「栄養支援室uni-sia(ゆにしあ) 代表」
池田 百合子さん

プロフィール

■活動履歴
山形県山形市生まれ。山形市在住。管理栄養士として、給食委託会社や特別養護老人ホームなどに勤務。
平成23年4月   栄養支援室uni-sia(ゆにしあ)を設立
平成23年6月~  山形県老人クラブ連合会「平成23年度健康づくり地域サポーター養成事業」講座担当
平成23年8月   内閣府地域社会雇用創造事業、ソーシャルビジネストライアル東北リーグ第2期の採択を受ける
平成23年8月~  明徳予備校「介護職員基礎研修」非常勤講師

■資格
平成 8年    栄養士免許取得
平成13年    管理栄養士免許取得

チャレンジのきっかけ

それまでは給食委託会社や特別養護老人ホームなどで勤務してきた池田さん。
取り立てて特別なことを行ってきたわけではなく、管理栄養士として高齢者の方の食事を考えながら栄養管理をするスタッフとして従事してきた。
「それまでは作って出すだけの”給食のおばさん”のように、食事の場には立ち会わずにずっと厨房にいたんですね。よく高齢者の方が食べているところを見ないで作っていたなぁと今になって思います。」

2005年から始まった栄養ケア・マネジメント制度によって、現場では給食を作って出すだけの業務ではなく、栄養士や管理栄養士が食事や栄養面を通して、状態の改善や維持に非常に重要な関わり方ができるという事に気づかされる。
さらにデイサービスやショートステイの利用者との関わりから、在宅療養者の方のほうが低栄養が引き起こす『生活の質の低下』を招いているという場面を多く目にする。
「原因を探っていくと、かなりたくさんの方が『摂食・嚥下障害』という食べて噛んで飲む一連の行為に障がいがあることがわかりました。当初は対処方法もよく分からなくて、研修会に参加したりして興味を持って勉強しましたね。」しかし、長期入居者のケアマネジメントや施設の給食管理で手一杯の状況。施設に在籍しながら在宅療養者まで十分な支援をすることが困難と感じた池田さんは独立を目指す。

「当時、デイサービスを利用していたALSという難病の患者の方から、『食事の支度について電話だけでは具体的な事が理解できないので、実際に自宅に来て教えてもらいたい』『どんな特殊食品をどこで購入すればいいのか』など、多くの悩みを伺いました。このことが在宅へ飛び出す大きなきっかけになりましたね。」

「今一緒に活動している管理栄養士のパートナーも同じ施設で働いていました。同じモチベーションで目指すところも共通しています。」
在宅療養者には、いろいろな職種によるチームで対応したほうが、食事に関して安全で良いものを提供できると実感し、介護支援専門員(ケアマネージャー)さんをはじめ、在宅支援に関わっている専門職の方々と出会い連携しながら活動の準備を始めている。

チャレンジの道のり

「在宅の現場がどのようなものなのか、まず『自分が活動していく場所』を知ることから始めました。」

訪問栄養士の活動を調査したところ、介護保険利用の在宅療養者への介入率はわずか0.3%という状況であった。
在宅療養者の方は、食事や栄養面の対応をどうしているのだろうという疑問と、地域の栄養士という存在がないためにその役割を他の専門職が担っている現状が見えてくるにつれて、池田さんは栄養士の存在が希薄になっていくのではと危機感を感じたという。

さらに、ケアマネージャーの仕事や介護保険の仕組みはどうなっているのか、社会福祉士など他の専門職にはどういった職種が関わっていてその連携はどうなのか。山形市や全国における在宅医療や介護の動きについても学んでいる。

「常にアンテナを張り巡らせて、研修会や学会、スキルアップゼミなどの情報のある場に積極的に出向くように心がけました。特に山形市市民活動支援センター(特定非営利活動法人山形の公益活動を応援する会・アミル)では、社会貢献活動を実業にするという方法について教わっています。
平成23年4月に栄養支援室uni-sia(ゆにしあ)を開業はしましたが、現在も知らないことを学びながら成長している状況です。」

地域サロン『栄養講話』
『わたげの会』さんとレシピサポートの打ち合わせ

現在の活動内容

「これまで知り得なかった社会を知り仕組みを理解していく中で、『住みやすい地域とは、療養者や家族・介護者が不安なく食事や栄養状態のサポートを受けることができる環境でなくてはならない!』と感じ、私たちはそのための代理人になる必要があると意識しています。」
ただ、事業を進めていく上で立ち位置を間違えないよう、思い込みによって一方的な栄養ケアの提案になってしまわないように、利用者本人や家族はもちろん、関わる専門職等の方々のニーズをしっかり把握するため、活動エリアでの実態調査も定期的に行っている。

『何のために誰のために事業として訪問栄養食事指導を行うのか?』『解決しなければならない課題は何か?』『私が行わなければならない理由は何か?』『それで生じる社会の変化は何か?』活動していくためのミッションにブレがないか、常に心に留めていると池田さん。

「おかけで私たちの活動に賛同いただいている天童市の通所介護施設の全面協力を得て、施設利用者への栄養調査や食環境のサポート、施設およびスタッフ支援という”uni-sia(ゆにしあ)モデル”での介入をまさに今、始めるところとなっています。」
「医療機関には、食事と栄養ケアサービスを提供するために介入につながる手段を模索している段階です。また予防的活動としては、元気高齢者への栄養講話のご依頼を受けたり、介護職志望者への『食生活支援』講座を受け持たせていただいたりする機会をもらっています。」

今後の目標・メッセージ

マネジメントの父ドラッカーの『何によって憶えられたいか?』の問いには、『私は療養者に寄り添える”地域のかかりつけ栄養士”として覚えてもらえるように活動に取り組んでいきたい』と答えている。

「在宅医療や介護に、栄養士や管理栄養士がますます必要になる時期に来ています。それに対応するために、ボランティアとしてではなく継続して活動していける事業化を目指しています。ただ決して一人で出来ることではありません。病院・福祉・地域・行政・集団健康管理・研究教育等の各分野で活躍する職種が、その時々に応じてチームになる必要があると考えます。在宅医療・介護における食事サポート&栄養ケアが、そのきっかけになる存在『つながるケア』になれるに違いないと思っています。」

「多くの方々のご賛同・ご協力のおかげで活動できているものと感謝しております。栄養支援室uni-sia(ゆにしあ)は『地域に栄養補給と幸せの連鎖を!』を理念に、今後も活動を続けていきます!」

(平成23年9月取材)