プロフィール
■活動履歴
昭和59年1月 文学同人誌「ぼんがら」第1号を創刊
昭和59年4月 文学同人「ぼんがら」の会が発足
平成22年9月 山形県男女共同参画センターチェリア団体登録
平成24年5月 創立30周年、「ぼんがら」第30特集記念号の発刊
チャレンジのきっかけ
昭和59年、山形県内の童話作家の同人のなかで、読み物としてもう少し整った長い文章を書いてみたいと考えていた仲間3~4人が、一緒に勉強していこうと立ち上げた文学同人「ぼんがら」の会。
当初から女性だけで小説に限って発表していくという姿勢で、会員の入れ替わりはあったものの、今年でちょうど設立30年目を迎えている。
「山形には老舗の同人誌『山形文学』があります。先ごろ101号が刊行された歴史のある同人誌で、男女は不問ですが多くは男性の同人です。それに対抗するというほどの意識はなかったのですが、形として女性だけの同人誌を作ってみたいとの思いから発足しました」
「会員は県内の女性が多数を占めていましたので、そこに書き出される主人公は山形の女性が多く、戦前から今までの女性の生きてきた道が書かれてきたことになります。山形に生きた女性の記録のような役割も果たしていると言えるかもしれません」
現在代表を務めているのは、ペンネーム”翠川けい”こと、後藤桂子さん。「私は10周年のときにお誘いいただきました。でも文学同人誌というものに当時はなじみが無かったものですから最初はお断りしていたんです」
「ぼんがら」の会の加入には、山形新聞社が主催している短編小説コンクール『山新文学賞』で過去に入選したことがある人との条件がある。
チャレンジの道のり
「それまでは執筆の経験は無く、ただの主婦でした。どちらかというとバレーボールなどで身体を動かすことが好きな体育会系だったのですが、文章を書くことも好きだったように思います。高校生時代には学校の文集に載せてもらったこともありましたから」
平成6年に山新文学賞で佳作に選ばれた後藤さんは、1年経たないうちに2度目を受賞(準入選)する。
現在の「ぼんがら」の会員は5名。設立当初からのメンバーは池田侃子さんと舟山智恵さんで、5年くらい前までずっと2人が文学同人誌「ぼんがら」の編集作業を主導してきた。20年前に後藤さんが入会し、その後に水澤葉子さん、たひら敬子さんが比較的最近加わっている。
「会員は「ぼんがら」の会としてだけでなく多方面で継続して活動を行っています。特に水澤さんは個人でも同人誌を編集し出版していて、ペンネームを複数使い分けて誌面対談までもこなしている意欲的な方です。また、舟山、池田さんは川柳の結社に毎月作品を提出しており、舟山さんは編集長としてがんばっています」
◇同人出版案内 池田侃子 著 ・明日、コルドバへ(創作集) ・ふところ -暮らしのあわいから-(随筆集) ・如月の来訪者(第二小説集) 舟山智恵 著 |
宮沢てつ子 著 ・鮮やかな遠景 ・『はにや』創刊~第13号 翠川けい(後藤桂子) 著 |
「「ぼんがら」30号までの間には同人の出入りも当然ありました。地味な活動なのに合評会では徹底的に仲間に講評され、悔しい思いを味わうとともに自分の未熟さを省みる機会でもありました。でもどんなに辛くても皆『やめよう』と思わずに続けてきた結果が30号なのです」
「毎号取り上げて書評を載せてくださる新聞紙評に励まされ、『ぼんがらのファンなのよ、頑張って続けてね』という声に後押しされています。『書く事の楽しさ』を同人が共有していたからこそ、途切れることなく発行することができたのだと確信しています」
現在の活動内容
毎年1冊、文学同人誌「ぼんがら」を刊行することが一番の主題。その目的のために会員全員が集まるのはもちろん、山形の文学研究者や編集者の方を招いて合評会を必ず行っている。「言い回しの一字一句から”てにをは”の助詞の使い方まで、一人ひとりの作品を細かく指摘し合い切磋琢磨しています。若いときは”まな板の鯉”になるのが本当に嫌でした。今でも得意ではないですが、自分の腕を磨くこういう機会が大事なのだと実感しています」
「創刊号は43頁の薄い冊子程度だったようですが、創刊からのファンも少数ですがいらっしゃいます。励みになりますし本当に有難いですね」第30号記念号には、そのファンの方が描かれた素敵な表紙絵や挿絵が掲載されている。
そのほか、山形市芸文協会に加盟しており、協会の催しの文学部門で展示などのサポートを行っている。また外部との交流として、山形でさらに歴史のある同人誌団体『山形文学会』の合評会にも必ず参加して、活動に刺激を受けている。
県男女共同参画センターチェリアには、以前から後藤さん自身チェリアdeカフェのスタッフとして個人的に関わっていたため、「ぼんがら」の会の代表となった際に団体登録。平成24年のチェリアフェスティバルに出展して、文学に興味のある参加者にその良さを紹介している。
「なにしろ5人だけの団体ですので大きなことを計画するのは難しいです。同人誌自体が少なくなり、若い方たちも存在を知らないし興味もないので、なかなか新たに入ってくださる方がいないです。手っ取り早く掲載できて反応もすぐわかるブログなどで事足りているからでしょうね。現代にはそれが合っているのかも知れません」
後藤さんは、同人誌の魅力を一言で表すと『仲間と熱く語る時間』ではないかと感じている。「書くという行為は多くの人が体験することかもしれませんが、私たち同人誌の仲間は、各人が書いた作品に対して感想を述べ合い、さらに疑問なところを質し、どうしたらその作品がもっと良くなるかを考えます。作品を通じて仲間とつながり、世界を拡げていく…。これが同人誌の醍醐味であると思います」
今後の目標・メッセージ
紙に印刷された小説は、本屋や図書館に行って手に入れたり持ち歩いたりするのが面倒なので、情報機器を使ってネット小説を読むという若者が増えている時代。特にスマートフォンでは100文字前後のショートショート小説がよく読まれているとのこと。
「私たちも従来の「ぼんがら」のスタイルにとらわれることなく、新しい形の発表を模索していきたい。ネットに小説を載せていくなど、時代にあった『同人誌』を目指さなければ生き残れないのかもしれません。山形の女性を書いてきた「ぼんがら」。新しい書き手と新しい女性像を書いていきたい。続けていくことが力になると信じて40号を目指します」
「ぼんがら」とは山形県の方言の呼び方一つで、氷柱”つらら”のことを指している。
雪深い地域に住む子どもたちの遊び道具になり、たたけば”からんこりん”と素朴で澄んだ音色がして透かせばきらきらと輝く。その純粋さにちなんで名づけられている。
「一緒に活動してくれる、「ぼんがら」のように若く純粋な同人を広く募っていきたいと思います。学生さんなどにも文学同人誌の良さを知ってもらえたら嬉しいですね。山形市立図書館には毎年寄贈していますのでご覧いただけますし、また数に限りがありますが直接お届けすることもできます。興味のある方はぜひご連絡ください」