リードクライム(株)取締役
井東 敬子さん

プロフィール

平成11年    ホールアース自然学校にてインタープリター
        環境省 田貫湖ふれあい自然塾 立ち上げ
平成17年    愛・地球博「森の自然学校・里の自然学校」チーフインタープリター
平成18年    リードクライム(株)起業
平成19年    40歳で第一子を出産
平成23年    「ねいちゃーかあちゃんと都会の森で遊ぼう!」開講
平成24年 7月  鶴岡食文化産業創造センター「実践事業アドバイザー」に就任

チャレンジのきっかけ

自然体験型環境教育の専門家として、都会の1、2歳児に自然遊びプログラムを提供している井東敬子さん。平成23年に鶴岡に移住してからは、フェイスブックの活用などでネットワークを広げながら、人や組織をつなぐ、地域コーディネーターとしても活動されている。
18歳で上京。旅行会社で10年ほど働き、山形に戻って国際ボランティアセンター山形で3年、事務局として外国人花嫁の支援や同センターのNPO法人化に従事。その後、自然の中で働きたいと思い、平成11年に環境教育を手掛けるホールアース自然学校に転職。6年間、ほぼ毎日、修学旅行生などを富士山麓の青木ヶ原樹海に案内していたという。

「携帯電話も通じない、道もないところへ、本当は東京ディズニーランドへ行きたい中学3年生を案内し、どうやって『楽しかった』と帰すのか。指導の技術や安全管理も磨かれました。インタープリター養成の仕事も担当し、命を食べることの意味、人は自然なしでは生きていけないことなど、いろんなことを感覚的に学びました」

チャレンジの道のり

平成17年には愛知万博で森の案内の仕事に従事し、平成18年に自然体験や環境教育、環境学習を専門とするリードクライム(株)を起業した。
「その後、結婚し、子どもが生まれ、子育てをどこでするのか、東京では土の上を歩かない、人間にとって不自然、田舎に引っ越そうと思っていた時に、たまたま夫の出張先の鶴岡にいい保育園があることを知り、引っ越してきました」

リードクライムでは、都会の1、2歳児に自然を体感・体験させる「ねいちゃーかあちゃんと遊ぼう」を主宰。
「東京の子どもたちは自然に触れ合う機会がほとんどありません。江東区の依頼で1、2才児の野遊びを担当したところ、セミの抜け殻を見て、これは何ですかと真面目に聞いてくるお母さんたちもいて漠然とした危機感を覚え、自然あそび講座を始めました。新宿御苑で、小川でジャバジャバ遊んだりするのですが、子どももお母さんもすごく生き生きしています。『これがうちの子ですか』と感動するお母さんもいます」

現在の活動内容

引っ越して来た鶴岡では、行政などからの依頼による地域コーディネーターとして活動の比重が大きくなっているという。
「庄内にはフェイスブックを活用しようという動きがあり、人口30万人の1割、3万人がフェイスブックのユーザー。全国でも高い比率です。そういう人たちとつながり、盛り上げているうちに、ユネスコの創造都市ネットワークの加盟を目指している鶴岡食文化創造都市推進協議会の仕事を手伝ってくれと依頼され、平成24年7月から鶴岡食文化産業創造センターの実践事業アドバイザーを務めています」

この仕事を通して井東さんが取り組んでいるのは、NPOや行政など、いろんな組織と連携して “つなぐ”こと。その一例がプチ起業と複数の仕事をかけ持ちする“複業”という発想だ。
「月収15万の人が、一か所から15万円を得るのでなく、3万円を5口と複数から収入を得る人がいてもいいのではないか。そのうちの3万円は、好きなこと・得意なことでプチ起業をめざそうという提案です。こうすると地域にコミュニケーションや信頼関係が増え、いざという時のネットワークが違ってきます。そうしたライフスタイルを地方から発信していく。お金をかけなくても毎日が楽しい。庄内に移住してきたクリエーターたちは、すでにそんな発想でどんどんつながっています。
また、庄内には『みんなで集えば文殊の知恵』というグループがあります。フェイスブックで自分のことを自分で宣伝するとちょっとイヤらしい。だから他人がほめる。あそこの饅頭は旨いとか。そうするとあっという間にその饅頭屋の売上が伸びる。地元企業をみんなで盛り上げれば、地元にお金が残る。ネットワークが広がる。楽しいからみんながやる。楽しい楽しいでつながっていく。そういう新しいビジネスモデルをつくっていきたいと思っています」

養成講座の様子
自然体験学習の様子

今後の目標・メッセージ

「とにかく新しいことをやるのが好きです。庄内は、東京に比べればサイズが小さいので、何かをやればすぐに響きます。移住して来た人も多く、みんな面白いことをやっているので楽しいですね」

環境教育については、今後は庄内でもやっていきたいという。
「子どもの問題は地方も都会も全く一緒です。周りに自然がいっぱいあるから、わざわざ自然のなかで遊ばなくてもいいと思っていると、子どもたちの才能の‘のびしろ’が減ります。自然の中には一つとして同じものがありません。そういうところで遊ぶと、子どもの脳が発達します。平らなところでしか遊ばない子どもは野山を駆け巡って遊んだ子どもに比べると筋肉がバランス感覚が発達しません。地元にもインタープリターを増やしながら、自然と関わることの大切さを伝えていきたいと思っています」

(平成26年1月取材)