ガールスカウト山形県連盟 前県連盟長、監事
辻原 吉子さん
チャレンジ分野:

プロフィール

1994年 ガールスカウトリーダー

2009年 山形県支部広報委員

2010年 ガールスカウトトレイナー

2011年 山形県支部副支部長、日本連盟組織・運営委員に就任

2012年 山形県連盟副連盟長

2013年 山形県連盟連盟長、日本連盟組織・運営委員長に就任

2016年~山形県連盟監事

チャレンジのきっかけ

 ガールスカウトは、今から108年前にイギリスで創立した国際的な社会教育団体。世界150カ国で展開し、5歳から100歳までの会員が活動している。2015年に結成25周年を迎えたガールスカウト山形県連盟には200名ほどの会員が在籍している。2013年から4年間、山形県連盟の連盟長を務め現在は監事として会を支えているのが、辻原吉子さん。辻原さんは東京教育大学(現筑波大学)を卒業後、高校や山形大学で体育教員として勤務し、現在は山形大学地域教育文化学部や国立病院機構山形病院附属看護学校で非常勤講師、また山形市内のカルチャーセンターで講師として活動している。

 辻原さんがガールスカウトと出逢ったのは、辻原さんの長女と次女がガールスカウトに入団したことがきっかけだった。大人と子どもが共に育つ「共育」を大切にしていたガールスカウトの活動に、辻原さん自身も関わっていくうちに、役員の方からガールスカウトリーダーにならないかという誘いをうけた。

 「はじめのうちは、子どもの送り迎え程度の関わりでした。しかし野外活動、社会貢献、国際交流など多様なプログラムに参加しながら、「自ら考え行動する女性」「責任ある世界市民」を育てることを目的としたガールスカウトの活動は、子どもだけでなく私にとっても、意義深いものになっていきました。様々な体験活動を通し、学びを深めながら、ガールスカウトトレイナーの資格も取得し、ご縁があって昨年まで山形県連盟長を務めさせていただきました。」

ガールスカウト山形県連盟監事 辻原吉子さん

チャレンジの道のり

 県内のガールスカウトは9カ団。山形市に4カ団、天童市、寒河江市、新庄市、米沢市、庄内町に各1カ団がある。それぞれの団ごとに、幼児(就学1年前)、小、中、高校生の会員が、街頭募金活動やキャンプなどの自主活動をしているが、年に1~2回、合同で活動をする機会が設けられている。山形県連盟が結成25周年を迎えた2015年には、記念事業として、みはらしの丘の市有地に桜やこぶしなど47本の苗木を植え、ガールスカウトの森が誕生した。植樹した翌年からは育樹活動を行い、2016年度はカマの使い方を学び、森の下草刈りを実施。森林インストラクターによる森林学習では、親子で森の中を散策しながら森林の大切さを学び、環境問題への理解を深めた。

 「私が連盟長を勤めていた期間は、結成25周年記念や北海道・東北地区成人研修会の開催など、大きな行事が目白押しで、とても忙しく過ごしました。特に大きなイベントは、やはり「ガールスカウトの森」づくりでしたね。場所選びや、放置されていた森の整地等の苦労はありましたが、多くの方々にご協力をいただき、植樹できるまでになりました。春一番に花が咲き、秋にはきれいに紅葉し実がなるという、懐かしい里山を再現できるよう、大山桜をメインに、エゾアジサイ、イタヤカエデなど季節ごとに楽しめる日本の植物7種類を選びました。中でもユズリハという樹に、私は特に想い入れがあります。ユズリハは、若葉が生えそろった頃合を見計らって古い葉が一斉に枯れ落ちるという育ち方をすることから、世代交代を表す樹と言われています。良い活動を次の世代へ伝える、そのような意味を込めて植樹した木々の成長と共に、会員の成長も楽しみにしているところです。」

ガールスカウトの森にて

現在の活動内容

 2017年度も里山の保全活動の一環として引き続きガールスカウトの森の育樹活動を行った。7月には、森林を覆い尽くす「くず」の根の駆除。くずはとても生命力が強く、根を深くはるために駆除は容易ではない。放置するとせっかく植えた若木が枯れてしまうことから、専門家の指導を受けながら、会員は力を合わせて作業を行った。手作りのキリ(くぎと板)でくずの根に穴をあけ、駆除剤(ケイピン)を投与するというもので、会員たちは慣れない道具を手にひとつひとつ根気強く作業にあたった。そして秋には2度目の育樹活動を実施。手作りの名札を用意し、木に取りつけた。また森林学習ではロープワークを学び、竹とロープを使った座布団づくりに挑戦した。

 また東日本大震災の記憶・復興への想いを風化させないため、そして防災への意識や技術を高め、生きる力を学ぼうと、3月11日に合わせてKIZUNA Dayを実施。山形市市民防災センターを会場に、ガールスカウトのモットー「そなえよつねに」を合言葉に防災グッズの手作り体験や、専門家の指導でカードゲームを通して防災をわかりやすく学んだ。

 「ガールスカウトの活動は、学校や家庭でできない部分を補う社会教育だと考えています。2020年度は学校の学習指導要領が変わり、アクティブ・ラーニングが導入されます。これは一方的な教育ではなく、子どもたちが主体的に協働的に学ぶという、ガールスカウトが先んじて行っていた教育と同じです。そう考えると今までの活動が確かなものであると認められたような、嬉しい気持ちになりますね。今の子どもは知識があってもそれを使う力がまだ足りていないのが現状だと思います。知識を使う力としての考える力、プレゼンテーション能力、コミュニケーション能力や判断力等々がガールスカウトの活動を通して身につき、より一層の心の成長が図れることを確信しています。」

クズの駆除作業の様子
みんなで協力して植樹・育樹作業を行う
KIZUNA Dayにてゲームを通して防災を学ぶ
KIZUNA Dayにて防災グッズの手作りに挑戦

今後の目標・メッセージ

 2020年には30周年を迎える山形県連盟。また日本連盟も100周年を迎える記念の年だ。

 「ガールスカウトは女性のみの団体です。男性と協力し合うことも素晴らしいことですが、女性だけだからこそ伸びる部分があると考えています。例えば重いものを移動する際、男性がそばにいるとつい男性に任せてしまいますよね。でも、もし女性しかいなければ、みんなで力を合わせて持ち上げたり、時には小分けにするという知恵を使うでしょう。女性自身で考えることで、女性自身に力をつけていくことが大切です。少女・女性だけで活動することで、少女・女性の可能性を引き出しやすい環境を作っております。また、体験による学習方法を用いたガールスカウトの活動は「積極的に人と関わる力」「仲間と成し遂げる力」「挑戦しようとする力」が培われ、自己肯定感が高くなることが実証されています。最近は、核家族や兄弟が少ない家庭が多く、自然よりゲームなどのバーチャルな世界での遊びが増えるなど、日本社会は急激に変化しています。こういった時代だからこそ、自ら考え行動できる力、自分の人生の舵取りができる力をつけて欲しいと願っております。私はガールスカウトの活動を胸を張って推薦できます。今後も少女たちの活動の輪が広がることを切に望んでいます。」

 出生数の減少にともなって、入会する子どもの数も減っている昨今。塾などの習い事で子ども自身が多忙になっているのも一因だ。ガールスカウト活動を通して、バーチャルではなく、五感を使って生きる力を身につける。子どもたちの健全な成長を願う辻原さんら成人の会員は、これからもボランティアで活動を支えていく。

(平成29年12月取材)