プロフィール
2012年7月 鶴岡市が設置した鶴岡食文化産業創造センターで、後にプロジェクトへと発展する「ナリワイづくり工房@鶴岡」がスタート
2015年4月 「2014年度トヨタ財団国内助成プログラム」事業として「鶴岡ナリワイ女性プロジェクト」を開始(~2016年)
2017年 自己資金での運営を開始
チャレンジのきっかけ
「鶴岡ナリワイプロジェクト」のキーマンは、なんと言っても代表の井東敬子さん。井東さんは、自然体験活動総括責任者(NEALコーディネーター)や産業カウンセラーなどの資格を持ち、NPO活動にも精通している。2011年に鶴岡市に生活拠点を移すと、鶴岡食文化産業創造センターのアドバイザーとして従事した。そこで、地域の雇用環境を改善するためにと始めたのが、「鶴岡ナリワイプロジェクト」のきっかけとなる「ナリワイづくり工房@鶴岡」だ。
井東さんは、2006年に自然体験や環境教育、環境学習を専門とする会社「リードクライム株式会社」を設立した起業家でもある。自身の経験を経て、多くの女性や地域が元気になる仕組みづくりとして選んだのが、「ナリワイ」という働き方の提案だった。
「1人の大きな起業より、100人の小さな起業」。それが、ナリワイづくりのコンセプト。月3万円程度の収入を得ることをひとつの目標にして、小さな起業を夢見る人たちが集うようになった。支援拠点を得た参加者たちは、夢を語り合いながら実際にアクションを起こす力とノウハウを蓄え、2014年度は8名が、小さな起業を果たした。
チャレンジの道のり
「小さな起業を応援することは、地域にとって大きなプラスになる」。2年間の活動でそれを確信し、新たな挑戦へと向かったのが、「2014年度トヨタ財団国内助成プログラム」への申請だ。20倍の難関をくぐり抜け、助成を獲得すると、本格的に「起業講座」を展開。鶴岡市からの強力なサポートも受けながら、女性の居場所づくりをはじめ、「ナリワイ女性実践道場」、「事務局ユニット育成事業」などの趣向を凝らしたイベントを開催した。
「特別なんていらない。普通の人がちょっと頑張れば、笑顔と小銭が行き交うビジネスができる」。そんな、飾らない、決して高い壁ではないスタイルが、多くの人を巻き込み、気がつけば2年間での公開講座参加者は延べ900人、起業塾の卒業生は31人にもなった。
地域にムーブメントを引き起こした活動は県内でも広く知られるようになり、その活動が評価されて2017年「山形県男女共同参画社会づくり功労者等知事表彰チャレンジ賞」を受賞した。
現在の活動内容
半年間、じっくり耳を傾けあい、夢も悩みも話し合った仲間だから、絆も強い。これまで培ってきた人の輪の中から、新たな活動も生まれている。
また、2017年4月には、起業講座の修了生による「ナリワイALLIANCE(アライアンス=同盟)」がスタートした。プロジェクトの中核で活動をおこなう菅原明香さんが代表となり、ナリワイの輪を広げる活動を展開している。
「今はすべて自主運営なので、大規模な活動はできませんが、ゆるいつながりの中でお互いを応援し合い、『自分の得意×地域の困った』でナリワイを作っていきたいと思います」(菅原さん)。
ホスピタルハートアクトのチラシとイベントでのショット
今後の目標・メッセージ
「ナリワイALLIANCE」の代表を務める菅原さんは、英語の通訳とイラストの仕事を請け負うことができる、起業塾の卒業生だ。地元出身の菅原さんは、高校を卒業後、「海外で勉強したい」とアメリカの大学へ進学。帰国後は結婚して三川町の英語指導員に従事したが、出産を機に退職し、子育てに専念した。
長女が1歳と半年を迎える頃、子育て中心の生活に余裕を感じたと言う。「何か自分のためになることをしたい」。子どもと過ごす時間を大切にしながら自分の得意分野を活かす“ナリワイ”を求めて、2016年に開催された起業塾に参加した。
「起業塾は約半年間でしたが、ただ教えてもらうというのではなく、みんなで話していく中で気づくという感じでした。自分で判断して、自分の人生を決めていけることがナリワイの魅力。妻でも母でもなく、自分自身の存在を確かめることができる働き方です。まだまだ迷いも多いのですが、自分の道を、仲間と一緒に進んでいきたいと思います」。 ほんの少しの勇気と、不安を吹き飛ばす仲間たちがいれば、女性も男性も輝ける。鶴岡市発“ナリワイ”の輪が、今も広がり続けている。