ハーブコーディネーター 「Cafe アロマテラス」
安藤 薫さん
チャレンジ分野:

プロフィール

■活動履歴
平成 2年        ハーブコーディネータとして活動を始める。
            県内のカルチャースクールで講師を務める。
平成 9年        NHK文化センター講師を務める。
平成13年~平成20年   YBCラジオ「ハッピーロード」に出演。
平成14年~平成22年   山形放送テレビ「ピヨ卵 料理得モリ元気モリ」に出演。
平成20年        カフェ「アロマテラス」をオープン。

チャレンジのきっかけ

ある日、蔵王で知り合った方にラベンダーのブローチをいただいた事がきっかけ。ブローチを付けたときのなんとも言えない落ち着いた香りがどこか懐かしく感じられ、ラベンダーについて興味をいだいた安藤さん。それまで植物に全く興味がなかったが、ラベンダーの香りに導かれるように書店や図書館に通って調べた。そして、日々の生活に張り合いと生きる力をもたらすまでにハーブにのめり込んだ。
調べていくうちにそれが高じてハーブが欲しくなったが、20年前当時はハーブという言葉自体が聞きなれない時代。「教えてくれる人も近くにいなかったし、自分で調べるしかなかったんですよ。この本が私の原点です。宝物です。」と1冊の本を取り出した。ハーブ研究家の北野佐久子さんが書いた<香りの魔法>という本だった。何度も読み返し、「ハーブってなんて素敵なんだろう。」とますます惹かれていき自分の中にその知識を吸収していった。
やがて自身でハーブを植えるようになって生活の中に使える草花だと感じた。人間が生きるために神さまが与えた草花がハーブだと気づいたという。

料理教室で講習中
カフェ「アロマテラス」店内

チャレンジの道のり

アレルギー体質の子供のために体に良い無添加の物が欲しい、その思いからハーブを使った石鹸やシャンプーづくりをはじめた。また、近所の方や友人に料理やおやつを振舞ったりしてるうちに、そのハーブの良さをいろんな人に教えてあげたいと思い始めていく。
「楽しみながら本を読んでいたら、いつのまにか吸収してしまった感じです。人に教えるために勉強してきたわけではないんです。生活の中から自然に出てきたもので、自分が先生になり教えるなんて夢にも思いませんでしたね。私にとってハーブは生きる支えです。生活の中で不可欠なものですね。」
ご主人も植物が好きとのこと。「いろんな方から励まされてきたことと、家族の理解があったからこそ続けられ今に至っています。ありがたいですね。」安藤さんにとってハーブは家族の絆もいっそう強くしてくれた存在でもあるという。
山形放送テレビのぴよ卵で<ハーブ道場>というコーナーをご主人と一緒に1年担当。その後に、料理番組に出演してみないかと誘われ出演したのが料理研究家としてのデビューだった。そして料理教室やカルチャーセンターの講師をしながら、自宅を改装した週末だけのカフェも開店した。
でもあれもこれもやるより何か一つに集中した方がいいだろうと思い、料理を中心に活動することを決意。「家族の薦めもあって通常営業で丸2年続けてきましたが、最近ようやく自分が料理人になった気がしますね。それまでは、時間に追われて自分でレシピを作って教えているのに本当においしい料理を作っていないと感じていたんですよ。」自分がお店を開き料理人になり、料理に対する感覚が全く変わったという。
「料理教室では子育て中の忙しいママさんが多くて、仕込みに長くかかるメニューではなく”簡単に見栄えよくおいしいもの”が求められていましたね。でも本当にそれだけ教えていて良いんだろうかと疑問に思うようになったんです。」
今は1日24時間のうち半分はお店で過ごしているという。「本当に楽しい。料理を作るって楽しい。料理ってこんなに素晴らしいものなんだとつくづく感動しますね。」

現在の活動内容

「地産地消は言うまでもなく昔から私の料理の基本でした。地産地消とか食育とか言われる前からずっと実践してきましたよ。山形にはたくさんの美味しい食材があるので料理セミナーなどで首都圏に行ったときは自慢してます。化学調味料の使用を極力控えて、野菜の味、お肉の味が”活きる”料理構成をしていますね。」
今のところ教室は開いていないが、ドライフラワーや木の実を使ってリースなどのアレンジも続けている。「これらも身近で収穫できるものを使ってるんです。別に山形の物にこだわっていたわけではなくて子供の頃から川原とかで遊ぶのが好きだったので戻ってしまったんでしょうね。」
<猫じゃらし>や<ぺんぺん草>など身近な野花や木の実がクリスマスリースの花材になるそうだ。山形では雑草という地味なイメージが強く注目されないが、このクリスマスリースが東京のギャラリーでは大好評だったという。
「私たちの身のまわりには素敵なものがいっぱいあるんですけど、なかなか気が付かないんですね。土に帰っていくものだけれどその前に光を与えてあげて、みんなに認めてもらえればこの世に出てきた甲斐があるんじゃないでしょうか。」
最近の安藤さんは料理やハーブについて最初に勉強した本をまた出してきて読むようになっている。「料理も最初のころにどういうものを作っていたんだろうと見返してみると、時間を短縮したメニューが多いんですね。自分に余裕がなかったし若いから若いなりのメニューで作っていたんです。」
「今はもっともっとおいしくするにはどうしたらいいだろうと考える時間ができたし、味覚も変わりました。体を作れるメニュー作りに変わっていっていいんだろうなあと思いますね。」
花のアレンジにも変化があったという。若いときは目を惹くようなものを狙ったが、今はその花が一番美しく見えるようなアレンジを心がけるようになったそうだ。
「料理もそう。この素材が活きてくれればいいなあと思って作りますね。あんまりがんばりすぎたメニューは料理の流れから飛び出てしまうので、一つ一つの素材を見ながら素材に聞きながら作っていくとスムーズにできるんです。お客様にとって違和感のないのが一番いいのかなと思います。」
「料理人として何で勝負するかと言ったらやはり<心>です。おいしいと思っていただけるよう自分なりに一生懸命作ること。」「今日は寒いから最初は温まるメニューでいこうかなとか、汗ばむ夏の日だからところどころに生ものを入れようかとか。店のお客様というより家族に接する様な気配りでやっていきたいです。」
「忘れっぽい性格なので」と笑いながら、週末サロンを始めたときから全メニューを書き残しているノートの話もしてくれた。来店した時のお客様の顔を思い浮かべつつ、メインディッシュや喜んでくださった光景を思いだすことも。
「一日一組でもいらしてくれたらという気持ちなので、商売としては成り立ってないかも。」と安藤さん。でも、これからも<楽しい>と思えるくらいの人数のお客様で、家族に見守られながらずっと続けられればいいなとも思っている。

今後の目標・メッセージ

「新庄市出身なのですが特に自分の生まれた故郷の活性化につながるような手助けができたらいいなと考えています。」「あとはこれまでのメニューをもう一度見返して、構成しなおしてから料理本を出せればと思ってます。料理という共通の話題の提供にもなるご夫婦向けの料理教室も開いてみたいですね。」
「講演でも質問されることがあるのですが、私とハーブ・花・料理との出会いは偶然で仕事として目標にしてきた訳では無いのでアドバイスなんて難しいです。ただ好きだからなんです。栄養士の資格があったからお店はスムーズに開けましたけど。」
と、言いつつも安藤さんは「かけた時間は重要じゃないですね。心から好きで短い間でもその物事に深く入ることができれば、お花でも料理でもスポーツでも自分の身になるんではないでしょうか。私はそういう人に魅力を感じますね。そういう人には何でも教えてあげたくなります。」と語った。
「そういえば中学生の頃にいろんな香水のコレクションをしていたので、昔から香りへの興味はあったんですよ。でもそれまでハーブという存在は全く知りません。蔵王での出会いは運命だったのでしょうかね。」
取材中、何度も「好きだから」という言葉を口にした安藤さん。まさにハーブの<香りの魔法>にかけられ、偶然を必然に変えられた結果なのだろう。

(平成22年3月取材)