プロフィール
高校を卒業後、調理師専門学校で調理師の資格を取得。
専門学校を卒業してから現在まで、戸沢村内の学校給食を30年以上作り続けている。
2016年より戸沢村女性消防隊に入隊し、2017年に開催された「第23回全国女性消防操法大会」では指揮者を担当。準優勝を獲得した。
平成30年度功労者等知事表彰チャレンジ賞を受賞。
チャレンジのきっかけ
「戸沢村を離れたいと思ったことは一度もなかったです」と話す高橋裕美さんは、学校に通う時こそ戸沢村を離れたものの、就職はやはり村内を選び、取得した調理師の資格を活かして学校給食を作る仕事に従事した。地元で出会ったパートナーと結婚し、現在は戸沢村立戸沢小中学校の生徒315人分の給食を毎日作っている。趣味は体を動かすことで、バレーボールや体操、最近ではスキーを始めたというアクティブな女性だ。

高橋さんに「戸沢村が女性消防隊の全国大会に出ることになった」と相談が来たのは、2015年のことだった。2年後に行われる「全国女性消防操法大会」のために、女性消防隊を組織することになるという。「それなら隊員を集めないと」と高橋さんも呼びかけに協力した。そして、「人に呼びかけるのだから、私も入るよ」と友人と共に入隊。ここから、約2年間の大会にむけた練習が始まった。
チャレンジの道のり
呼びかけには20人ほどが集まり、その中で高橋さんは指揮者を任命された。指揮者は実際に操法をおこなう5人の選手のリーダーとなる役割だ。
「隊の先頭に立ち、指揮するポジションなので、団員が引き締まった動きができるかどうかを左右する大事な役割でした。号令のことばを言うのも指揮者なので、声の張りや姿勢を何度も指導されました」と、高橋さんは当時の練習を振り返る。
練習は、仕事を終えた後の夜の2時間。最初は週1回だったが、大会が近づくにつれて週2回、週3回と増していった。
一糸乱れぬよう制服を着用し、敬礼の仕方から操法のひとつひとつを何度も繰り返して覚えた。男性の消防団の団長をはじめ、多くの方が熱心に指導してくれた。時には村外の女性消防団へと赴き、実際に操法を見せてもらうことで全体の流れを掴んだという。
2017年11月、秋田県で開催された大会では、14人の隊員が出場し、そのうち5人が選手として操法を行った。
「もちろん適度な緊張はありましたが、みんな自然体でした。〝できることは全部した〟という達成感のあらわれだったと思います」と、高橋さん。
指揮者を先頭に整列、基本の姿勢、かけ足行進、敬礼。「山形県戸沢村女性消防隊、只今から軽可搬ポンプ操法を開始します」という指揮者の高橋さんのことばで操法が始まると、選手は号令に合わせて俊敏に操法をこなしていった。滞りなくすべての動作を終え、退場。それから間もなく、点数が発表されると、観衆からどよめきが起こった。前評判を覆す高得点で、この時点で断トツの1位だった。
その後、大会が終わってみれば、堂々の準優勝。その快挙は多くの人に知れ渡ることとなった。祝賀会も開催され、指揮者としての成果が評価された高橋さんは、準優勝という成績はもとより、地域の防災を担う一組織へと成長するとともに、家族、消防団をはじめ、広く住民の間で、男性の家事参画や応援の輪が広がり、地域における男女共同参画に向けた意識改革に貢献。そのことが高く評価され、戸沢村女性消防隊は平成30年度功労者等知事表彰チャレンジ賞を受賞した。
全国女性消防操法大会での様子。
指揮者の高橋さんの号令とともに、息の合った操法を披露する隊員たち。
現在の活動内容
大会が終わり、次に戸沢村女性消防隊が出場するのは、県内各市町村を一周した後、という。大会のために組織した消防隊ではあるが、女性消防隊ならではの、地域に根差した活動があるはずだと高橋さんは考えている。
「現在は、月1回ほど集まって、これから何をするかを話し合っています。消防・防火の啓発活動など、私たちにできることをしていきたいですね。また、戸沢村では大きな水害が起こったこともあり、災害が起こった時の避難所運営などのノウハウを知っておく必要性を感じました。操法も忘れないように練習をしながら、地域のためになることをしていきたいです」
今後の目標・メッセージ
「現在、女性消防団をはじめ、地域の防災体制が見直されてきており、女性消防団員や自主防災組織は徐々に増えている傾向があります。地域の防災などに取り組むためには、自分たちだけの活動で終わらず、目に見える活動をする必要があると感じています。消防団と言っても、いろいろな活動があるということを、知っていただき、関心をもってもらえればと思っています」