プロフィール
1998年 鶴岡市ボランティアセンター(鶴岡市社会福祉協議会)に勤める。
2003年 第34回 全国ボランティア研究集会 山形県・庄内集会 事務局次長を務める。
2006年 東北公益文科大学 地域共創センターにコーディネーターとして勤める。
2008年 特定非営利活動法人 ぼらんたすを仲間と一緒に立ち上げる。
2011年 特定非営利活動法人 日本ボランティアコーディネーター協会の福島事務局スタッフとして福島で活動をはじめる。同協会の全国運営委員も務める。
ボランティアに関する理解を深める活動に加え、ボランティアコーディネーターとして、ボランティアにかかわる人材育成に関する講習会などを行っている。
※ボランティアコーディネーター:市民社会の実現をめざして、市民のボランタリーな活動を支援し、その実際の活動においてボランティアならではの力が発揮できるよう、市民と市民または組織をつないだり、組織内での調整を行うスタッフ (日本ボランティアコーディネーター協会パンフレットより)
チャレンジのきっかけ
ボランティアにかかわる最初のきっかけは、42歳の時に鶴岡市ボランティアセンターで働き出したこと。それまでは、ボランティアとかかわったことが全くなかった。センターで働くうちに様々なボランティアの方たちと知り合い、色々な経験を積んだ。その中でも、2003年の「全国ボランティア研究集会」の事務局次長を務め、庄内14市町村の行政、民間団体、ボランティアの方たちと3年間の準備期間を経て、イベントを成功させたことは非常に大きな経験となり、またその間、ボランティアについて学ぶため、自ら講習の場を求め、知識を深めていった。
自身がボランティアとして参加した2004年の新潟県中越地震の際、知り合いのNPOの方が語っていた、今も心に深く残っている言葉がある。
「ある地域で、がれき撤去などボランティアはいらないかと聞いて回ったがいらないと言われた。でも、実際には、業者が入って有料で作業を行っている。ボランティアで同じことが出来たのに、させてもらえなかった。」そう悔しそうに語る姿に、まだまだ「ボランティア」という言葉が知られていない、ボランティアへの理解をもっと広めなければと強く感じた。
その後、酒田の東北公益文科大学地域共創センターの開設に伴い、大学と地域を結ぶ大学まちづくりの推進などの経験を積んだ後、「ぼらんたす」を立ち上げる。「ボランティアに対する理解を深め、ボランタリーな意識を地域の中で広めていきたい」という思いから、行政や企業とは違った市民目線で、地域の課題に地域の人と一緒に解決する活動を続けている。
チャレンジの道のり
「自分以外はすべて師だと思え」というように、常に友人や周囲の人に助けてもらっていたと感じる。
「一人では出来なかった」と語る栗原さん。「ぼらんたす」にかかわる他の仲間たちの存在は大きい。立ち上げる前に、三瀬で行ったワークショップの中で、ボランティアに対する栗原さんの思いを聞いた友人が、「自分ではじめてみたら!」と背中を押してくれた。その友人は、現在、「ぼらんたす」の理事を務め、一緒に活動をしている。
「ぼらんたす」の活動が、少しずつ地域の中で受け入れられていくことがとても励みになっている。最初に開催したボランティアコーディネーター養成講座は、「参加する人は少ないのではないか」と言われる中、定員以上の応募があった。その時に「地域の中にボランティアコーディネーターが必要とされている」と再確認し、講座の必要性を感じた。まだまだ必要性が理解されず開催につながらないイベントや講座もあるので、今後も、ボランティアについての理解を深めるための活動を行っていく。
現在の活動内容
・特定非営利活動法人 ぼらんたす運営
「ぼらんたす」では、庄内全域をフィールドに「ボランタリー」「ボランティア」をキーワードに人づくり、まちづくり、地域づくりの活動を行っている。ボランティアの人材育成のために、ボランティアコーディネーターのスキルアップ講座などを開催。栗原さん自身も講師を務める。活動は多岐にわたるが、「ボランティアの意義を伝えて行く」という原点にそって活動している。
・みんな違って、みんないい・・・みんな一緒!の活動
「地域の中で障がい者に会う機会が少ない」という話から、障がいのある方が自由に町に出て来られないことを知った。そこで、障がいを持って生きるという事を理解する場として2010年から「みんな違って、みんないい・・・みんな一緒!」というイベントを開催している。健常者だから、障がい者だからという枠を取り除いて、自然な交流の中で「心のバリア」をなくしていく、という思いで活動をしている。
・日本ボランティアコーディネーター協会(JVCA)福島事務局スタッフ
日本ボランティアコーディネーター協会は、ボランティアコーディネーターのネットワークを築き、その専門性の向上と社会的認知度をすすめ、専門職としての確立を図ることを目的に設立された特定非営利活動法人で、栗原さん自身も取得する「JVCAボランティアコーディネーション力検定」を主催する。
2011年の東日本大震災後、JVCA福島事務局として、福島で活動を続ける。震災後に福島県で採用になった生活支援相談員の研修の企画・実施を主に行っている。
※生活支援相談員は、仮設や借上げ住宅にお住いの方を訪問し、孤立防止のための声掛けや生活に関する様々な相談業務等を行っている。
・「ボランティア活動は理論ある実践が大切」
個人的に12年間続けているボランティア活動がある。それは、いろいろな意味で自分自身の学びの場になっているという。
「ボランティアと一言で言っても様々な活動があります。誰か困っている人のために、居ても立ってもいられずに駆け付けて出来ることをするボランティア活動があります。また、地域の中で、地域に住む住民が自ら地域の課題を見つけ、解決するなどの活動もボランティア活動の一つです。
様々なボランティア活動の場面では人と人、組織と組織がうまくいかないこともあります。それは“ボランティア”についての“おもい”の違いだったりします。それぞれの“おもい”はとても大切ですが、ボランティア活動の場面では、協働でものごとを進めていくことも大切になってきます。そのためには、ボランティアについての理論や実践に即したスキルを学ぶ場も必要だと思うのです。」
今後の目標・メッセージ
現在、「ぼらんたす」の活動の中で、一番力を入れているのが、自殺予防の活動だという。「自殺の原因には、様々な地域課題があります。その地域課題の解決のため、当事者意識をもった地域の人を増やしていく活動をしていきたいと思っています。」
2013年度からはじめた「山形県庄内発!こころを元気にするプロジェクト」は、庄内一円のメンバーからなる運営委員で様々な取り組みをしている。一日がかりのイベント「いのちとこころを考えるつどい」は、単に講演を聞くだけでなく、参加者が地域の中で自殺予防について、「私たちができること」を考え、話す場として開催する。
2014年10月には「やまがた♡こころげんきサイト」を開設。
「『誰も自殺に追い込まれることのないように・・・』というキャッチコピーのもと、山形県内の自殺予防の取り組みを紹介するサイトの運営にも力を入れていきたいと思います。」
「ぼらんたす」を立ち上げてから7年。改めて、立ち上げたときの“おもい”を振り返る時間を大切にしたいという栗原さん。「ボランティアについて」の話を聞きたいという方ともっともっと出会いたい。
栗原さんの挑戦は、今年も続いていく。