プロフィール
平成15年 玄米おやつ工房mama’s設立
平成17年 村山地域農産加工品評会・スイーツ部門にて優秀賞受賞(もっちり黒米まどれーぬ)
平成19年 山形県農産加工大賞にて大賞受賞(玄米おからクッキー)
チャレンジのきっかけ
子の健やかな成長は、母親すべての願い。森谷あかねさんも、アレルギーと診断されたわが子の体質改善のため、毎日の食生活を見直すことにした。「わが家は祖父の代から無農薬・減農薬のコシヒカリにこだわってきた米生産農家。そこで栄養価が高く農薬の心配もない自家製玄米を食べさせようと思ったんです。ところが、子どもにとって玄米はとても食べにくいみたいで、なかなか口にしてもらえませんでした」。それでも、なんとか玄米に含まれる高い栄養素を子どもたちに与えたいと、玄米の粉を使ったお菓子を思いついたという。
「それまで小麦粉を使ったお菓子すらほとんど作ったことのない、まったくの初心者でした。玄米のお菓子を思いついたのも、『小麦粉でお菓子が作れるんだから、玄米の粉でもできるんじゃない?』という軽い考えからなんです」。
チャレンジの道のり
お菓子の本を見ながら、小麦粉の部分を玄米に置き換えてクッキー作りに挑む森谷さん。性質の違う小麦粉と玄米粉とでは、作り方もまったく変わってくる。お菓子作りの地道な研究が始まった。どうすればおいしい玄米クッキーができるのか。味は?硬さは?子どもに味見をしてもらいながら、試行錯誤したという。「子どもの意見って、一番正直なんですよ。まずいと食べないですしね(笑)」。玄米100%にこだわり、研究を重ねて約1年後、商品化にこぎつけた。
「わが家の本業であるお米は、インターネットでの通信販売が主流なんです。お米を買ってくださるお客様に、季節の果物や野菜をプレゼントとして同梱するんですが、そこでモニター調査を兼ねて玄米のお菓子を入れてみたんです。そうしたら意外に好評で、お客様から次々問い合わせをいただくようになり、ネットでも販売することにしました」。それがmama’sのお菓子の販売のきっかけとなった。
アトピーやアレルギーを持つ子どものお母さんからの問い合わせも多かったという。「『ウチの子が卵アレルギーだから卵ナシのクッキーを作ってほしい』『無添加・玄米100%にこだわるくらいなら、砂糖も白砂糖ではなく“てんさい糖”を使って!』。お客様からはいろいろな意見をいただきました。なかには「バターを使わないで!」っていう難しい注文もあって…」。
お菓子作りの基本である、卵もバターも使わず作る。普通ならお手上げだ。しかしこれらの意見は、森谷さんのお菓子に対する期待の表れ。それほどまで、原料にこだわったお菓子を望んでいる人が多いという証拠だ。 実際、現在販売されているmama’sのお菓子のパッケージに記載された原材料は、驚くほど少ない。当然、添加物は一切入っていない。市販のお菓子に比べ保存期間は短いが、それはつまり安全という証明である。
「お菓子作り初心者だからこその先入観のなさが、かえっていいのかなと思いますね」。今はバターを使わずにお菓子を作る方法を研究しているという森谷さん。常識にとらわれずいろいろな方法を試しながら、新しいお菓子作りにチャレンジしている。
現在の活動内容
当初は「玄米100%クッキー」だけだった商品も、今やクッキーは10種類、ほかにもマドレーヌや、受注生産でケーキなども作っている。
森谷さんのモットーは「主婦目線」。母として、主婦として、家族に安全でおいしいものを食べさせてあげたい…。その思いを大切に商品開発に取り組んでいる。家庭でも気軽に食べてもらえるようにと工夫を凝らし、質を落とすことなく、発売当初より安い価格での販売を実現させた。小麦粉価格の高騰のため市販のお菓子類が次々値上げしている中、小麦粉を使っていないから値上げしなくて済むという利点もあるようだ。
そしてもう一つ、工房での働き方にも「主婦目線」が生かされている。「今は近所に住む主婦2人と私の3人でお菓子作りをしています。3人とも小学生の子どもを持つ母親です。あくまでお母さん業を優先にしたいと思って、週に3~4日、子どもが小学校に行っている間だけ働くことにしているんです」。子育てを犠牲にせずに働けることは、主婦にとって理想の労働スタイル。森谷さんは、現代社会ではまだ難しいとされるその理想を難なく実現しているのだ。
今後の目標・メッセージ
玄米を使ったお菓子作りは注目を集め、最近はイベントでの講演やカルチャーセンターでのお菓子教室の講師といった活動も少しずつ増えている森谷さん。「お菓子作りを通して、子どもたちには『こういう農産物の加工も農業の一環なんだよ』ということも一緒に教えています」。森谷さんはお菓子作りを通して、食の大切さ、そして食を支える農業の大切さと可能性を伝えている。
「mama’sのお菓子はどれもキッチンにある道具や材料だけで手軽に作れます。小麦粉価格の高騰で米粉に注目が集まっていることですし、いろいろな活動を通して、もっと玄米、そして米粉の良さを広めていけたらと思います」。