酒田市立八幡病院助産師・看護師
後藤敬子さん
チャレンジ分野:

プロフィール

■活動履歴
昭和53年 日本医科大学医学部付属高等看護学院卒業
昭和54年 千葉大学医学部付属助産婦学校卒業
同年    山形県旧八幡町就職、旧町立八幡病院勤務
平成 5年  旧八幡町保健福祉課に異動 母子保健担当
平成14年 酒田市立八幡病院に異動 病棟勤務
平成18年 荘内日報記事連載開始「ごっとさん、どうしよう… 思春期をめぐるSOS」
平成20年 「ごっとさん、どうしよう… 思春期をめぐるSOS」連載記事単行本発刊

■受賞履歴
平成19年 第29回母子保健奨励賞(同日皇太子両殿下よりお祝いの御言葉賜る)
      毎日新聞社賞

■資格
助産師、看護師、思春期保健相談士、受胎調節実施指導員
妊産婦体操&マンスリービクスインストラクター

チャレンジのきっかけ

情報化社会と言われている今、テレビやインターネットなどで様々な知識や情報で溢れている。しかし、そんな社会の流れの中で、人が生きるために本当に必要なことが正しく子どもたちに伝わっているわけではない。後藤さんは、病院の仕事では命に直面していたが、心のケアの必要性を感じていた。

そんな後藤さんが、町の福祉課にいた時に、八幡町の中学校の思春期教室を担当したことがあった。平成8年に中学校と連携して行った試みだった。その授業風景を観ていた先生方が、「自分たちの学校でも授業を行なってほしい」と後藤さんに依頼。後藤さんは、「私ができることで、誰かに『良かった』と思ってもらえるのなら。」と授業や相談を受けるようになった。家族の支援、職場の理解や勤務の交代などでスタッフのご協力をいただきながら、病院の勤務に支障がないように個人で活動している。

単行本化された荘内日報連載記事。「ごっとさん、どうしよう… 思春期をめぐるSOS」
病院で勤務中の後藤さん。

チャレンジの道のり

後藤さんは、日本医科大学医学部附属高等看護学院、千葉大学医学部附属助産婦学校を卒業後に帰郷、旧八幡町立八幡病院に勤務。約10年間の保健福祉課勤務では、出産前後の母親などのサポートをした。平成8年からは、八幡中学校で学年ごとの「思春期教室」を開催した。

やがて、学校やPTAの依頼で講演にも出向くようになる。青少年や思春期の子供を持つ親の悩みに耳を傾けてアドバイスを送ってきた。講演会では、携帯電話の番号とメールアドレスを公開し、相談者一人ひとりに対応している。

荘内日報には月1~2回のペースで「ごっとさん、どうしよう… 思春期をめぐるSOS」を連載。その中で、子どもたちの心の痛みやSOSに託されたメッセージを伝え、命の尊さ、相手を思いやる気持ちの大切さ、子どもたちの孤独感などを訴えた。そして、その記事が一冊の本にまとまり、出版された。これらの活動が評価され、平成19年11月には、母子保健功労顕彰会主催の第29回母子保健奨励賞を受賞した。

現在の活動内容

現在も病院に勤務しつつ、思春期へのかかわりは教室や相談窓口として継続中。「携帯電話の電話帳への登録方法も工夫して、妊娠中や子育て中のお母さん・中学生や高校生などとグループ分けをして、着信音を変えているんです。この携帯電話の中には、みんなの悩みがたくさん詰まっています。」携帯電話だと24時間いつでも悩みを受けることもできる。後藤さんは、子どもたちの悩みだけではなく、思春期の子を持つ親の相談も受け、寝る間も惜しまず悩んでいる人たちの心を受けとめている。

「心が潰されてしまって、寂しさでいっぱいの子どもたちがたくさんいます。今、目の前にいる子どもの心の変化が見えなくて、どうしていいか不安になっている親も、とても増えています。」

後藤さん自身、子どもを持つ親であり、子育て中に我が子から気付かされたことも多かった。「いい気付きをくれた子どもたちがいたし、子育てを助けてくれたおばあちゃんがいました。失敗した時に同情してくれる”温かさ”、成長したら『強くなったね。』と成長を認め、存在を受けとめてくれる”嬉しさ”を感じながら、子どもは大切な生きる自信を身につけてくれたのです。」

近隣の市や町の小中学校や、高等学校・保護者会・保育園など、要請にこたえられる限り、出向いている。「出会えてよかった…と言われることが嬉しい。今後も”命の輝き”を伝えていきたい。」と後藤さん。

 

今後の目標・メッセージ

最近では、悩んでいた子供たちが、親になって子育ての相談をすることも‥。「突然の近況報告とか、元気ですか?という連絡は嬉しいですね。その笑顔をみると、活動していて良かったなって私まで元気になります。」

目標は、自分にできることを一生懸命重ねていくこと。思春期の子どもや子育て中の親に寄り添い”生きることのすばらしさ・命の尊さ”を伝えていくこと。「失敗も挫折も悩みもすべて生きる力になる。輝いて生きてほしい。生まれつき悪い子なんていない。すべての苦悩に理由があることを周囲の人が気付いて、受けとめてほしい」とメッセージを送る。

「頑張れ!と言うよりも、頑張ったね!を言ってあげたい。優しくなれと言うより優しくしてあげないと優しさを知らずに大人になってしまう。生きる力を信じ、失敗を許してあげたい。人には、居場所が必要です。孤独な世界に追いやることは優しい社会を奪います。かけがえのない命の輝きのために、笑顔とうなずきで迷い弱っている人に寄り添っていきましょう。皆が一緒に親身になって・・・。」

(平成21年2月取材)