菓子's kitchen 淑.shuku 店主
安喰 淑子さん
チャレンジ分野:

プロフィール

■活動履歴
平成12年       大阪市の製菓専門学校を卒業
平成13年~平成20年  山形市や天童市内の洋菓子店へ勤務
平成21年       独立し菓子’s kitchen 淑.shukuオープン

チャレンジのきっかけ

「昔から黙々とつくっているのが好きだったんです」
小学生の頃、家庭科の調理実習でつくったホットケーキに感動して、そこからお菓子づくりが大好きになったという安喰さん。
高校卒業後は本格的に勉強するために大阪の製菓専門学校に進学。山形市の洋菓子店”パティシェ・ル・ショージ”で6年間修行した後に天童市にある”山形旬菓詩武田”に1年間と、着実に腕を磨いてきた。

修行中はお菓子づくりはもちろんのこと、販売や接客の方法、包装の仕方、材料の調達などの細かいところまで身につけてこられた。気がつくと将来お店を開く際のノウハウまで学ぶことができたという。
「常に頭にあったのは、お菓子を売りたいというよりも、自分のつくったお菓子をたくさんの人に食べてもらいたいという気持ちでした。この考えが強かったのでこれを実現するため独立して自分のお店を構えるという目標につながりました」

チャレンジの道のり

当初は普通に店舗を構えようと思っていた安喰さん。お店を長く続けていくためには今の自分にできる範囲からコツコツ始めていこうという考えにたどり着き、まずは自宅に菓子工房を設けて完全予約制の販売形態で開業。
「今までずっと職人として作り手側にいましたので、普通に出店して商品を陳列して販売するということが、こんなにもお金がかかるものだとは分かりませんでした」

お店を始めてから今年で5年目。今まで続けてこられたのはお客様に日々育てていただいてることが大きいという。
ほとんどのお客様が常連であり、常にたくさんのアドバイスをもらいながら試行錯誤を繰り返して要望にすぐお応えする。これは一人でお店をやっている強みでもある。

「お客様は始めからいるわけではないので、まずはお店を知ってもらうことを考えました。一般的な店舗型ではないので地味で目立たないからといって大々的に宣伝をしてしまえば、お客様に集中して来られた際は対応しきれなくなるので、ここは根強く口コミが一番だと思いました」

そこで考案したのが、会員制のお菓子セットの定期販売だった。最初30名から始まり徐々に広がっていき、今では60人くらいまで増えている。

「最初はどうなるかと不安もありましたが、口コミで知られるようになって今は満足しています」
材料はきちんと吟味し、作り置きをせずにひとつひとつ注文を受けてからつくるため、できたてや食べ頃の美味しさでお客様に確実に提供することができる。それをモットーとしてやってきていることが理解され、この広がりを持たせてくれたようだ。

現在の活動内容

完全予約制というスタイルで、ケーキや焼き菓子を中心に販売する。値段に応じた詰め合わせや贈答用のラッピングなど、お客様一人一人の要望に合わせている。
また、会員になって毎月数種類の特製のお菓子を一年間楽しめる『しゅく菓子定期便』がある。
「菓子定期便で評判の良かったものは、通年のメニューにも入れています」

絵の描き方を勉強したことは無いという安喰さんだが、パンフレットに描かれているお菓子の手書きイラストは、つくるお菓子同様に興味を引きつける。
「今の時代、手書きが逆に新鮮に感じていただけるようで、お客様が好んで持ち帰ってはいろんな方に渡してくださっているようです」

その絵心はお菓子づくりに問われるセンスでもあり、オリジナルケーキとして似顔絵やキャラクターの製作時においても生かされている。他のお店では技術や手間がかかって行わないことだけにこの需要は一番多いという。

しゅく菓子定期便
手書きのケーキメニュー

今後の目標・メッセージ

昨年暮れに第一子を出産したばかりの安喰さん。子育てと仕事を両立しながら楽しく続けていくことが当面の目標。現在は注文したお菓子はお客様に取りに来ていただいているが、焼き菓子などで地方発送サービスができないものかと思案中だ。

このままお客様との信頼関係を繋ぎ続けていって、将来は流行に乗らない自分らしく個性のあるお店を開いて、今と変わらずに自分が美味しいと思ったものを提供していければと思っている。

「職人はつくることを辞めてしまうと何も残らない。だから続けることに意味があって、それには楽しくないと続けられない。苦しくても嫌なことがあってもその中で楽しいことを見つけ続けていくと、どうにか道は開ける。『お菓子が好きだ』という想いさえあれば、壁にぶつかっても乗り越えられますね」

(平成25年2月取材)