ツアーコーディネーター
斎藤 真美さん

プロフィール

■活動履歴
昭和62年  山新観光株式会社入社
平成12年  主任登用
平成17年  管理職登用(課長)

チャレンジのきっかけ

多感な中学生の頃、洋楽が流行し海外旅行も自由化された。外国の文化に触れ憧れた。大学生の時には、アルバイトをして資金を作りアメリカに旅行した。その時の経験がベースになり、将来は外国と日本をつなぐ仕事に就きたいと思った。大学の知り合いに勧められたのがきっかけで、山新観光株式会社仙台支社の入社試験を受け合格し、総務に配属された。
総務に回ってくる営業社員からの伝票で、海外旅行の添乗員という存在を知った。添乗という仕事こそ、自分の目指している外国と日本をつなぐ仕事だと思った。入社して3年目に国家資格である旅行業務取扱管理者の試験に合格した。早速、直属の上司に報告し営業に転属したいと願い出た。上司は、斉藤さんが勉強していたのを知っていて、いずれそういう希望を出すだろうと予測していた。「女性の営業は前例がないし、大変厳しい仕事であるが、それなりの覚悟があるのなら。」と営業部に推薦してくれた。そして、念願の営業部に配属になり、夢への第一歩を踏み出した。

チャレンジの道のり

営業部に移ってすぐに、2週間のヨーロッパ旅行の添乗を命じられた。いろんな分野のVIPクラスのお客様の、専門的な視察旅行だった。「憧れの海外旅行の添乗ができる嬉しさに、内容も聞かずに二つ返事で行かせて下さいと引き受けました。今思えば、何も解らない新人をよく出したものだと思いますね。」
営業部でも上司に恵まれたと斎藤さんは語る。後で聞いた話であるが、上司はこのヨーロッパ添乗の件で、周りの猛反対にあっていたそうだ。しかし、「自分が責任を取るから斉藤さんを行かせてほしい。」と反対を押し切り斉藤さんの添乗を薦めてくれた。
最初の添乗の時にかけられた上司からの「あなたはプロじゃない、でもお客様はプロとしてあなたを見ている。だから自分はプロだと思って仕事をしなさい。何事も一生懸命やりなさい。何があっても途中で投げ出さずに、お客様に喜んでもらえるためには自分は何ができるのかを考えなさい。」という言葉は今でも忘れられない。
「とても解りやすい表現でした。しっかりその言葉を受け止めました。そういう背中の押し方をしてくれた上司に感謝しているし、管理職になった今もその時のことばが道しるべになています。」
営業に出て、添乗に出て、営業成績も上がり、お客様からの良い評価もいただけるようになった。企業に女性は必要だ、とくに旅行業界では女性ならではの感性が活かされると感じた。世の中の流れも女性がどんどん前面に出てくるように変わっていった。

就職して20年経ち、ふとこれからどう生きていくかを考えた時に会社のことしか知らない自分に気がつき、危機感を抱いた。このまま仕事意外に自分に何も残らない、会社にしがみつかざるを得ない生き方はしたくないと思った。そんな時、「チェリア塾」に参加した。そこに集まる、人間味あふれる優秀な女性たちに衝撃を受けた。こういう優秀な人たちのパワーが活かされる社会でなければならないと感じた。
講座の内容も高度で、一般の企業では絶対に学べないようなものだった。今まで自分のいた社会は井の中の蛙だったと痛感した。社会全体の中で自分が何ができるかを考えなければと思った。チェリア塾を終えて、具体的に自分に何ができるのかを考え、模索した。
そして、CSR(企業の社会的責任)・SRI(社会貢献している企業の株を買うというシステム)という言葉を知った。企業も社会貢献が必要であり、企業が成長する手段の一つだと感じた。早速、職場の同僚や上司に話したが、「単なる理想」と片付けられ理解してもらえなかった。
理解してもらうために、チェリア塾でいろいろな企画の勉強をした。講座・セミナーを立案して、企画して実施するという流れを勉強した。その後一般の受講者を募集して、講座を開くという経験をした。その時に自分の考えを人に押しつけてはいけないということを学んだ。「押しつければ人は下がっていくもの。企業の中で自分のやりたい事を通すには、旅行の商品という形にして、メッセージをそれとなく伝えるのが一番いい方法だと思いました。」
試行錯誤してできあがったのが「YBC子供地球塾」である。「子供たちにいろんな自然に触れ合い、社会体験をしてもらうためのプログラムが組み込まれているツアーです。それまではツアーの対象は健康な人のみで、子供向け、お年寄り向けの商品は無かったんです。企業の中の目線もごく一部の人にしか向いていないという事です。もっともっと広い意味で町内会、地域社会、子供、お年寄り、障がい者の方等に目を向けていかなくてはならないと思いました。」
「単なる旅行商品で終わらせないために、親会社にアプローチして理解してもらいメディアを通すことでいい方にいったんです。ようやく自分の20年の思いが一つ形になったのかなと思います。自分の思いを持ち続け伝え続けていれば、必ず伝わります。」

現在の活動内容

地球塾の応用として、引き続きまちづくりに役立つ商品を考えている。「まちづくりに関する協議会や集まりに顔を出し、いろんな情報を聞きながら自分は何ができるのかを考えます。活性化を目指す市町村は、人を呼ぶにはどうしたらいいかと悩んでいます。そこで、その町のどこが魅力でどこが悪いのかを一緒に考え、改善点を示し提案するんです。人を呼べるツアーを作って発信していきたいんです。旅行業界だけでは地元の商品は作っても利益にはならないから難しい、そういう時にマスコミや旅行業者は頼りになりますね。」
2年ほど各市町村に出入りして調査をしているうちに、山形の魅力を再確認した。「海外の観光地より、山形の方がもっとすごいのではと思う事もあります。たとえば、棚田はヨーロッパでは絶対に見られない風景です。実際、外国人の方で日本に憧れている方は多いんですよ。日本の風景や健康的な食べ物に注目しているようです。」
「地元にいる人は山形の良さに気付いていません。私のように海外と山形の両方を比較できる人間がその良さを広めていけばもっと人が集まり、訪れた人も喜ぶと思うんです。いろんな循環ができて、そのサイクルの中に私がいるべきだと強く思います。旅行会社として、山新観光としてできるはずです。こういう流れを絶やしてはいけないんです。企業人としての私の役割だと思います。」
また、山形大学からの依頼で学生向けに講演も行った。
「若い人たちに働く楽しさや、会社の中で自分を活かしていく方法を見つける環境を作る事と、社会に出る若者をバックアップしていく事も企業の役割だと思います。自分の経験談を話す機会があれば、これからも積極的に出ていきたいと思います。逆に自分の方が、先入観を覆されて勉強になる事もありますよ。」

県主催のいきいきWネットワークに参加している。
「女性の異業種交流で、パワーのある優秀な女性が集まっています。パワーをもらっているし、共通した考えを持っています。会社は違っても、志を同じくしている仲間の存在は大きな支えになっています。」

 

今後の目標・メッセージ

「自分自身で努力して、乗り越え壁に当たったという感覚はないんですよ。若さゆえ、その時の思いをまっすぐストレートにぶつけていたからです。まわりもそれに対していい方向に手を差し伸べてくれました。自分だけの力ではなく周りの人々の支えがあったからです。自分の力は1パーセントもないと思います。」
お客様からのサポートが一番大きいと語る。
「お客様のそれぞれの立場から、いろいろな事を教えて下さいました。お客様に育てていただきました。ありがたいと思います。」
「きっかけとか転機は、自分の立ち位置を確認できる時です。その時に自分の気持ちに正直になって、進んでいく事が大切ですね。目標にできるような先輩に出会えるのも一つの転機です。」
「業界としては大変ですが、自分の中に生き方や仕事に対して信念があるので楽しみですね。何か変えることができるのではないかという期待があるんです。」

(平成22年3月取材)