NPO法人ポポーのひろば 理事長
佐藤 千津(さとう ちづ)さん

プロフィール

平成20年6月 ポポーのひろば活動開始

平成22年6月 甑葉(しょうよう)プラザの親子交流ひろばを運営開始

平成22年7月 NPO法人認証

平成24年4月 むらやまファミリーサポートセンター運営開始

チャレンジのきっかけ

 佐藤さんは京都市出身。結婚を機に村山市に住まいを移したが、知人もおらず、関西とは文化が違う東北の地で子育てに明け暮れていた。そんな中、北村山エリアの子育て情報誌の製作スタッフを村山市が募集していることを知り、“結婚前に編集の仕事をしていた経験も活かせる”と導かれるように応募した。

 「子育てに孤独と不安を感じていただけに、この募集でパッと希望が広がりました。同じように子育てをするママたちと活動をすることで、友人の輪が広がり、地域の情報も手に入り、やりがいを持って日々過ごすことができるようになりました。今思えば、現在の活動の原点はこの出会いだったと感じています。」

チャレンジの道のり

 情報誌を次々と発行し、地域基盤の子育て支援にいっそう力を入れたいと思っていた矢先、実母の介護が必要となった佐藤さん。活動休止を余儀なくされた。そして母親を見送り、長きにわたる介護生活が明けた時、“介護や子育てでお世話になった地域に自分ができることはないか”と考え、『村山市の子育ち・応援団つくり』をテーマに平成19年秋、単独で活動を再開した。

 「『地域の子育ち・について話し合う会』を企画し、民生委員さんなど知り合いの方々の自宅へ案内状を手配りしたんです。開催日当日、会場の公民館でポツンと待っていたのですが、どなたもいらっしゃらず、失意の中、イスを少しずつ片づけ始めました。ところが予定時刻間近になってから、見覚えのある方々が次々と会場に入って来られたのです。22通の案内状に対し20名の参加という思いがけない展開に涙があふれ、開会の挨拶をしようにも言葉になりませんでした。」

 地域で子育ち・をサポートしようという思いに賛同者が集まり、そこへ国の支援事業がタイミングよく舞い込んできた。文科省“家庭教育支援基盤整備事業”の委託を受け平成20年6月、ポポーのひろばが誕生した。楽ではなかったが活動は順調だった。2年間の委託業務を完了した平成22年、今度は村山市に甑葉プラザがオープンし、施設内の “親子交流ひろば”の指定管理者として業務委託を受けた。それを機に、NPO法人へ。発起からわずか3年で活動の基盤が出来上がった。

現在の活動内容

 甑葉プラザ2階の親子交流ひろばでは、就学前の乳児・幼児とその保護者が、自由に遊びながら交流・情報交換などを行っている。この他、アイディアを活かして各種のイベントを企画。中でも『パパチルキャンプ』は全国でも珍しい取り組みだ。

 パパチルキャンプは、3歳~8歳の子どもと父親のためのアウトドアキャンプ。キャンプのプロが指導にあたり、カナディアンカヌーや綱渡り、うどん打ちなど、対象が父親だからこそ意義深い体験活動を通して、父と子の絆を深めることができるというものだ。

 「このイベントは思わぬ効果を生みました。パパと子どもがキャンプをしている間、ママには普段なかなか得られない自由時間ができたんです。ゆっくりと自分の時間を過ごすことができ、パパも子どもも、そしてママも、それぞれがリフレッシュできたのです。」

 この他、初めての0歳児育児を支援する『赤ちゃんがきた!(愛称BP)』のファシリテーターの資格を取得。生後2か月~5か月の赤ちゃんと母親が集まり、赤ちゃんと触れ合いながら子育てについて学んだり、仲間づくりをする場をコーディネートしている。

 また、高校の家庭科の授業を利用して行っている『赤ちゃんが先生授業』は、男子生徒・女子生徒が赤ちゃんと触れ合い、母親の子育て体験談などを直接聞くというものだ。母親から託された大切な命を通じて、親になることについて考え、感じる機会を創出している。

 「親から子、姑から嫁、の教えよりも、ちょっと先輩くらいの“ななめの関係”から体験談を聞くほうが、次世代の人はすんなりと受け入れられるような気がします。若い母親と高校生は、まさに“ちょっと先輩・ななめの関係”。これからも継続していけたらと願っています。」

※写真1 パパチルキャンプでカナディアンカヌーを楽しむ父親と子
※写真2 赤ちゃんが先生授業の様子。若い母親と女子生徒が情報交換を楽しむ。

今後の目標・メッセージ

 「“子育ち”という言葉を使い分け、大切にしています。親が子を育てる“子育て”に対して“子育ち”は、子どもの育ちを地域で見守り育てるという言葉です。将来、子どもたちがいなくなってしまったら、この地域はどうなってしまうでしょう?その課題をきちんと受け止め、対策を立てなければならないと思います。そのためには地域の力が必要です。ポポーのひろばの“ポポー”は村山市にも根付いている木の名前。その果実は赤ちゃんが大好きなミルクの香りがするんです。甘い香りに包まれているかのように、地域のやさしさで子育ちを応援できるように。そんな願いを持ち続けて、これからも皆さんと一緒に活動していきたいと思います。」

(平成27年1月取材)