渡部 陽子(わたなべ ようこ)さん
チャレンジ分野:

プロフィール

1984年飛島生まれ。高校進学のため本土(酒田市内)へ移住したが、東北公益文科大学在学時は、授業や卒論の対象として様々な形で飛島と関わり続けた。大学卒業後は、市内で就職したが、2010年からは縁があって市内のNPO法人に所属し、業務により再び島に関わることになる。

2012年に島の港付近に設営された「島のカフェスペースしまかへ」の開店スタッフを担当したことを機に、1年間の多くの時間を島で過ごすことになる。現在は合同会社とびしまに所属し、しまかへ店長を務めている。また、とびしま未来協議会の事務局も務める。

チャレンジのきっかけ

 飛島は、昭和15年に最大1,788人の人口を有していたが、昭和30年代後半以降、島外への人口流出が加速し、平成26年現在は人口約230人、平均年齢約70歳と人口減少と高齢化が刻々と進んでいる。渡部さんは、島外に出てからも様々な縁で飛島と関わることが多く、衰退していく島の様子を内と外の両方の視点から、ひしひしと感じ取っていた。

 「生まれ育った飛島に何かしたい。しかし何をすれば良いだろうか。」その思いが繋がったのが、2012年に飛島の観光拠点として設置された小さなカフェだった。「内と外の両方の視点を持つ私が、島内と島外の人々を繋ぐ場所をつくる。」小さな島の小さなカフェの店長として、渡部さんの挑戦が始まった。

チャレンジの道のり

 しまかへの役割は、観光の拠点として、島の食や情報を提供し島民と観光客を繋ぐ場所になること。しかし、カフェの営業というのは、渡部さんにとっても飛島にとっても初めてのこと。

 「始めたばかりの頃は、わからないことだらけで失敗をたくさんしました。島民と観光客どころか、島民としまかへを繋ぐことも上手くいっていなかったと思います。」

 それでも島民の方からは「いっぱいとれたから食べれ。」と、魚や野菜を持って来てくれたり、夏の繁忙期にはお弁当を差し入れてくれたり、飛島の旬な食材を使った料理を提案してくれたりと、たくさんの手助けをもらったという。今では、島民の方に食材を注文したり、忙しい時に手伝ってもらったりと積極的に協力依頼をするようにしている。そうすることで、これまでに無かった関係が生まれ、営業中に顔を見せに来てくれる島民もだんだんと多くなっているそうだ。「島民と一緒にしまかへを営業している」という気持ちで続けていることで、少しずつ島民のしまかへに対する理解が広がっているという。

現在の活動内容

 現在、渡部さんが所属している合同会社とびしまは、代表を務める飛島出身の本間当(あたる)さん、デザイナーの松本友哉やさん、地域資料館「島のミューゼアム澗(にま)」の館長を務める小川ひかりさん、そして渡部さんという4名の若者で構成されている。
 同社は2013年に設立され、島に雇用を創出するために、島のカフェスペースしまかへの運営をはじめ、空き家を改修した加工所での商品開発など、様々な取り組みを行っている。また、同社では、1〜3次産業までを総合的に行う6次産業化を目指しており、その基盤として0次産業という言葉を用いている。0次産業とは産業になり得る前の歴史文化の保存・継承の活動を指しており、具体的には空き家を改修して開館した地域資料館「島のミューゼアム澗(にま)」を拠点とした歴史文化の聞き書きや撮影といった記録活動、展覧会やガイドといった発信活動等を行っている。
 最近では、商品開発に力を入れており、島民に作り方を教わった特産物や、加工所で試作を重ねた新商品を製作し、島外のイベントなどでPRを進めている。2015年3月には千葉県・幕張で開催された「アジア最大級の食品・飲料専門展示会 FOODEX JAPAN」にも参加するなど、関東圏へも活動の場を広げている。
 
※「しまかへ」外観 手前にオープンスペースを設け開放的な気分に浸れる
※ごどいも(飛島で採れる男爵イモ)や岩海苔など、飛島の食材をふんだんに使ったメニューを提供している

今後の目標・メッセージ

 「飛島は、とても豊かな島です。島で生活していると、先人の知恵を日々感じ取らずにはいられません。この島では、昔から脈々と築かれてきた文化を今でも生活に強く反映させて暮らしています。それを学び、体感することの面白さは、私たちがこの場所に留まる理由の一つとなっています。そしてなんといっても、人と人との繋がりがあたたかくて深いのです。この豊かな島が続いていくことを私たちは願っています。皆さんも、ぜひ、飛島に遊びに来てください。」

(平成27年2月取材)