女性農家組織
COCEL(コシェル)

(左から)遠藤沙弥さん・菅野友香さん・三賀真由美さん・五十嵐奈未さん・丹野朝香さん

プロフィール

尾花沢市内で「尾花沢すいか」を生産する女性農家5人が、2024年11月に大阪で開催された「全国スイカ女子会」に参加したのをきっかけに意気投合し、2025年3月に女性農家組織「COCEL(コシェル)」を結成した。

情報発信力を生かして「尾花沢すいか」のおいしさや農業の魅力を伝えるなど、さまざまな活動を展開している。

チャレンジのきっかけ

 尾花沢市では、特産品の「尾花沢すいか」を生産する女性農家が少しずつ増えてきている。そうした中、年齢や就農した背景はさまざまな5人が、集まりなどで自然に顔を合わせるようになり、交流が生まれていった。

〈三賀真由美(会長)〉
 大石田町生まれ。人材派遣会社に勤務し、子育てママの雇用の難しさを痛感した。スイカ農家の担い手不足を知り、農業で雇用がつくれるのではと思った。全くの非農家、女性1人で不安はあったが、縁あって研修を受けた後に就農した。

〈五十嵐奈未〉
 新庄市生まれ。山形市で美容の仕事をしていたが、突発性難聴になり、接客業を続けていくのが難しくなって退職。子育てをしながらできる仕事を探していたところ、スイカ栽培を経験しその楽しさを感じて、尾花沢市の支援を使って就農した。

〈丹野朝香〉
 山形市生まれ。実業団のソフトボールチームで選手として活躍した。引退後に知り合いの米農家の方から農業を勧められ、農業研修を受けた後に就農して13年目になる。「尾花沢すいか」を中心にさまざまな野菜を栽培している。

〈菅野友香〉
尾花沢市生まれ。結婚後も調理師の仕事を続けていたが、二人目の子どもの出産を機に退職。スイカ農家の夫がつくる「尾花沢すいか」のおいしさをSNSで発信するには、自分も実際に栽培してみるしかないと、夫と一緒に農業をするようになった。

〈遠藤沙弥〉
福島県郡山市生まれ。結婚して宮城県石巻市に住んでいたが、夫婦でスイカが好きで、漠然と農業をやりたいと考えていた。尾花沢市とは全く縁がなかったが、新規就農に力を入れていることを知り、スイカを栽培したいと夫婦で移住した。

チャレンジの道のり

 2024年11月に大阪で開かれた「全国スイカ女子会」に、たまたまこの5人が参加した。スイカの女性生産者たちが交流を深め、意見交換する大会で、全国から約100人が集まり、各産地のPRやこだわり、栽培の苦労など、また生産者そして女性同士だからわかり合える話で盛り上がった。

 その帰り、仙台空港から尾花沢市に向かう車の中でも大会の熱気が冷めやらず、自分たちなら「尾花沢すいか」の魅力やレベルの高さ、尾花沢市で農業を楽しんでいる女性たちのことなどをSNSを活用して発信できるのではないかと意気投合した。さらに、新規就農するために夫婦で尾花沢市に移住してくる場合、女性は農業のことだけでなく子育てや子どもの教育環境、生活面のことなど不安に思うことも多い。同じような経験のある自分たちが、そうした人たちの相談に乗ったりサポートしたり、力になれるのではないかという話になった。

 以前から、尾花沢市の農林課の方から「女性農家の組織をつくりませんか」と提案されていたが、「全国スイカ女子会」に参加する前はまだ時期が早いと思っていた。しかし、大会で、各地で活躍する女性農家の人たちに刺激を受け、車の中で「一緒に活動する組織をつくろう」と5人の意見が一致した。

 さっそく尾花沢市の協力を得て2025年3月、女性農家組織「COCEL」を結成した。グループ名は「こしらえる」「つくる」を意味する方言の「こしぇる」からのネーミングで、「スイカをつくる」自分たちが「つながりをつくる」「何かをつくる」、創造するグループになりたいという思いを込めた。

すいかをアレンジした「COCEL」の
ロゴマーク

現在の活動内容

 スイカの栽培は、苗を植える4月から始まるが、「COCEL」を結成したのは3月だった。活動が忙しくなって畑をおろそかにしては本末転倒なので、「自分の畑・農作業を優先する」「家族に迷惑をかけない」と決めて活動をスタートした。

 最初に、まず女性農家同士が交流し“横のつながり”をつくろうと「すいかcafe」を企画した。募集期間が短かったが、スイカを栽培している女性15人が集まり、みんな笑顔でランチを楽しんだ。おいしい料理を一緒に食べながら、日々の農作業のことや苦労話、思わず笑ってしまうグチまで、あれこれ話が弾んだ。

すいかcafé

 5月には、尾花沢市内の保育施設にスイカの苗を植えたプランターを贈った。子どもたちに水やりを頼み、収穫するまで一緒に観察をして、スイカの成長を見守った。収穫が終わった後の9月末から10月には同じ保育園に出向いて、スイカのクイズを出した。「スイカの花の色は、何色だった?」などの質問をして答えてもらい、園児一人一人に『すいか博士』の認定書を渡した。スイカ産地の尾花沢市に住んでいる子どもたちでも、農家でなければスイカが育っていく様子を見る機会が少ない。苗を植えてから収穫して食べるまでの過程を知ってもらう食農活動とともに、地元への愛着心を育みたいという意図があった。

 8月には、尾花沢市で、全国のスイカの若手生産者が交流する「尾花沢すいかヤングサミット with女子会」が開かれた。繁忙期だったが、自分たちも運営に協力し、大会では「COCEL」の取組みも紹介された。

保育施設にすいかを植えたプランターを贈って食農教育に一役
すいかのクイズで園児と交流
尾花沢すいかヤングサミットwith女子会

 新規就農の受け入れに力を入れている尾花沢市では、11月に東京で開催された国内最大級の就農イベント「新・農業人フェア」に出展した。「COCEL」のメンバー二人も参加して、農業に興味を持っている人に体験を話し、尾花沢市への就農をアピールした。

 こうした活動ができるのも、農家の出身ではないため「農家とはこういうもの」という固定観念を持っていないからかもしれない。基本的に農業は「楽しい」と思っているが、「楽(らく)な作業」はない。体力的に力仕事は大変で、トラクターのアタッチメントの取り付けといった機械関係もわからないことが多い。一人でセッティングができず、時間がかかってしまうときは先輩農家の人に電話して助けてもらうこともある。

 スイカ栽培は、交配・受粉と収穫のタイミングがとても重要で、このタイミングを逃すと品質の低下や収量の減少に直結する。出荷も、JAから指定された時間内に持って行かなければならない。こうしたスイカの作業時間と子どもの行事の時間が重なるとスケジュール管理が難しく、子育てと仕事の両立の大変さを実感する。また、スイカは暑い中で細かい作業が続き、時には雨が降り続いたり、渇水で苗がしおれてきたりと天候の影響も大きく、自分の力ではどうにもならないこともあって、気持ちの切り替えが必要だ。大変なことも多いが、困っているときにアドバイスをもらえたり、グチを言い合えたりできる仲間がいることが精神的な支えになっている。

「新・農業人フェア」に参加

今後の目標・メッセージ

 結成してまだ1年目でもあり、しっかりとした組織をつくり「COCEL」を存続すること、そして視野を広げて、女性農家だからこそできる活動に取り組んでいきたい。「COCEL」を結成した当初、新聞で紹介されたこともあり、「女性でもここまでやれるんだね、頑張ってね」と声をかけられる。その期待に応えて、農業に興味を持つ女性が一歩踏み出せるよう情報発信やサポートをし、さらに地域にとって意味のある活動に取り組んでいきたいと考えている。

 また、子どもたちが将来進路を考えるときに、農業を職業選択の一つに加えてほしいという思いがある。理想としては、さまざまな業種の会社が集まる就職相談会のような場で「農業」のブースを設けて、農業の楽しさや女性でも農業ができること、ちゃんと収入が得られる職業だということを若い人たちに伝えたい。それが、次の世代の担い手を育てることにつながると思うからだ。

 生産の面では、「尾花沢すいか」の認知度がまだまだ低いので、しっかりおいしいスイカをつくって全国の人に知ってもらえるよう情報を発信していくつもりだ。間引いたスイカが大量に出るので、地元のカフェなどと連携して販売したり、新メニューを開発したり、その活用にも力を入れていきたいと思っている。 

吉村美栄子山形知事との意見交換会
取材を受けて間引きすいかをPR

(令和7年11月取材)