「庄内地域子育て応援協議会」事務局長
江口 暢子さん

プロフィール

■活動履歴

平成22年3月  東北公益文科大学大学院修了
平成22年7月  庄内地域子育て応援協議会発足
       (会長伊藤眞知子東北公益文科大学教授) 同協議会事務局長として従事

チャレンジのきっかけ

「地元で地域情報分野の財団法人に就職し20年ほど勤務していました。」
結婚をして3人の子どもに恵まれた江口さん。子育てをしながら家と職場とスーパーの往復を繰り返していた。
「それまでは地域参加なんてしたことがなかったし、考えたこともありませんでした。」

ところが長女が小学校の時にPTAの役員になって一変する。
「行きがかりで、女性で初めての会長になってしまいました。伝統のある学校だったためにとても珍しかったようです。最初は嫌でしたね。」

酒田市PTA連合会の役員職も重なって、否が応でも人前で話したり会議を回さなければならない場が多くて困っていた。
ちょうどそんなとき、県広報誌”県民のあゆみ”でチェリア塾の紹介記事を見つけた。
「”リーダーになるのは特別な人ではない”という一文が目に留まり、これしかないと思って参加しました。平成16年頃のことです。」

「私にとってこれが大きなきっかけだったと思っています。才能と個性豊かな方がたくさんいらっしゃって、山形県内のあちこちで様々な活動をされている。そんなメンバーと知り合うことができて、すごく視点が広がったように感じますね。」
1分とか3分で話すスピーチ練習や、ファシリテーターの養成など、チェリア塾で企画されたいろいろな講座を積極的に受ける。

「ほんの少しだけ自信がつきました。組織を作りあげていくことなど実際にPTA活動でも役に立ちましたし、『学びは自分を支える』と。」

チャレンジの道のり

私が大学を卒業する時は、男女雇用機会均等法前でしたので、男女共同参画にはもともと興味がありました。
チェリア塾はもとより、酒田市男女共同参画推進センター『ウィズ』にも関わり、その活動の中で東北公益文科大学の伊藤眞知子教授に出会った江口さん。

「先生に憧れていまして、ずっと講義を聞きたいと思っていたのですが、ちょうど大学院ができることを聞いて、入学を決意しました。」
「家庭と仕事と地域活動と大学院と、本当に大変でしたが、公益大での学びは私にとって学ぶ喜びを確かなものにしてくれたと思っています。」

庄内子育て情報サイトTOMONI(トモニ)は、その大学院在籍中に仲間3人で慶應義塾デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構との連携講義を受講した際に、最終課題で『地域情報化プロジェクト企画』のプレゼンにエントリーした時の内容が原形となっている。
「当初は女性のための総合支援サイトを立ち上げようと思っていたんです。しかし、いろいろと議論を重ねた上で対象地域を庄内と限定した場合に利用されるだろうかと考え、女性の再就職を支援する目的で子育て生活応援サイトを作ったらどうだろうと企画しました。」

実践化を検討するため、まずは庄内地域情報化プロジェクト研究会が立ち上げられた。
「庄内総合支庁、2市3町の担当課、東北公益文科大学、NPO、社会福祉協議会、託児団体などさまざまな分野の方々から参加いただきました。」
そして平成22年7月には庄内地域子育て応援協議会が発足した。
「ぜひ実現させましょうと皆さんにも対等な立場でご協力いただきました。一緒に手をつないでいろんな人からの手を借りてサイトが完成しました。」

庄内子育て情報サイトTOMONI(トモニ)
イベントの様子

現在の活動内容

TOMONI(トモニ)というサイト名称は、協議会のメンバーからの提案。
完璧な子育てなんてないんだ。共に子育てをしよう。子育てしている私もあなたも応援しているみんなも、いろんな人が関わって共に子育てをしていこうという意味から名づけられている。
「コンテンツも皆で企画しながら、51の加入団体からイベント情報などを入力していただいて、情報を一元化しつつ運営しております。その更新方法についてのサイト講習会も定期的に実施しています。」

「去年の3月にオープンしてからのアクセス総数が15万件を超えました。だいぶ伸びてきていますし話題にもなってきているようです。うれしいですね。」
庄内地域の子育てイベントに出向いてレポートしてもらう『「取材ママ・取材パパ』、『ママカフェ・パパカフェ』を開催しては、ママたちから出てきた思いや悩みなどをサイトへ掲載している。
「サイトを見るだけでも楽しんでもらえるように心がけています。声が届きにくい人にも届くことが可能なのがネットの良さだと思いますね。」
平成23年12月には携帯サイトをオープン。

情報格差にも配慮して紙媒体も活用している。
「3月には『今庄内で暮らす私たちの備え 安心ノートTOMONI』を発刊しました。日常の暮らしの備えを子育ての視点で家族で確かめ合おうと企画されました。もちろんPDFファイルでサイト内へも掲載しています。また、庄内地域の保育園や幼稚園、小学校などにも配布されました。」

主催イベントも不定期で行っている。
「東日本大震災を受けて、昨年の11月から親子の目線で防災に取り組む講座を展開しています。非常持出袋のリスト作りなどのワークショップや、庄内沿岸を重点的に各地域の防災担当の方からお話ししていただきました。」

事務局長として、このような取り組みを現在5名のスタッフと行っている江口さん。協議会以外の活動も多岐にわたる。PTAや教育振興会、地域福祉協議会の役員なども務めている。
「いろんな方からお声をかけていただけるのは大変ありがたいです。打ち上げの席にまで参加してしっかり盛り上げていますね。(笑)」
「人との縁を大切に、人と人との架け橋になることが嬉しいです。」

今後の目標・メッセージ

「ジェンダーの視点、表現をうまくできない人の意見、少数の意見、異なった考えの意見を大事にするという視点を常に忘れてはいけないと意識しています。」
「『私が私らしく・あなたがあなたらしく』、人がその人らしく生きることが大切なように、子育ても「私らしく・あなたらしく」で良いんだと思います。これはTOMONIのサイトのコンセプトにつながるところです。
子どもが自分らしく自立することを親として見守る。親も子どもも自分らしく自立して生きていくことが大切だと感じています。
また、人は「一人だからこそ弱い・一人だからこそ強い」。「私が」から「一緒に」「共に」と広がりを作っていく、人と手を取りあうことも大切なことだと思います。」

「私がPTA会長を引き受けたのも、次に誰かが「やりたい」と言ったときに、その女性の前例になれると思ったからなんです。”誰かのために”と考え方を変えたら私でも出来るのではと気づきました。」
「あの人がやってたけど、良かったよ。女性がやっていいじゃない、と言われるように、頑張んなきゃとすごく思いました。最終的には男女に関係なく、あの人ならではとか、あの人だったからと個性として見られるようになるのが理想ですね。」

(平成24年2月取材)