、情報発信による風評被害の改善と海外への観光アピールを行う『「成せる」ネット活用術研究サロン』という企画で優秀賞を受賞した。これをきっかけに平成23年12月に「よねざわ魅力発信隊」を結成している。
「メンバーは中国人の私をはじめ、韓国やネパールなどから嫁いできた外国人、米沢に嫁いできた日本人など11人でスタート。米沢の魅力についてフェイスブックなどを活用して母国語で情報発信し、地域の活性化につなげることを目的としています。フェイスブックページも米沢市の補助を受けて自分たちで立ち上げました。私もパソコンは使えますが情報発信は初めてなので、山大工学部の米沢街中サテライトを活用してみんなで勉強会を開き、試行錯誤しながら取り組んできました」

現在の活動内容

よねざわ魅力発信隊のフェイスブックページは現在、ファン数700人以上と広がりを見せ、仲間で定期的にフォトコンテストを企画。写真を通して米沢の魅力をPRしている。
「フェイスブックを通じた友人は、最初はマレーシアに1人でしたが、いまでは東南アジア全域に広がっています。フェイスブックが使えない中国へは別のツールを使って発信しています。私たちが発信した情報を見て、実際に日本に旅行に訪れた方もいらっしゃいます」

情報発信によるネットワークの広がりに魅力を感じた袴田さんは、「これなら米沢の特産品も販売できるのではないか」と考え、国の海外進出支援補助金事業の認定を受けて、平成26年1月に、主に中国向けのネットショップ「山形逸品店-義風堂」を立ち上げ、さらに実店舗も米沢市内にオープンしている。

ネットショップ「山形逸品店-義風堂」
山形県の農産物を使用した商品

 

「中国では食品の安全性の問題が深刻です。中国の子どもたちに安心安全な食品を食べてもらいたい。日本の子どもたちにも無添加の食品を食べさせたいと思い立ち上げました。いま扱っているのは地元米沢の特産品をはじめ、ドライフルーツや県産米つや姫の米粉や麺など、無添加にこだわった県産食品が中心。山形鋳物などの伝統工芸品も扱っています。今後は、山形大学が開発した常温乾燥技術を活かして無農薬野菜のパウダーなどの開発にも取り組み、少しずつ商品数を増やしていこうと思っています。また、海外との取引を目指す中小企業向けのサポート事業も、事業化していく計画です」

今後の目標・メッセージ

袴田さんは、山形県内に嫁いできた中国人のお嫁さんのドキュメンタリー作品「桜の色」も制作。昨年、中国の旅行衛星チャンネルで放映され、翌日からのネット配信では1週間で100万件を超えるアクセスを記録し、年末には同局のドキュメンタリー年間ベストで佳作に選ばれている。
「それだけ日本を知りたいと思っている方が多いということです。これからも、よねざわ魅力発信隊では、奉仕の精神を大事にしながら米沢の魅力を発信していきます。義風堂は、まず軌道に乗せることが第一の目標です」

「来日当初、日本社会には女性の進出が少ないと感じていましたが、男女共同参画に興味をもち、チェリアのイベントに参加して皆さんと知り合うことができました。これまでの自分の経験、知識を新しい方々に伝えながら活動を進めていくことが、立ち上げ当初からのモットーです。ネットの世界に国境はありません。フレンドリーにすればフレンドリーに返ってきます。民間友好はまずネットからと思っています」

(平成26年2月取材)