プロフィール
20代前半に着付け教室に通い始め、29歳で和塾を立ち上げた。
以来「着物を通して街を元気にしたい」という思いから着物のイベントを企画したり、着付け師として上山市内のイベントに参加しながら、着物の魅力と着る楽しさを伝えてきた。
現在は成人式やブライダルなどでの着付けや、着付け教室の主催、イベントへの参加のほか、着物のレンタルも行っている。
(株)ウィズライフ・デザイン、和塾代表、上山市生まれ在住。
チャレンジのきっかけ
着物との出会いは “花嫁修業”という言葉が一般的に使われていた30年前だった。県外の大学を卒業してすぐに結婚することになり、「着物一枚たためないようではいけない。花嫁修業として着付けを習ったら?」という母の勧めで着付け教室に通い始めた。26歳のときにアシスタントとして本格的に着付けの仕事に関わるようになり、歯科衛生士として働きながら着付け師の免許を取った。その後36歳で歯科衛生士の仕事を辞めるまで、着付け師とフリーランスの歯科衛生士の二足のわらじを履く生活が10年続いた。
チャレンジの道のり
着物と触れ合ううちに、日本文化の象徴である着物をもっと気軽に楽しんでほしい、着物文化を無くしたくない、という思いが強くなっていった。「着付けには決まりごとがあって難しそう」というイメージを払拭し、着物の魅力を伝えるため、29歳の時に友人3人と和塾を立ち上げた。しかし、これまでの着物の概念を変えようという思いが強くなればなるほど、「その着付け方は邪道だ」という厳しい声も聞こえてくるようになった。
立ち上げから1年後の2001年、市民参加型の街づくりを進める上山市の事業の一環として、かみのやま温泉旅館組合が企画した「ゆかたの似合うまちづくり」に関わることになった。宿泊客に浴衣を着て街なかを散策してもらったり、市役所や銀行、郵便局の窓口職員も浴衣を着て街を盛り上げようという取り組みで、着付けのできる現場があることは技術のレベルアップにつながるため、願ってもない話だった。開催された3日間、メンバーで職場や旅館に出向き、着付けを行った。同時期に「ゆかた美人コンテスト」も開かれ、街全体が活気にあふれた。これらのイベントに参加したことが自信や力となり、和塾独自で公民館を借り、地域の人たちを対象とした着付け教室を始めた。
活動を続けるうちに、次第にブライダルの仕事が入るようになった。着付けだけではなく、ヘアメイクも含めてトータルに関わっていきたいと思い、40歳の時に美容専門学校に通うことを決断し、美容師の免許を取得した。また、着物の歴史や文化についての知識を習得する「きもの文化検定(1級)」にも挑戦したり、友禅染めに特化した「手描友禅指導員」の資格も取った。
勉強を重ねていくうちに、生地1反分に1,200個もの繭の命が宿っていることを知り、着物への愛おしさは増すばかりだった。知れば知るほど、「着物が欲しい、自分も着てみたい」という思いが強くなっていき、購入したり、知り合いの人から譲り受けたりした着物の枚数は、カジュアルなものからフォーマルなものまで合わせると衣装部屋1部屋分にもなる。帯や小物類の個数は数えきれない。また、ブライダルの仕事でも使えるようにと、振袖、打掛、引き振りを個人で保有している。
現在の活動内容
和塾では成人式やブライダルなどの着付けのサービス、着付け教室の主催、イベントへの参加、着物のレンタルを行っている。着付けは、一般的な教室では教えないような帯の結び方やその時代に合った着付け方など、独自にアレンジしたスタイルを提案している。
お客さんの希望もさまざまで、ドクロが大好きな女性の成人式の着付けでは帯揚げにドクロを挿してアクセントにしたり、ある結婚式では新婦が作った大きさ20cmのテディベアを2体、帯に付けて結んだこともある。また、結婚式に出席するという車椅子の女性に着付けをした時に、「もう着物は着られないと思っていた」と言って、すごく喜んでくれたことが忘れられない。お客さんの要望を叶えて喜んでもらうことがやりがいにつながっている。
着付け教室は上山市(和塾/毎週木曜19~21時)と山形市(東部公民館/月1回土曜10~12時)の2か所で開いており、その他にボランティアで出張着付け指導も行なっている(上山市「常設高齢者サロンまじゃれ」/月1回)。和塾のメンバーは現在30人。立ち上げ当初からのメンバーはいないが、和塾の着付け教室の生徒だった人たちが頑張ってくれている。国家資格である着付け技能士を目指している仲間もおり、お互いに着付けのモデルになりながら、みんなで学び合っている。
30代の頃は、霞城セントラルの広場を借りて着付けショーを開いたり、毎年12月には大きな会場を借りて、着物で参加するクリスマスパーティーを開催していた。コロナ禍で過去2回中止を余儀なくされていた「上山ワインバル」も2022年から再開され、かみのやま温泉駅の中に設けたブースで浴衣の着付けを行った。また、同年夏に開かれた「スマイルプロジェクト☆かみのやま」では、演奏する地元高校の吹奏楽部の生徒たちに浴衣を着付けることでイベントに協力した。少しずつイベントが戻ってきたことで、着物を楽しんでもらう機会が増えてきた。
クリスマスの時期は、クリスマスカラーや小物を取り入れて着付けを楽しんでいます。
左は金と銀色の帯でオリンピックをテーマに結んだもの、
右は紅孔雀をイメージして結んだものと、帯のアレンジは無数。
今後の目標・メッセージ
「古い着物には時間をつないできた魅力があります。また、着物を見ると着た時の思いや風景がよみがえってきます。和の文化を守り、着物の良さを伝えていくために発信できる人たちを育てていきたいし、私自身も『この人に頼めば着物のことはすべて大丈夫!』と思ってもらえるように頑張っていきたいです。楽しく、元気な街には人が集まってきます。上山市が盛り上がるように、着物を通してその一端を担っていけたらいいですね」。