合同会社Heart&Heart代表 心理セラピスト
瀬尾 美穂さん
チャレンジ分野:

プロフィール

鶴岡市生まれ

1991年 4月 鶴岡家政高卒業 県内の金融機関へ入社

1995年 1月 長女誕生

1999年 5月 次女誕生

2003年12月 三女誕生

2008年 1月 長男誕生

2013年   ダウン症をもつお母さんたちによる写真展、主催
      Happy✩Happy✩Happyという名前で子ども専門のカウンセリングとコーチングを始める

2015年 1月 合同会社Happy.Placeを起業する

2015年 2月 ピンクリボンTsuruoka設立

2015年11月 みんなでつくるインクルーシブつるおか設立

2016年 7月 合同会社Heart&Heartに社名変更

現在に至る

2013年 7月 チャイルドコーチングアドバイザー取得

2014年 6月 チャイルドカウンセラー取得

2015年 1月 家族療法カウンセラー取得

2015年 8月 発達相談士取得

2016年 8月 NGH認定、JBCH認定ヒプノセラピスト取得

チャレンジのきっかけ

 「すべてのきっかけは、自分が乳がんになったことです」
現在、鶴岡市で心理セラピストとして活躍している瀬尾美穂さんは、2005年に乳がんの手術を受けている。それまでは会社勤めをしながら3人の娘を育てるシングルマザーだった。

 「それまでは、苦しいことがあっても、一人でどうにかできていました。だけど、がんはコントロールできないし、自分がこれまでやってきたことや生きている意味を見つめ直す機会になりました」
 抗がん剤の副作用で、髪はどんどん抜けていく。当時小学5年生だった長女が、脱衣所に落ちた髪の毛をそっと片付けてくれていたことを知る。母親を気遣い、妹を思う彼女を見て「この子の本当の気持ちはどこにあるのか…」と考え、頑張らねば! と奮起した。
 「私は子ども関係の仕事に携わろうと決めて、自分の親にも宣言しました」

 その後、病気の自分を支えてくれた現在の夫と再婚。生まれた長男はダウン症と診断された。さまざまな障がいをもつ子を育てる母親と関わり合うなかで、自分にできることを模索していく。長男の療育の過程で心理の世界に出会い、それを機に、カウンセラー、セラピストの道を歩むことになる。

チャレンジの道のり

 2013年、ダウン症の子を育てるお母さんたちによる写真展を、瀬尾さんの主催で開催した。活動に理解を示してくれた荘内神社を会場に、3歳〜高校生までのダウン症児の日常を切り取った写真を展示した。写真展は評判を呼び、障がい者施設や市からの依頼で計7回行った。
 ダウン症の診断を受けて間もないお母さんたちに「大丈夫、子どもたちはこれから大きくなる」と勇気を与え、また、障がいを持つ子どもたちと接することの少ない一般の人にも見てもらうことで、身近に感じてもらいたいという思いがあった。
 「障がい者というと、全部の障がいがひとくくりに見られてしまうんですけど、ひとつひとつの障がいのことを少しでも知ってもらえたらと思いました。私も長男が生まれるまでは障がいに対する知識はありませんでした。障がいがあってもなくても、お母さんは同じ気持ちなんだということを知ってもらういい機会になったと思います。興味を持ってくれる人が多く、見に来てよかった、と言っていただきました」

 その後、チャイルドカウンセラーやコーチングアドバイザーの資格を取得し、子どもたちやお母さんの相談に乗り始めるようになった。最初は自宅で無料で相談に乗っていたが、多岐にわたる相談に対応するために、その後も資格を追加していき、2015年1月に合同会社Happy.Placeを立ち上げ、現在の場所で本格的にカウンセリングを行うようになる。
 「主に子どもの支援ですが、子育て関係以外でも、うつ病になってしまった方や、人間関係に悩む人。家庭や会社、恋愛、お金…悩みは本当にさまざまです。心理カウンセラーの資格を持っているので、子どもから大人まで、全般の相談を、主に1対1で受けています」

現在の活動内容

 2016年7月、合同会社Heart&Heartに社名変更。ヒプノセラピストの資格を取得し、催眠をつかった心理療法もできるようになった。
 「現実的な心理の世界と、潜在意識で出てくるものを融合させたのがヒプノセラピーです。通常のカウンセリングと合わせて、10月からセラピーをはじめました」
 その後、facebookページなどを見た人からの相談件数は突然増えたという。
 
 「以前はカウンセラーと名乗っていましたが、ヒプノセラピーをはじめてからは心理セラピストと名乗っています。カウンセリングというと、病気にならなければ行けない、というイメージもあるのかもしれません。セラピーとすることで、入口が広くなりました。心理面でも薬を処方する必要がある病は医療の分野なので、その前の段階の人たちの相談を受けるのが私です。一人でやっているので1日に3〜4件の相談を受けるのが限界ですが、最近、心理の分野はいろんな職種に関わることが多くなっているので、相談は増えています」
 瀬尾さん自身も、子育て期間中など、狭い人間関係の中で愚痴を言えないつらさを経験したこともあり、そういう時期には、お金を払ってでも安心して話せる場所が欲しい、と思っていたという。
 
 セラピストとしての仕事以外には、乳がんの経験から「ピンクリボンTsuruoka」の主宰としても活動している。個人や企業からの支援金を募って、10月の啓発月間に鶴岡市の大宝館と羽黒山の五重塔をライトアップ。乳がんの早期発見・早期治療を呼びかけている。
 子育て支援をする中で、講演を依頼されることも増えてきたという。子育てコーチングにはじまり、あらゆるテーマで各地を飛び回り、講演活動を行っている。
 
セラピーに使用する椅子。室内は白を基調とした色に包まれ落ち着いた雰囲気で話ができる。
ダウン症の子どもをもつ母たちによる写真展。2013年から計7回開催。
ピンクリボンtsuruokaの活動。羽黒山の五重塔にて。

今後の目標・メッセージ

 これからは、働く女性の応援もしていきたい、と瀬尾さん。
 「仕事を通じて、心理という分野はますます必要になっていくのを感じます。臨床心理士や認定心理士などの公的な資格もありますが、それよりも、人の話を聴く力や、自分の体験を語ることで誰かの力になれる、という人はいっぱいいると思うのです」
 自身も転職経験がある中で、子どもをもつ女性が働くためには、資格や子どもを預ける場所を重視されている現在の風潮に疑問を持っているという。
 「働く気持ちがあるのに、資格がないから職につけない、という人は多いです。資格があるから雇うのではなく、“あなたの経験と想いを買います”という会社だったらいいなと思います」

 ここからは「夢ですが」と前置きして、
 「私はビルの一番上にいて、みんなはやりたい仕事をしている。誰かが何かをやりたい、といったら、“いいね!それ!”って言うだけ。松岡修造かっていうくらいの暑苦しさで、“オールオッケーだよ!”って人を認めたい。私は一番偉そうにしているんだけど、一番の小間使い。その人の宣伝をしてあげたり。“あなたの自由にしていいんだよ”っていう。そういうことをやりたいです」

 心理の専門家だからこそ、その人を認めながら、その人自身さえ気付いていない問題点に気づき、トラブルの手助けをすることもできる。
 瀬尾さん曰く、何かを思いついて、今これを考えている、ということを人に話した瞬間から全てははじまっていて、次の段階では叶えていることが多い、という。
 「何かを求められたら、すぐにやります。求めてくれた先が私でありがとう、という気持ちです」

(平成29年2月取材)