プロフィール
1999年 大学卒業とともに東京から帰郷、山形県入庁
2006年 長男誕生
2008年 長女誕生
2009年〜2011年 宮城県に出向。仙台で東日本大震災に遭遇
2012年 次女誕生
2013年 やまがたイグメン共和国建国
2016年 「ファザーリング全国フォーラムinやまがた」の実行委員として運営に携わる。
1男2女の父として、子育てにも奮闘中。
チャレンジのきっかけ
山形で生まれ育ち、地元の公務員として従事する五十嵐さんは、現在長男、長女、次女の3人の子を持つパパ。今では積極的に家事や子育てをしているが、3人目の子が産まれる前まで子育てはほぼ妻任せだったと言う。長男と長女が未就学の頃、宮城県に単身赴任し、2人の子育ては妻が一人で担っていた。離れて暮らす中で東日本大震災が発生し、家族と一時連絡がとれなくなる事態に。その時に家族に与えた不安の大きさを目の当たりにした五十嵐さんは、家族の大切さを実感し「家族と一緒に過ごす時間がもっとほしい」と強く思うようになった。
山形に戻ってから3人目の子も生まれ、ますます五十嵐家は子ども中心の生活スタイルに。にぎやかな毎日の中で、家事と子育てに追われ、時間にも心にも余裕がなくなりイライラしている妻の様子が見てとれた。焦りを感じた五十嵐さんは少しでも妻の負担を共有しなければと、家事や子育てをするようになったという。
子育てに関わる時間が増える中で、「スタートは遅れたけど、父親としてもっとできることがあるんじゃないか?」と思うようになった五十嵐さんに、大学の先輩の女性から「子育て世代の父親にこそ聞いてほしい話をする人がいる。ぜひ多くのパパに聞いてほしい」との誘いがあった。父親の育児参加を全国規模で提唱している「NPO法人ファザーリング・ジャパン」の代表・安藤哲也さんだった。
チャレンジの道のり
「安藤哲也さんを山形に招いて講演会を開きたい。」
先輩女性から内容を詳しく聞き、安藤さんの著書を読んだ五十嵐さんは、子育て中の知り合いにも声をかけ、講演会を開催するための実行委員会をスタート。平成25年3月20日開催したイベントでは、安藤哲也さんを招き講演会を開催。「母親は母親同士のネットワークがある。父親も、父親ならではの子育ての悩みや想いを話し合える場があっていいよね」と、五十嵐さんの想いに参加者約50人が賛同し「やまがたイグメン共和国」を“建国”した。
“イグメン”は、“イクメン”を山形の訛り(クに濁点)にした造語。“共和国”というユーモアも交えた名称に加え、基本方針となる「やまがたイグメン5カ条」も策定した。
<やまがたイグメン5カ条>
● 子どもの笑顔をつくろう
● 妻との会話をふやしてツボを知ろう
● 職場でもっと家族の話をしよう
● 勇気を出して地域に一歩ふみ出してみよう
● 子育ては期間限定の育自時間
「父親も父親同士で語り合うことで、自分の視点にない考え方に触れたり、他の家庭の子育てを知ることができ、それが自分の学びになります。普段はなかなか出会えないような人と知り合えることも魅力のひとつ。また、主に土日に父と子が参加するイベントを開催するので、結果的に母親が子どもと離れてリフレッシュする機会にもなっています。」
現在の活動内容
今後の目標・メッセージ
“イグメン”の山形なまりには、「山形ならではの子育てを楽しむ」という想いが込められている。広く山形のパパたちに知ってほしい、子育てを楽しんでほしいという共和国のポリシーに対して、今後の目標は「裾野を広げること」だと言う。
五十嵐さんが「まだまだ広がりが足りない」と思う背景には、男性の働き方が関係する。現在は、家庭や子育ては母親に任せ、父親は仕事中心という働き方が日本全体に定着しているが、働き方そのものを改革しないと、子供も増えず、男性の育児参画は絵に描いた餅になり、企業は優秀な人材を確保できない。特に人口減少率の高い山形は喫緊の課題。
「山形県は三世代同居率が日本一ではあるものの、徐々に核家族化が進んでいる。一方で共働き率は全国トップであり、父親の育児参加は非常に重要な位置づけです。そうした中、平成27年12月に設立された『やまがたイクボス企業同盟』には現在140社が加盟し、全国フォーラムも県内企業の多大な協力があるなど、男性の育児参加や働き方改革に対する意識が高まっています。しかし、実際に子育てと仕事の両立を実践するのは大変です。長年続いてきた今の働き方を変えるには、劇薬のように一気に改善するのではなく、漢方薬のように着実に少しずつ変革を進めていく必要があるでしょうね。
それから、子どもたちは学校の友達や地域など、いろいろな関係の中で生きているので『自分の家庭だけ良くなればいい』という訳にはいきません。僕ら大人の意識や取り巻く環境が良くなれば、それがやっと自分の家庭にも還ってきます。そのために、今見えている課題をどう解決していくか、これからも仲間たちとともに楽しみながらも変革を進めていきたいです。」
活動の中で「父親の子育て」をより深く考え、実践してきた五十嵐さん。子どもとの関わりが増えると、距離感がぐっと近くなったという。
「得意な将棋で子どもたちと対戦すると、つい本気になってしまう(笑)。ですから、今度は子どもと一緒に囲碁を学ぼうと考えています。私も初めて学ぶので、子どもと同じスタートラインですし、将来、囲碁の盛んな中国や韓国の友達と指せたら楽しいでしょ? 」とニヤリ。 子どもとの触れ合いや、同じ土俵で遊ぶ中で育む“親子の絆”。山形発“イグメン”の輪が、五十嵐大統領を軸に広がっている。