「(株)プランデュー」代表取締役
島貫 直美さん

プロフィール

■活動履歴
平成10年  結婚を機に福島県郡山市から山形市に移住。
平成11年  出産
平成18年  山形県商工会連合会主催起業塾を受講
        株式会社プランデューを設立
平成19年  郡山市ユニバーサルデザイン優秀賞受賞
平成21年  福島県特産品コンクール・生活工芸品部門で優秀賞を受賞
平成22年  山形県に本拠地を移し、西川町の「こくわ」と出会う。
平成23年  月山こくわ石けん・酒粕石けん・紅花石けん発売
平成24年  ラ・フランス石けん発売

チャレンジのきっかけ

ひとり息子が小学一年生になった時、子どもが親離れしたあとの自分の人生を考え、仕事を持ちたいと思った。
前年、配偶者の会社が倒産し、少しの間ではあったが「大黒柱が失業」という状況を経験したことも大きかった。

「サラリーマン家庭で育ったこともあって、働くということは人に雇われることだと認識していました。でも、山形県商工会連合主催の起業塾の新聞広告を見つけた時、自分で自分を雇用すれば良いんだと思ったんです。」
さっそく起業塾に申し込んで、会社運営のノウハウを学ぶために通い始める。

「起業塾では、企画やディスカッションは楽しかったのですが、経営や財務の話はちんぷんかんぷん、数字をもとに長期計画する勉強も苦痛で、仲間にやってもらっていました。家族を養うためにと本気で学んでいる男性の塾生を見て、私は甘いなぁと自覚していました。」
ただ起業塾の講師は、責任感から思いつめて考え過ぎてしまいがちな男性に比べ、女性の気楽な発想や余裕が効を奏すとも言っていた。

起業塾の最終日にあった講師との面談では、入室した途端、『あなたには何も言うことはありません』と言われ、”そこまで劣等生だったのか。”とうなだれた。が、講師はこう続けた。『あなたが起業して何か辛いことがあったときに、ここで学んだ仲間たちはあなたを助けるために駆けつけますよ。』
そして、『すぐに起業なさい。』とにっこりした。
「他の塾生たちのように、具体的なアドバイスは一切ありませんでした。」
しかし、『自分らしさ』だけでは大きな壁に突き当たった。
「今は、『自分らしさ』は優先しません。最後尾でちょうどいいと思っています。」

チャレンジの道のり

起業塾を卒業したちょうどその頃、会社法が改定され、資金が少なくても株式会社を設立することが可能になった。
「不況のど真ん中でしたが、不況だからこその政府の政策にのってみました。山形県商工会連合会の方々の助力もあって、起業塾の株式会社設立第一号として、スタートしました。」

もともと日本で一番食品などの安全基準が厳しいと言われている生活クラブ生活協同組合に所属し、理事として活動していた島貫さん。
「組合員に広報するべく、生産者に直接会ったり、取扱品の品質などを一つ一つ細かく審査したり、料理教室を開催するなどの活動をしていました。おかげで、生活に関わるあらゆるものについての考え方をもつことができたことに感謝しています。」

生協活動のひとつに、環境に負荷がかかり過ぎる合成洗剤を止め、”石けん”の使用を推奨する”石けん運動”がある。島貫さんは石けんの良さを理解している組合員のみならず、情報を持たない一般の人でも、単純に可愛らしいから、とか、地元の農産物を使っているからなどの理由で手に取りたくなるようなオシャレな石けんを作って売れれば、結果、たくさんの人がエコアクションをすることになる、という仕組みを作りたいと思ったという。
「創業コンセプトは、エラそうなエコじゃない、日本の農業がんばれ、という意味で、『農産物におしゃれな魔法をかけたいの』という”女子っぽい“ものです。」

石けん製造の様子
ラフランス石けん・ほおずき石けん

現在の活動内容

「お客様のより深いご理解を得るために、ウエブなどを通して、おしゃべりすぎるくらい情報を表に出しているつもりです。石けん自体は油脂とアルカリでできている単純構造のものですので、同じものは簡単に作れます。でも、ハートは盗まれないと、さらに勉強しようと自分にプレッシャーをかけています。それに、良質の素材を使えば素材が答えをだしてくれる。うちの石けんは、食と同じです。」

山形に来てまもなく、買い物中に偶然見つけてファンになった山形産米油をベースとして、地元の農産物などを練り込んだ石けんを販売している。
「昨年、山形に拠点を移し、友人や知人の協力のもと、山形第一弾として”月山こくわ石けん”が出来上がりました。」 こくわは、さるなしとも言われるキウイの原種で、長年西川町で月山こくわ栽培と育種を行っている、当時85才の佐藤一男(さとういちお)さんに出会った島貫さん。
「生協時代からたくさんの素晴らしい生産者にお会いしましたが、この出会いは格別、本当に感動しました。」
「ずっと生産者の物語商品を開発したかったので、ようやく実現できて嬉しかったです。」

「昨年12月から、西川町の農業法人じょいふるふぁーむさんに製造を委託し、石けんを作るために地元の主婦の方々が雇用されました。農家さんの第6次産業化の成功事例を作れるようにがんばります。」

今後の目標・メッセージ

昨年、山形県中小企業家同友会の経営セミナーを半年受講、企業理念を作成し、一つ目に『私たちは自然の恵みと命を育むせっけんものがたりを提供します』と掲げている。

「企業理念をもったことで、創りたい石けんのイメージが明確になりました。地域の物語、農業の物語を石けんにしていきたいと思います。」

(平成23年12月取材)