「特定非営利活動法人オープンハウスこんぺいとう」 代表
川又 真貴子さん
チャレンジ分野:

プロフィール

平成13年  新庄市松本にて有償ボランティアチーム「こんぺいとう」発足
平成14年  特定非営利活動法人(NPO)を山形県より認定
         認可外託児所として新庄市より認証
平成15年  通所サービス事業を山形県より認定
平成16年  居宅サービス、訪問介護事業所「かざぐるま」
        居宅介護支援事業所「いろり」共に山形県より認定
平成17年  「緑ナンバー」での移送サービス事業、国交省より認定
平成21年  病後児対応型保育事業所として山形県より認証

受賞歴
平成22年  内閣府特命担当大臣子育て家庭支援部門功労賞表彰
        毎日介護賞山形支局長賞
        山形県男女共同参画社会づくり功労者等知事表彰

チャレンジのきっかけ

もともと看護師であった川又さんは、まだ介護保険制度が始まる以前に自分の母を自宅で看取っている。 『すごく困ったときに、誰かほんの少しでもいいから手伝ってくれる人が欲しかった。』母の介護をしつつ3交代勤務、主婦として子育て中の母として、一人何役もこなしながら身にしみて感じたことだった。

当時、託児所はだんだんと増えてきている時期ではあったが、高齢者の世話をしてくれるところが無かったこの地域に、宅老所があっても良いのではと思っていた。
「おじいちゃんやおばあちゃんたちが一緒に集い、お茶飲みができる場所があれば、一人で自宅にこもり、家の中だけで様々な問題を抱えなくても元気になる方法はあるのでないかと考えていました。」

病院を定年退職でもしたら、そんな場所を作ってみたいとひそかに夢を抱いていた。やがて外来に勤務すると、子育て中の同僚看護師が、体調の悪い子どものために勤務交代や早退をするのを目の当たりにし、「長年思っていたお茶飲みの場があればお互いが元気でいられると思い、意を決して始めたのが、オープンハウスこんぺいとう”病児預かり”と”宅老所”です。”今できる人ができる事で支え合いたい”が、一番の思いで。」

チャレンジの道のり

立ち上げるにあたって何をどうしたら良いかと考えあぐねていた頃、ふと付けたテレビの番組に山形わたげの会の神尾さんが出演していた。すぐ連絡をとってお目にかかり最上地域で宅老所を開設したいことを相談したところ、NPO法人ふれあい天童の代表である加藤さんをご紹介いただき、加藤さんから設立までの様々なアドバイスを頂いた。
「何はさておき事業所を探さなくてはならないということで、1月の雪深い新庄市内を歩きまわって空き物件を探しても、なかなか貸してくださるところが無く、結局築40年くらいの中古住宅を買って始めました。」
平成13年の8月、有償ボランティア団体として設立する。

程なく平成14年託児所施設基準で、施設要件を満たすために他の物件へ移転することになる。
「沼田建設の方が親切にいろんなところを探してくれたんですがなかなか見つからず、社長さんのご好意で貸してくださった資材置き場を改装してそこで3年くらい運営しました。」「利用者も多くて、当時は夜中でも応じてくれるということで駆込み寺なんて言われたくらいですよ。」

現在は、川又さんが看護師時代に宅老所開設の夢を語っていた医師の方が、その思いに賛同され建築していただいた物件を借りて事業を行っている。
「1人の思いがあっても同調してくださる人が周りにいないと事務所さえも与えられない。気持ちや志があっても、お金が無ければ遂げられない。銀行さえ相手にしてもらえない現実を経験しました。」

「当初はボランティアなら無償だろうと考えている人が多くて、なかなか信用が得られず苦労もしました。」
平成14年に”NPO法人オープンハウスこんぺいとう”となるが、行政を含め地域にNPO自体がまだ浸透しておらず、どこかの悪徳業者や宗教団体だと疑われたこともあったという。

利用者の方たちとの交流の様子
様々な年代の人々が集う場所

現在の活動内容

24時間の託児や学童預かり、障がい児の支援、宅老所や介護保険事業、移送や配食サービスなど、オープンハウスこんぺいとうのホームページにも事業概要は掲載してあるが、利用される方の様々なニーズや実際の声が発端となって、サービスが次々と拡充されてきている。
「活動目的に関連するものなら何でもやります。たとえ一家族でも一人が相手でも、できる人ができることでサポートしたい。こんなサービスがあって良かった、という利用者の声を受け止め、困った時に思い出してもらえれば、立ち上げた意味があるのかと思います。」
「問い合わせが来たら断らず、まず受ける方向で考える。よほどのことで困っている人が問い合わせてきているのですから、電話は大切に思っています。」

たった1人の思いつきから始まって、今では40名近くのスタッフとともに24時間365日活動している。
「今、ご高齢者さんのお宅で配食しながらお弁当を一緒に食べたり、利用者さんの意向で、喫茶店でコーヒーを飲みながらお話しをする傾聴的なボランティアや、仕事で帰りが遅い親家族に代わって夕食を作り帰宅するまで過ごす訪問託児も始まりました。人生の終末期をこんぺいとうで過ごしたいと言って命を預けてくださる方もいます。」

「10年目の節目である昨年、特命担当大臣功労賞、毎日介護山形県支局長賞や山形県男女共同参画社会づくり功労者等知事表彰などを授与されて、私達の活動もようやく地域の中に入ってこれたような思いでいます。立ち上げた時に先輩から言われた『念ずれば叶う』を胸に、『いつか思いは届く、頑張っていればいつか誰かが認めてくれる』という想いだけでやってきました。ゴールはまだ見えません。必要とされる活動は今、生まれています。」

今後の目標・メッセージ

昨年は思いがけず多数受賞し、良い節目の時期を迎えたと考えている。
「初心に帰り、今後私達に課せられているのは何か、何ができるか、ニーズを探っていくことで、さらに事業内容を充実していきたい。また自分達(スタッフ一同)も地域の中で活かされ、地域と共に生きている事を実感できれば良いと思っています。
そして活動を続けて行く上で必要な経費面を考えていく時期だと思っています。」
「私は今出張で出かけたり、事業所の中を動き回ったりと忙しい日々ですが、足腰の痛みも忘れてしまうほど周りのみんなからパワーをもらっています。スタッフも利用者さんからの”助かるやぁ、ありがとさん!!”の一言で、元気にさせてもらっているようです。」

「どんな人でも、たとえ資格がなくてもできることは必ずあると思います。思いや夢は見るものでなく叶えるものと思っています。
団体を立ち上げるにしてもスタッフとして活動するにしても、地域の人から『良かったよ』と言ってもらい、少しでも元気をもらうためにも、様々な人にいろんな分野で挑戦してもらいたいですね。人から当てにされるのって一番の力になりますから。困った時にはお互い様です。病んでいるところがあっても無くとも、皆で生涯現役を貫きましょう。」

(平成23年1月取材)