「NPOぷらっとほーむ」共同代表
松井 愛さん

プロフィール

■プロフィール
平成 9年 3月        山形女子専門学校 ファッションデザイン科 卒業
平成 9年 4月~平成14年 3月  パリス文化服装専門学校 教諭
平成14年 4月~平成15年 3月 フリースペースSORA チーフスタッフ
平成15年 4月~       ぷらっとほーむ 設立
平成21年 4月~       山形女子専門学校 講師

■活動履歴
平成19年~         山形県立霞城学園高等学校 学校評議員
平成21年~         山形県総合政策審議会 審議委員
平成23年 1月~12月     山形新聞 『日曜随想』の執筆を担当
平成23年 5月        国際ソロプチミストアメリカ 日本北リジョン
               『ルビー賞』受賞
平成23年11月        山形県 『輝け やまがた若者大賞』受賞
平成23年12月        山新放送愛の事業団 『愛の鳩賞』受賞

チャレンジのきっかけ

松井さん自身、中学時代に不登校を経験した。その当時、年長者の方々や、学校の先生方等、身近に居た大人達にお世話になった。そんな時代があって、今の自分があると思っており、自分が大人になったら、「若者支援をしたい。」「次の世代に、何か返したい。」という気持ちが漠然とあった。
地元専門学校を卒業後、専門学校の教諭として5年間ほど子ども達と関わり、その経験を生かせる事は何かと考えていた。

当時、「不登校親の会ネットワーク」が立ち上がっている時期だった。学校に勤めながら、徐々に不登校支援の活動にかかわり始めたころ、不登校にまつわる映画の上映会があるので、手伝ってくれないかという声がかかった。
上映活動を進める中で、自ら何かをゼロから作り上げる楽しみを体感し興味が湧いた。
同時期に、「不登校親の会ネットワーク」がフリースクールを民間で初めて運営する事を聞き、少しずつ関わる事になって行く。

その時、ぷらっとほーむ共同代表の滝口さんと出会う。2年程活動する中で、「引きこもり」や「ニート」という言葉が生まれ始め、相談や問い合わせも来るようになる。
しかし、松井さん達が携わっていたフリースクールでは、基本的に子どもの居場所づくりなので、その様な問い合わせなどに対しては、対応できない状態だった。
その際、「不登校」というキーワードに違和感を抱く様になる。
もっと垣根を越え、幅の広い活動ができないかと考えた。

キーワードを「居場所」に変えた方が良いのではと思い、当時のフリースクールのメンバーと話し合った。
結果、松井さんと滝口さんがそのフリースクールから独立し、若者に限らず幅広い世代の方々が誰でも立ち寄れる「居場所」を、ゼロから作ったのが「ぷらっとほーむ」だ。
毎週水~金曜日の午後から拠点となる山形市内の一軒家を解放。いつ来て、いつ帰ってもいいという喫茶店のような居場所づくりに取り組んでいる。

チャレンジの道のり

当初は2人だけで運営しており、何をするにもマンパワーが足りなかった。2人は別に仕事を持っている。
どちらかの都合だけで、「ぷらっとほーむ」を開けたり、閉めたりしていたのでは、団体として弱いと痛感した。

そんな中、ボランティアスタッフに常駐してもらい、活動して行くことを考えた。
しかし、ボランティアに携わる方々は、運営サイド側で仕事を準備しない限り、自主的には動いてくれない事が多い。
そのため、人手が足りない中、新たにボランティアの方々のための仕事を準備する作業が増えてしまう。
「あらゆる分野でのボランティアの受け入れ団体でも同じ悩みを抱えています。」

考えた末に思いついたのが、運営側が仕事を用意するのではなく、利用者の中の常連メンバーが担っていく方法だ。
色々な事に一人一人、自分自身で関わる事で、みんなで作っていく精神を養う。そうする事で、常連メンバーも自主的に行動するようになった。
「ボランティアのスタッフ等はあえて入れず、「ぷらっとほーむ」に何度も足を運び、基本理念を理解し自分の思いを持ち寄ってくれる人(中核メンバー)をボランティアスタッフ的な位置づけとして運営しています。それが、今の「ぷらっとほーむ」です。」

花笠まつりに参加
愛の鳩賞を受賞

 

イオン幸せの黄色いレシートキャンペーン
上映会

 

創立記念パーティー
映画について語る会

現在の活動内容

共同代表である滝口さんと、常連メンバー達のサポートの中、毎週水~金曜日の午後から山形市内にある拠点を解放している。幅広い世代が集い、毎週金曜日には昼食を作り、奇数月にはカラオケ大会を開催している。

そうしたイベントは、松井さん達運営側だけではなく、メンバーの方々も自ら企画し開催する。
これは、日頃より松井さん達が理念として掲げている「自主性」が花開いたものだ。

また、非正規雇用労働者対象の情報交換の場「ぷれカフェ」をはじめ、村山地域の若者交流会としてゲストを迎えての「トークライブ&ラーニング・バー」なども積極的に行っている。
その他にも、山形出身の作家たちを紹介するガイドブックの発行や、若者に推奨する文献、数百冊を紹介し、その本のポイントなどを紹介した冊子の発行などにも力を入れている。

心地よい「居場所」を提供する活動を行って来た現在、「不登校」や「引きこもり」といった立場ではなく、学校に通いながら、働きながら「ぷらっとほーむ」を利用するという人がほとんどだ。
この心地よい「居場所」に集う『人々』の声が今日も響いている。

今後の目標・メッセージ

楽しく、安定して生きる。それが目標。女性としてだけの顔だけではなく、母親の顔、妻としての顔、仕事を持つ人の顔、趣味を楽しんでいる時のプライベートならではの顔等々、色々な顔を持つ事が大事だと思う。たくさんの顔を持つ事で、いろんな意味で、危機管理につながると思っている。

あらゆる物体、物は1本の足だけで立っていると、グラグラとしていて不安定だが、その足が2本や3本、4本になれば安定感が増す。顔イコール、自分のいる足場や立場。色々な顔、足場を持つ事で何か一つが不安定になっても、他の顔がある事で支えていられる。いろいろな顔を持つ、足場をたくさん持つ事で、自分を客観的に見ることでき、視野が広がると思う。

「NPO活動や、ボランティア活動を考えている方々には、『タコ足NPO』としていろんな活動をし、いろんな顔や、足場を持った方がいいと思います。」

(平成24年1月取材)