佐藤 奈津紀(さとう なつき)さん
チャレンジ分野:

プロフィール

1976年 岩手県北上市に生まれる

1998年 上越教育大学 初等教育教員養成学部 図画工作コース卒業

2000年 岩手大学大学院修士課程 教育学研究科 教科教育美術 修了

     岩手県久慈市・大槌町の中学校で2年間美術講師を務める

2002年 結婚を機に真室川町へ

2010年 第6回逗子市手作り絵本コンクール 角野栄子賞受賞

     その後も、絵本・エッセイ等数多くのコンクールで受賞

2011年 真室川北部小学校 絵本読み聞かせサークル「こだま」設立

     現在は夫と5人の子ども、義父母の9人暮らし

チャレンジのきっかけ

 大学時代に抽象画を学んでいた佐藤さんが、初めて絵本を描いたのは2005年。長女の2歳の誕生日にむけて何か記念になるものを、と思いついたことがきっかけだった。「初めての子育てということもあり、2歳の娘が朝起きてから眠るまでの1日の様子をテーマに、成長記録を残したいと思ったんです。そんな時、偶然押入れの中から“白い絵本”という、ページが真っ白のオリジナル絵本キットが出てきたので、そうだ、絵本にしよう!と。そこから絵本作りの楽しさに、どんどん引き込まれていきました。」

チャレンジの道のり

 その後、長男、二男と2年おきに子どもが生まれ、幼い3人の子育てに奮闘中だった佐藤さん。そのような中でも時間を見つけては、絵本やエッセイ、川柳など作品を作って公募する日々を送っていた。そして2010年、コツコツと積み重ねた努力が花開き、第6回逗子市手作り絵本コンクール 角野栄子賞を受賞。翌年も同コンクール 野村昇司賞や、第4回未来を築く子育てプロジェクト 子育てエッセイコンクールで内閣府特命担当大臣賞最優秀賞など立て続けに受賞。作品が多くの人の目に触れることになった。
 「当時は幼い3人の子育てにめまぐるしい日々でした。でも元来の性分なのでしょうね。専業主婦として家事にあたっているときも、頭はフル回転で、常に作品作りを並行していました。昔から公募が好きだったこともあって、出来上がった作品を次々と出品していたら、次第に道が開けていきました。」

現在の活動内容

 現在の活動の中心は、「絵本読み聞かせサークルこだま」。長女が小学校に入学し、それを機会に自らが代表になって会を設立。地区内のママたちと定期的に絵本の読み聞かせを行ったり、地域を題材にしたオリジナルの絵本やDVDを1年に1作品製作している。佐藤さん自身が5人の子育てをこなす母であり、そして全国的に評価される絵本づくりを行っていることが話題になり、各地から講演会の依頼も増え、忙しい毎日を過ごしている。
 「絵本を1人で読む時は、文字と絵を同時に目で追いますよね。でも読み聞かせなら、絵に集中して楽しめます。“絵本”ですから“絵”はとても大事。絵本の“いのち”である“絵”をじっくり楽しみながら、語り手と聞き手の気持ちも自然に通じ合っていくんです。1冊の絵本から生まれるコミュニケーションが魅力ですね。」

手作り絵本は、主に子育てで得た経験や感動をテーマに創作し、多くの共感を呼んでいる。
はじめは人前に出ることが苦手だったという佐藤さん。今では笑顔で絵本の楽しさを伝えている。

今後の目標・メッセージ

 読み聞かせサークルこだまの設立で仲間が増え、これまでの1人の活動に比べ、できることの幅が広がったという佐藤さん。その1つが2013年に完成した絵本「ラッキーとの日々~東日本大震災・愛犬と家族の絆をつづった手紙~」だ。福島県楢葉町から真室川町に避難をしていたメンバーの実話をもとに、共同で作り上げた作品で、出版に際しては地域住民から寄付金を募った他、「最上の元気力アップ地域づくり支援事業」へ支援金を申請した。作品は多くの感動を呼び、絵本をDVD化した作品は、第62回山形県自作視聴覚教材コンクール社会教育部門で最優秀賞を受賞した。
 さらに2014年11月「真室川の昔語りを絵本にする会」を立ち上げ、真室川民話の会のメンバーとともに、地元に伝わる民話を絵本にして蘇らせるプロジェクトを始動。支援金の呼びかけは、インターネットのクラウドファウンディングで発信し、地元のみならず全国から多くの賛同を得た。
 「おかげさまで、クラウドファウンディングからの支援金が目標額に達し、民話を絵本にするプロジェクトが実現しました。たくさんの方に関わっていただけたことを、心から嬉しく思っています。私の心の中にはいつも“一生感動 一生青春”という言葉があります。あっという間に過ぎていく毎日の中で、心を揺り動かされる何かを強く持ち続け、支えてくれる家族や多くの仲間とともに、一生青春を謳歌していけたらと思っています。もちろん、目標はプロの絵本作家になることです。」

(平成26年12月取材)