絵本作家
ラーワーちひろさん
チャレンジ分野:

プロフィール

群馬県出身。
保育士の専門大学校を卒業後、埼玉県の保育園で保育士として働く。
3年間勤めた後、23歳の時に群馬から沖縄までママチャリで一人旅を決行した。
その途中で、同じく自転車で四国を一周していたアメリカ人のフレデリック・アイザック・ラーワーさんと出会い結婚。
その後はアメリカで生活をしていたが2018年に帰国し、2019年に鮭川村へ移住した。
絵本作家としての活動を軸に、子どもたちを対象にしたアート活動も行っている。
「森のようちえん・カムイキッズ」を立ち上げた夫と子ども2人との4人暮らし。

チャレンジのきっかけ

 人生観を変えることになったきっかけの一つは沖縄への一人旅だった。ママチャリで沖縄を訪れ1か月間滞在する中で、それぞれの考えを持ち、おもしろい生き方をしている人たちと出会った。「こうでなきゃいけない」と教わってきたそれまでの生き方を振り返ると同時に、どうすれば楽しく、自分らしく生きられるかを考えるきっかけになった。

 沖縄では似顔絵を描いて帰りのフェリー代を稼いだ。その後群馬に戻り、生活費を捻出するため、派遣で保育士をしながら絵を描き続けた。旅の途中で出会った夫とは4年後に結婚。そしてすぐに、大学院進学を希望する夫ともにアメリカのモンタナ州に移り住んだ。

 アルバイトをしながら絵を描いていたが、長男が生まれるとアメリカという慣れない土地での子育てに悩んでしまう。頼れる人がいないうえに、日本のような子育て支援がなく、ベビーシッターにお願いするにしてもシッター料も馬鹿にならない。子育てする環境に悩んでいた頃、群馬県の山間部に「森のようちえんをつくらないか」という話が舞い込んだ。それなら、自然の中でのびのびと子どもを育てられると思い、4年間のアメリカ生活を経て日本に帰国した。

 「森のようちえん」とは、ドイツが発祥の自然体験活動を基軸に子育て・保育、乳児・幼少期教育を行う取り組みの総称で、一般的に言う幼稚園や保育園とは保育の形態が異なり、森、海、川、里山などが活動のフィールドになる。1年間準備に関わったが開園までには至らず、別の地で「森のようちえん」をつくる夢を叶えようと転居を考える。移住先の希望は四季が感じられて方言があまりきつくないところ。加えて、夫は雪が降る地域を希望した。その条件に合致したのが山形県だった。最終的に選んだのは、移住者支援住宅を建設するなど移住者支援が充実している鮭川村で、2019年3月に移住した。

チャレンジの道のり

 実際に住んでみた鮭川村は、ウエルカムなところという印象だ。人との付き合いの中で嫌な思いをしたこともなく、冬の大変さも感じなかった。一つ挙げるとしたら、村に産婦人科の専門病院がないところが残念だった。移住してきたときには2人目を妊娠していたので、選べる病院がなく不安を感じた。

 出産前まで村立の保育園で働き、産休の間に絵本作りを始めた。クラウドファンディングで資金を集め、先に最上地域に移り住んで絵本を出版しているユニット「あるほなつき」さんにアドバイスをもらえたことも心強かった。こうして完成したのが『モンスターほいくえん』。役場でプレスリリースをし、メディアで取り上げてもらえたことで、活動を知ってもらえるようになった。

現在の活動内容

 現在は絵本やイラスト製作の他に、2年前から、子どもに向けたライブペイントのアート活動を行っている。テーマを決めず、下地を塗ったベニヤ板にアクリル絵の具で自由に絵を描いてもらう。「これが良い、これが駄目」と批評するのではなく、「楽しく絵をかけたら正解」というスタンスだ。絵を描くことを好きになってほしいという願いから始めた活動で、マルシェなどでこれまでに10回ほど開催している。

 絵本の製作に関しては、経費のこともあり頻繁に出版することはできないが、コンセプトは、子どもに大人が寄り添い一緒に楽しむことができ、子ども心を思い出させてくれるような絵本。絵本を通して、大人がルールなどを教えるだけでなく、子どもの世界に大人も入って世界観を共有してほしい。大人と子どもの両方の目線を大事にしていきたいと思っている。忙しい日常の中では、つい「早くごはん食べなさい」とか「早く〇〇しなさい」と言ってしまいがちだが、親子でゆっくりと時間を共有するアイテムとして、絵本を選んでほしいと思う。また、村の教育委員会、読み聞かせサークルと協力し、鮭川村の民話を絵本化する事業も行っている。講演会の講師として県内の自治体から呼ばれる機会も増えてきた。

 創作活動の合間を縫って、夫が主になって取り組んでいる「森のようちえん・カムイキッズ」に顔を出すこともある。アートに興味がある子がいれば、一緒に遊びながら創作の楽しさを伝えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

今後の目標・メッセージ

 自分自身、不自由なことが嫌い。子どもに対しても「あれしなさい、これしなさい」という声がけで、がんじがらめに縛られることなく自由でいてほしい。絵の世界を通して子どもたちが自由であり続けられる場所をつくっていくのが願いだ。そして、仕事や活動を楽しむ自分の姿を見せていくことで「大人になっても楽しそうだ」と感じてもらい、その子らしく成長していけるように子どもたちをサポートしていきたい。

(令和4年8月取材)