青苧復活夢見隊

プロフィール

平成20年 5月  「青苧特産品づくり支援隊」を結成
平成20年 9月  「青苧復活夢見隊」を結成
平成21年 3月  「青苧御膳」の提供を始める
平成22年    糸を加工し、暖簾、テーブルセンター、マフラー、バッグなどを商品化
平成22年 6月  乾麺を開発、「真麻(まお)うどん・冷麦」と名づけて販売開始
平成24年 1月  活動を報告する企画展「蘇りの青苧ものがたり」(町主催)を開催
平成25年 3月  青苧入りの和紙を製作。卒業証書として本郷西小学校に提供
平成26年 3月  青苧入り卒業証書を町内小・中学校に贈呈

チャレンジのきっかけ

江戸時代、良質な青苧(あおそ)の産地として知られた大江町。その歴史に焦点を当て、町発展の礎を築いた青苧文化を復活させようと立ち上がったのが「青苧復活夢見隊」の皆さんだ。

隊長の村上さんは元町職員。あるとき青苧に関する資料が多数展示されている大江町歴史民俗資料館の管理を任されたものの、それまで青苧に関心がなかった村上さんは、来館者の質問にもうまく答えられずにいたという。
「困った。青苧ってなんだべ?そんなところからのスタートでした」

調べてみると、町内には青苧の葉を校章のモチーフにしている本郷東小学校があり、6年生が総合学習の一環として青苧文化を学んでいた。村上さんは、熱心に学ぶ子どもたちの姿に心を打たれ、「子どもたちがこんなに勉強しているのに、大人の私たちがこのままでいいのだろうか。青苧はこの町の歴史を語るものだ。いま出会った人間が復活させて後世に伝えていかなければならない」と強く思ったという。

チャレンジの道のり

以来、村上さんは同じように青苧の産地だった置賜地域の各地や600年以上も青苧の栽培を続けている福島県昭和村を何度も訪ねて、栽培方法や糸づくりの技術を習得。そして、町民にも広く青苧の価値を知ってもらおうと、歴史民俗資料館の裏に青苧畑をつくり、社会教育事業の一環として青苧の刈取りや茎から繊維を取り出す苧引き(おひき)、古代布・アンギン織の体験教室などを次々に企画した。すると、町民からの反響は大きく、村上さんは「こんなに盛り上がるなら」と、平成20年の退職を機に本格的に青苧の復活を目指そうと決意した。

まず初めに取り組んだのは、転作田を利用した青苧の栽培。この際、協力してもらった橋上地区の老人会「橋朗(はしろう)クラブ」のメンバーを中心に、「青苧特産品づくり支援隊」を5月に結成。さらには町の助成を得て「青苧復活夢見隊」を9月に結成し、青苧の栽培から糸紡ぎ、機織り技術者の養成など、それぞれ役割を分担しながら町の特産品開発に向けた活動を開始した。

「過去にこの地で栄えた青苧は、いまではほとんどの町民にとって未知のもの。自分たちが復活させ、後世に伝えることに使命感を感じて始めました」

現在の活動内容

現在の活動は、転作田での青苧栽培から特産品づくり、さらには青苧文化の学習機会を提供するイベントの開催などと多岐にわたる。
「毎年5月20日前後に、害虫駆除や目揃えのために焼畑を行い、成長した青苧の茎を7月中旬から8月中旬までに刈り取って繊維を取り出し、紡いだ糸で暖簾やバッグなどをつくリ、販売しています。青苧を漉き込んだ和紙もつくっています。初年度は閉校となった本郷西小学校の最後の卒業生たちに卒業証書として提供し、夢見隊としても感慨無量でした」

さらに、当初から取り組んでいるのが青苧による新しい食文化の開発だ。青苧餅やうどん、煮物などを次々に開発。完全予約制の「青苧御膳」として提供している。
「青苧の葉はおひたしにして食べるとおいしく、青苧御膳も非常に人気があります。このため、青苧入りの乾麺も町産業振興公社と協力して開発し、青苧の別名から『真麻(まお)うどん・冷麦』と名付けて販売しています。ポリフェノールや鉄分などを豊富に含むことから、青苧饅頭、羊羹、クッキーなど、商品開発も盛んになってきました。これらを広めるためにはネット販売を含めた販路の拡大が課題。できれば引出物に選ばれるくらいにまでなってほしいですね」

青苧を用いた紙漉き体験の様子
企画展 『蘇り』の青苧ものがたり
真麻うどん・真麻ひやむぎ

今後の目標・メッセージ

一連の活動は、江戸時代から伝わる「御戸帳(おとちょう)」(青苧で織った奉納幕・町指定文化財)の修復完成披露を兼ねて、平成24年1月に催された町主催の企画展「蘇りの青苧ものがたり」で町民に報告され、大きな反響を呼んだ。現在では小学校だけでなく、中学校でも青苧の体験学習に取り組むなど、盛り上がりを見せている。

「人との出会い、つながりの中で今日があります。町や県の方々をはじめ、東北文教大学の菊池和博先生、東北芸術工科大学文化財保存修復研究センターの大山龍顕さん、紙漉き職人の三浦一之さんなど、折に触れて多くの方々にお世話になり、その度に活動を発展させてくることができました。隊のメンバーにも、青苧御膳をつくってくれた管理栄養士さんなど様々な職種の人たちが集まっており、多彩な活動ができます。皆さん、ひとり一人が町おこしを担っているという、非常に高い意識で活動されている人たちです。これからも青苧復活への取り組みが人や土地、地域すべての活性化につながることを願いながら、活動を続けていきたいと思っています」

(平成25年12月取材)