税理士
黒沼 範子さん
チャレンジ分野:

プロフィール

■活動履歴

昭和46年2月 22歳の時に資格を取得し税理士登録
        約20年間、市内の会計事務所に勤務
平成2年7月  黒沼共同会計事務所開設
平成8年     “山形掃除に学ぶ会”を立ち上げる
       以後10数年間、定期的に会を開催し地域貢献にも尽力している

■資格
税理士

チャレンジのきっかけ

高校生の時、卒業後の進路を決める時期に、知り合いの税理士の息子さんから一緒に税理士試験の勉強をしてみないかとの誘いがあり、取り組んだのがきっかけ。あまり深く考えることもなく資格の取得を試みたと語る黒沼さん。3年という時間をかけ22歳の時に見事、山形県では初の女性税理士となることができた。

「40数年という長い期間、現役を続けられるのは自分に本当にあった職業なのでしょう。」とやさしい母親のような眼差しで当時を語ってくれた。

“山形掃除に学ぶ会”で、仲間と一緒に活動中。
事務所内に飾ってある書。

チャレンジの道のり

高校卒業後、税理士の資格を取得しようと志した当時は、試験に関する情報等が、ほとんど入手できない時代であった。また、税理士を養成する専門学校が近くに無かったため、まず経理専門学校に通い会計の勉強を始めた。学校の勉強の他にも、参考書や税法などに関する本を購入し、独学でコツコツと勉強し知識を蓄え資格取得の試験に臨んだ。

「働く女性の皆さんが苦労されている事だとは思いますが・・・」と前置きし、資格を取得し、実際に税理士の仕事をしながらの子育ては大変だったそうだ。時期によっては夜中まで仕事をしなければならない。その上、子供を預けられる環境も、現在とは違い整っていなかった。

それでも今、振り返って当時の事を思い出すと、子育てがマイナスだったとは思わない、大変だった分、苦労した分、仕事上でも家庭でも非常にプラスになったと語る。そんな忙しい母親を見て育った娘さんからは、「お母さんのようにはなりたくない」と言われた時もあったが、そう言っていた娘さんも今では、東京で公認会計士として同じ仕事に就いている。

現在の活動内容

当初は、他の会計事務所で20年間という期間、確実に実績を積んだ。その後公認会計士であるご主人と一緒に独立し、現在20年目とういう節目の年になったと語る。

また、税理士という顔の他に10数年前からは「山形掃除に学ぶ会」を立ち上げ、 定期的に地域の学校のトイレ清掃や街頭清掃を実施している。この会は会員という考えではなく各々が自主的に世話役として会の運営に当っている。現在世話人28名、その他に支援者30~40名が活動している。

活動としては、年間4~5回の予定で学校のトイレをお借りし、参加した全員(150~250名程度)で約2時間をかけてトイレ掃除を行っている。この活動は13年続いており65回を数え、延べ参加者数は1万人を超えている。

また、新たな取組みとして、山形警察署若手警察官グループ「洗心会」・JR東日本山形地区・「山形駅前を美しくする会」の皆さんと共に、山形の「顔」でもある山形駅前を綺麗にすべく、毎月第2水曜日朝6時から7時まで、60~80名程度の参加者で山形駅前周辺街頭清掃に取り組んでいる。

同じ志を持ち活動している全国的な組織では、「NPO法人日本を美しくする会」がある。その活動主旨に賛同した方々が、各地域に「学ぶ会」を発足させており、現在は全国47都道府県で127の掃除に学ぶ会(海外4ヶ所を含む)が活動している。「山形掃除に学ぶ会」では、本部と交流し情報を交換しあったり、各地の「掃除に学ぶ会」にお互いに参加しあうなど、運動の輪を広げている。

この活動を行う事により様々な反響が寄せられた。各学校より、トイレ掃除を創立記念事業・生徒行事として行いたいとお話を頂くようになった。また、山形では一昨年より山形県警察学校初任科生を対象とした山形県警察学校大会を開催している。それから、今年に入り、“教師の教師による教師のための「山形便教会」”が発足した。先生方の心磨きの場として活動していく予定である。

山形駅前周辺街頭清掃においては、回を重ねるごとに落ちているゴミの数、ガムの汚れが目立って減ってきており、県外からの方を迎えるに相応しい県都山形の玄関口となりつつある。

<会に届いた参加者の感想>

「子供達も初めはピカピカで入学するのですが、様々なものの影響で荒みが出てきます。ですから、大人が途中で磨いてあげる、正しい道に戻してあげることが必要なのではないか、ということを学びました。」

「最初は嫌だったけど、磨いていくうちに落ちないと思っていた汚れが落ち、どんどん夢中になって最後には「もっとしたい!」という気持ちになりました。」

「掃除実習が終わった後は、清々しい気持ちになりました。「心を磨く」という言葉の通りの体験ができました。」

「息子の頑張っている姿を近くで見られたことが嬉しかったです。また、親子で同じ事を一緒にすることで、親が一生懸命に取り組む姿を見せることが出来てよかったです。」

今後も事務所を開設してから仕事でお世話になってきたお客様や、社会に対して何か恩返しができないものかと常に考え活動を続けていく。

今後の目標・メッセージ

「生涯現役」が自分のモットーであり、今の仕事を継続していくのが今後の目標でもあると語る。 周りの人達から煙たがられるまで、現役で仕事を続けていきたいと考えているそうだ。

県内の女性の会員も、年々少しずつではあるが増えてきているのが現状の中、まだまだ男社会なのも事実と語る。しかし、税理士という仕事は基本的に女性に向いている仕事だと黒沼さん。その理由としては、「お客様に対してキメ細かい対応ができ、会話においても優しい言葉で応対できる。女性だと、『相談しやすい』『話しやすい』というメリットがある。『女性だからこそ』をもっともっと利用してこの世界に進出していただきたい。この業界には自分を活かせるチャンス、社会に貢献できる出逢いも沢山ある。また、やりがいのある仕事だと思う」と、胸を張って語る。

(平成22年2月取材)