プロフィール
1983年、酒田市のお寺の一人娘として生まれる。
駒澤大学仏教学部卒業。
パレットクラブスクール イラストBコース12期卒業。
2006年より作家活動を始め、雑貨&ステーショナリーデザイナーを経て2010年に独立。
フリーランスのイラストレーターとして児童書、絵本、保育書など子どもの本のイラスト制作を中心に活動。
主な作品は「ラブラブちゃるひめシリーズ」(そうえん社)、「わたしのおでかけバッグ」(ポプラ社)、「こどもちゃれんじぽけっと」のしまじろう(ベネッセ)など。
童謡をモチーフにしたイラスト展など個展を定期的に開催し、県内外のグループ展にも積極的に参加している。
2013年に結婚し、8歳の女の子、5歳の男の子の子育て中。
- 最近の主な作品
・「あっという間にかんたん年賀状2023年版」(技術評論社)
・「せいさく帳」(世界文化ワンダー)
・「決定版 シーン別対応がわかる 気になる子の保育サポート74実例」(新生出版社)イラスト
・酒田市美術館「こどもワークシート」デザイン
・酒田駅前「ミライニ」館内 「酒田まちなかMAP」イラスト製作
・「PriPri」(世界文化社)壁面デザイン
・rikko絵本「バスをまっていると」が「第10回MOE創作絵本グランプリ」最終選考作品として
「月刊MOE (モエ)」(白泉社)2022年2月号に掲載
- 最近の主な展示
・2019年
2月 松山伝承館(酒田市)にてロビー展示「おひなさま rikko童謡イラスト展」開催
12月 Labミニギャラリー(酒田市)にて「CoolでKawaii二人展」開催
・2020年
2月 酒田市民会館・希望ホール(酒田市)にて「酒田アートマルシェ2020」参加
12月 Labミニギャラリー(酒田市)にてグループ展「写真に帰ろう」参加
・2021年
6月 Labミニギャラリー(酒田市)にて「Four seasons さとうまりこ・rikko 二人展」開催
・2022年
9月 ミライニ・酒田市立中央図書館(酒田市)にて
「rikkoイラストパネル&ダンボールアート展 ~さかたのかわいいであそぼう!」開催
10月 山居倉庫・酒田夢の倶楽(酒田市)にて
「ようこそSAKATAとイラストの世界~イラストレーターrikko展」開催
11月 アイアイひらた(酒田市)にて「rikkoのたのしいイラスト音楽会2022」開催
チャレンジのきっかけ
小さい頃から絵を描くのが好きだったが、中学や高校で美術部に入ることもなく、絵を仕事にしたいという気持ちは全くなかった。イラストレーターへの憧れはあったものの、雲の上のような存在で、遠い世界だと思っていた。
お寺の一人娘だったので、ずっと、いずれはお寺を継がなければいけないのかな、という思いがあった。高校生になり将来のことで悩んだ時、そもそも仏教について何も知らないということに気づき、まず仏教のことを勉強して、それから自分がどうしたいのか決めようと考え、駒澤大学の仏教学部に進んだ。
大学では美術部に入り、そこで絵の好きな人たちと交流するようになり、初めて油絵にも挑戦するなど絵の世界が広がっていった。しかし、絵よりも雑貨への憧れのほうが強く、当時は地元の酒田にはかわいい雑貨や文具を売っているお店がなかったので、「東京に行ったら素敵な雑貨屋さんめぐりをしたい!そういうお店でアルバイトしたい!」と思っていた。念願だった雑貨屋さんでアルバイトをするなど東京での生活を楽しんでいたが、就職活動に出遅れてしまい、希望していた絵本や児童書関係の職種はすでに募集が締め切られていた。ちょうどその頃、雑貨や文具を作ることのほうに興味が湧いてきて、デザイナーになりたいという夢が生まれていた。しかしデザインの仕事をするには、IllustratorやPhotoshopといったパソコンのソフトを使えなければならなかったため、大学4年になってグラフィックデザインが学べるキャリアスクールに週1回、通い始めた。
卒業が近くなり何社か採用試験を受けて、雑貨を販売するショップを運営しながら自社でキャラクターグッズのデザインも手がけている会社から内定をもらった。自分のやりたいことが全部詰まっている会社だと喜んだが、両親は仏教関係の仕事に就いてほしかったらしく、大学まで行ったのに雑貨屋か、とガッカリしたようだった。やりたいことに向かって勉強して、それが実現したのに全然喜んでくれないなぁとショックだったが、それでも自分の好きなことをやろうと思い入社を決めた。
会社は大阪に本社があり、東京支社は店長と自分の2人だけという環境だった。店長はフリーのイラストレーターとしても活動している人で、子ども向けの本の挿絵などを描いていた。憧れていたイラストレーターを初めて身近で見て、自分もこんなふうにイラストを描く仕事をしたいと思うようになった。しかし経験もなく、まだ“自分らしい絵”がどんな絵かもわからず試行錯誤の日々が続いた。
チャレンジの道のり
入社して3年目くらいからプロジェクトを任されるようになった。有名な文具メーカーの依頼で、自分が描き起こしたキャラクターのイラストがさまざまなグッズに展開されたこともあり、これが自信になってそろそろ独立したいと思い始めた。しかしその一方で、自分は本当にイラストレーターとしてやっていけるのかという不安もあった。
そこで、週1回、第一線で活躍しているプロから直接指導が受けられるパレットクラブスクールのイラストコースに通うことにした。課題を出され、作品を描いていって講評会をするという授業で、腕試しのような感じだった。授業が終わったあとに自分の作品をまとめたポートフォリオ(作品集)を先生に見てもらい、意見を聞いたりした。そこではいろいろなジャンルの先生からプロの目で作品を見てもらえて、とても刺激を受けた。
パレットクラブスクールを卒業すると、作品のPR用のパンフレットを作って100社を超えるほどの出版社やデザイン事務所にDMを送った。一言でイラストといってもジャンルが幅広く、何でも器用に描けるタイプではなかったため、子ども向けのイラストでいくと決めて、少しでも目立って手にとってもらえるようにポートフォリオを工夫して必死にアピールした。すると、スクールで一緒に学んだ仲間と東京・渋谷で初めてグループ展を開いた時に思いがけない出会いがあった。DMを送っていた出版社の人が見に来ていて、児童書の挿絵を描いてみないかと声をかけてくれたのだ。それが『ラブラブちゃるひめシリーズ』で、イラストレーターrikko(りっこ)としての初めての仕事となった。2006年のことだった。
rikkoは本名のリエコからついた愛称で、昔からこう呼ばれていた。子どもの頃から絵を描くのが大好きだったので、その時の気持ちのまま描いているという意味も込めて、rikkoの名で活動をスタートした。まだ会社勤めをしていたので、夜の8時過ぎに仕事が終わって、家に帰り11時くらいからイラストを描き始めるような生活が続いた。
酒田にUターンしたのは2010年。イラストレーターとして東京であと数年は経験を積みたかったが、家庭の事情などがいろいろと重なり戻ることにした。シリーズの仕事が決まっていて、ある程度基盤もできていた頃で、酒田にいても東京で個展を開いたりする活動はできるという思いもあった。完全にフリーになってからもそのまま東京の仕事を継続して、世界の童謡をテーマにしたイラストの個展を開いたり、順調に基盤を固めていくことができた。
Uターン後しばらくして高校の同級生と再会し結婚。もともと夫は日本の文化に興味があったということもあり、出家してお寺を継いでくれたため、両親も安心し、子どもの頃から抱えていた心の負担も軽くなった。
現在の活動内容
以前はほとんどが東京のクライアントからの仕事だったが、今は酒田での仕事も多くなっている。きっかけとなったのは、酒田の南新町でギャラリーを営むLabから、同じ酒田に住む女性写真家と二人展をしないかと声をかけてもらったことだった。
モノクロのアート写真とかわいい系のイラストでテイストは全然違うが、二人とも酒田に暮らしながら創作活動をしているということで、「酒田」を共通のテーマに二人展を開くことになった。その時に初めて、酒田のさまざまなものをモチーフにしてイラストを描いた。酒田といえば白鳥ということで、傘福で有名な「山王くらぶ」で見て印象に残っていた白鳥の吊るし飾りをイメージして、山居倉庫や北前船、日和山公園の灯台などと組み合わせて描いた「さかたのかわいい」のイラストが好評だった。この二人展がきっかけで地元の人にrikkoという存在を知ってもらえて、次第に酒田での仕事が増えていった。自分にとっては、ターニングポイントとなるとても大きな出来事だった。
その後、酒田駅前交流拠点施設ミライニに展示する「酒田まちなかMAP」の制作依頼があった。イラストを描くために実際に建物を見に行き、「酒田にこんなおもしろいところがたくさんあったんだ!」と再発見することも多く、地元の良さを見直すきっかけにもなった。また、同じミライニにある図書館からの依頼で、子どもたちを対象にしたワークショップを開いたり、地元とのつながりが強くなった。ミライニをはじめ山居倉庫の「酒田夢の倶楽」、「アイアイひらた」など地元での個展が続き、とてもありがたく思っている。2023年には、入院している患者さんたちの心の癒しに少しでもなればと、日本海総合病院にイラストを展示する予定だ。
酒田のことを全国の人に知ってもらいたいと思い、お土産にもなる酒田オリジナルのグッズも制作している。ポストカードなど紙の小物だけでなく、酒田大獅子や「はんこたんな」のマトリョーシカ、クリアファイルや手ぬぐいなど、大好きなイラストと雑貨が一つになったグッズ作りを手がけているところだ。
![](https://challenge.yamagata-cheria.org/web/wp-content/uploads/2023/02/rikko10R-271x300.jpg)
「さかたのかわいい」のイラスト
ミライニ・酒田市立中央図書館でのイラストパネル展での様子(2022年9月)
今後の目標・メッセージ
今、絵本が売れない時代といわれるが、絵も文章も自分で創作した絵本をたくさん出版することが一番の目標だ。rikko絵本の『バスをまっていると』が、第10回MOE創作絵本グランプリの最終選考に残り『月刊MOE モエ』の2022年2月号に掲載されたことが自信になった。
絵本と童謡が好きなのは、小さい頃からテレビで見ていて大好きだったNHKの『おかあさんといっしょ』の影響が大きい。大人になった今も、構成や音楽など番組自体を愛しているので、いつかこの番組でミュージックビデオのアニメーションを手がけたいという夢を持っている。
ワークショップの依頼も増えたが、美術のことを専門的に勉強していないので、最初は「何を教えていいのか」と自信がなかった。しかし、回を重ねるごとに子どもたちが楽しいと言ってくれて、自分自身も一緒にやることが楽しい。ワークショップは子どもも大人も絵を描くことを通して交流が広がる場になっているので、これからも大事にしていきたいと思っている。
これまでいろいろな人との出会いに導かれてきた。今が一番いい形で仕事ができているので、これからも東京の仕事がベースになるが、東京でも酒田でもイラストレーターとしていろいろなことに挑戦していきたい。
![](https://challenge.yamagata-cheria.org/web/wp-content/uploads/2023/02/rikko8R.jpg)