丸和熱処理株式会社 本社
鈴木 真由美さん 舟越 裕加理さん

舟越裕加理さん(左)   鈴木真由美さん(右)

プロフィール

丸和熱処理株式会社(代表取締役社長 後藤章洋)

1973年に金属熱処理業として創業。自動車部品・油圧機械・産業機器など、あらゆる分野の金属製品の熱処理加工・表面処理加工などを手がけている。

鈴木真由美
2011年 総務部に事務職として中途入社。2019年より総務部部長

舟越裕加理
2000年 高校卒業後、総務部に事務職として新卒入社。2005年より品質保証部に所属

チャレンジのきっかけ

〈鈴木〉
 転職を考えていた時、それまで製造工場に勤務した経験はなかったが、“ものづくり”をしている会社に就職したいと思っていた。丸和熱処理の面接を受けた際に見学した工場で、50代くらいの女性社員が機械に金属部品をセットし熱処理加工をしていて、その姿がとてもかっこよく見えた。希望が叶い採用されて40歳で入社、総務部で事務職として働き始めた。

鈴木真由美さん
 

〈舟越〉
 高校の普通科を卒業後、入社した。最初は総務部で事務の仕事をし、その後、品質保証部に異動になった。熱処理加工した金属部品がお客様の規格に合っているかどうかを確認・検査して、品質基準を満たしたものだけを納品し、製品の品質が一定に保たれるように管理する仕事だ。また、作業が効率よく進むように作業の手順書を作成したり、生産工程に関わる仕事も担当するようになった。

舟越裕加理さん

チャレンジの道のり

~「エコアクション21」プロジェクトの活動~

〈鈴木〉
 入社した直後に、社内で「エコアクション21」のプロジェクトが立ち上がった。「エコアクション21」とは、環境省が定めた環境経営システムに関する認証・登録制度だ。そのプロジェクトのリーダーだった男性が退職したため、リーダーを任されることになった。
 プロジェクトのメンバーとして、最初は数少ない女性社員の中から4名が選ばれた。金属熱処理加工をおこなう工場のため、環境に負荷を与えながら事業活動をせざるを得ない。その負荷を可能な限り低減するための取り組みとして、二酸化炭素排出量の削減、化学物質使用量の削減をはじめ、廃棄物の削減やリサイクルなどについて、前向きな視点で環境活動を進めた。

〈舟越〉
 「エコアクション21」プロジェクトのメンバーになり、まず古紙のリサイクルに取り組んだ。コピー用紙や伝票の両端面などの紙ゴミが多く出ていたが、当時はそれを捨てていた。そこで、社内で発生した古紙を集めてリサイクル業者に買い取ってもらい、それで得たお金でプランターと花の苗を購入して、会社の玄関の前に飾った。それまでゴミとして捨てていたものを資源として活用したことは、大きな変化だった。

2012年「エコアクション21」の認証取得
古紙リサイクルの利益で購入したプランター

 

~社内での取り組み~

〈鈴木〉
 2019年、上司だった男性の総務部部長が定年退職を迎えたことに伴い、部長職に就いた。自分が管理職になることは全く考えていなかったし、当時は「管理職は男性がなるもの」という思い込みもあったので、正直なところ戸惑った。しかし、会社は以前から“女性の活躍推進”に力を入れており、自分が入社した頃から部署のリーダー職に積極的に女性を登用していた。そのような社長の方針もあり、社歴が短いながら総務部部長の役を担うことになった。小さな会社なので、部長とはいえさまざまな仕事をしなければならない。製造工場は安全な労働環境の確保が第一なので、工場の中を回って安全面に気を配ることも仕事の一つだ。             

〈舟越〉
 男性社員が多い製造現場に異動になり、コミュニケーションをとるのが苦手な人が多いと感じた。そこで、普段はなかなか口にできない感謝の気持ちを伝える“ありがとうカード”を提案した。“ありがとう”を伝えたい相手の名前とその内容、自分の名前を書いたカードを社内に掲示して、社員全員が見られるようにするというものだ。社長もいいアイディアだと賛成してくれて、すぐに実行できた。直接、現場の仕事に関わることではないが、会社の雰囲気がなごやかになった。

山形工場内部
金属部品の熱処理加工の作業

現在の活動内容

〈鈴木〉
 現在の社員は57名、そのうち女性社員は12名だ。圧倒的に男性社員の多い会社で、自分より社歴の長い社員も多い。そうした組織の中で、立場の違いなどから意見が異なることもあり、管理職の難しさを実感することも少なくない。
 一方、社員が話しかけやすいと思ってくれているようで、その点はよかったことでもある。総務部で意見箱を設置し、会社への意見や提案を積極的に出してもらう取り組みをしているが、意見箱に投函してくれるだけでなく、社員のほうから直接「こうしたら会社がもっと良くなると思う」と意見を言ってくれることもあり、風通しのいい会社になっている。また、初めてお会いした取引先や業者の方々もリラックスして接してくださり、最初からよいコミュニケーションがとれている。部長職に就いた当初は、「はたして自分に務まるのか」と不安もあったが、今は自分ができる精一杯のことをやっていこうと考えている。

〈舟越〉
 勤務している山形工場では、品質保証部の社員4名のうち女性は自分1人だ。熱処理加工を終えた金属部品をしっかりチェックする品質保証の仕事は、細部まで丁寧に作業する力が生かされる仕事だと感じている。
 検査だけでなく、作業の工程を考え、その作業が効率よく進むように手順書を作成したり、製品にプレートを付けるなど、作業する人が誰でも分かりやすい方法を見出して構築していく仕事もあり、やりがいがある。インド出身の社員も2名いるため、どう分かりやすく伝えるかが現在の課題だ。

今後の目標・メッセージ

〈鈴木〉
 自分がこの会社に入ったことで会社が良くなっているところがあれば嬉しく、長く会社の役に立つ仕事をしていきたいと思っている。社員それぞれが能力を発揮して「ここで働いて良かった」と思える会社になるための土壌をつくっていきたい。
 また、女性の管理職の育成も自分の役割だと考えている。どうしても女性は家庭と仕事の両立という課題をまだ持っていて、管理職というと大変なイメージがあるようだが、「管理職になってもいい」と思い、目指してもらえるよう自分自身が楽しく仕事をし、あとに続く人を育てていきたい。

〈舟越〉
 入社してから大病を患い、2人の子どもの出産もあったが、そのたびに社長や周りの社員の人たちが支えてくれ、仕事を続けることができて感謝している。
 弊社では社員の研修に力を入れていて、講師の先生を招いて改善計画について教えてもらうなど、学びの機会が多い。そうして得たさまざまな知識を取り入れ、実際の生産現場に落とし込んで、より良い作業環境をつくっていくことを目指している。

山形工場
2020年「地域未来牽引企業」に
選定
2024年「やまがたスマイル企業GOLD」に認定

(令和6年3月取材)