NPOやまがたヤマネ研究会 代表 
中村 夢奈さん
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プロフィール

1984年 埼玉県富士見市生まれ
2006年 日本獣医畜産大学(現 : 日本獣医生命科学大学)応用生命科学部を卒業後、山形大学大学院理工学研究科に進学
2007年 大学院修士課程在籍中に「NPOやまがたヤマネ研究会」を設立
2012年 山形県理科支援員として東根市立大富小学校に配属(任期1年間)
2022年2月~2023年3月 山形大学地域共創STEAM教育推進センター コーディネーター

【これまでの主な役職】
・山形県レッドリスト等掲載種選定委員会委員(2014~)
・環境省希少野生動植物種保存推進員(2015~)
・日本環境 NPOネットワーク東北地区理事(2018~2021)
・山形県指定文化財保存実態調査調査員(2021~)
・日本動物学会山形大会  動物学ひろば担当(2023)
・東北環境パートナーシップオフィス事業検討委員並びに東北地方ESD活動支援センター企画運営委員(2025~)

【NPOやまがたヤマネ研究会の活動内容】
①主な調査研究活動
・希少樹上性げっ歯類の基礎生態及び好適な生息地調査(2007~)
・酒田市飛島における希少動物の分布調査並びに遺伝的起源の解明に関する研究(2014~)
・地域レンジャーとの希少野生動物の基礎行動調査研究(2018~)
・河北町鳥獣救護所サポート事業(2025~)

②主な普及啓発並びに教育活動
・環境教育イベント並びに企画展示などの実施(2007~)
・ネイチャースペシャリストクラブ(2015~)
・地域レンジャー認定制度(2018~)
・放課後理科学くらぶ(2020~)
・カードゲーム「YAMA-MONOコネクション」開発及び普及啓発活動(2020~)
・ヤマモノ★アカデミア(2024~)

【主な受賞歴】
2015年 生物多様性アクション大賞審査員賞
2016年 「第17回環境やまがた奨励賞」受賞・日本自然保護大賞入選
2018年 生物多様性アクション大賞入賞
2021年 荘内銀行ふるさと創造基金地域貢献大賞

チャレンジのきっかけ

 生まれ育った街は、身近に自然がある環境ではなかったが、父は自然が大好きな人だった。小さい頃からいつも山や川や海に一緒に連れて行ってくれて、虫捕りや磯遊びに夢中になった。家ではトカゲ、ハムスターや犬を飼い、生き物や動物に囲まれているのが当たり前の生活だった。高校卒業後の進路を考えるようになったとき、迷わず「動物に関することをやりたい」と野生動物の研究室がある日本獣医畜産大学の応用生命科学部を選んだ。

 大学時代はフィールドワークに明け暮れた。週末は夏も冬も、長野県の軽井沢で森の生き物の調査研究と環境教育をおこなっているNPOの活動に参加した。大学2年のとき、このNPOの調査ボランティアで、初めて「ヤマネ」という動物を知った。ヤマネはネズミの一種だ。木の上で生活し、丸くなるとピンポン玉くらいになる小さな哺乳類で、ハムスターにリスの尻尾をつけたような姿をしている。国の天然記念物で、調査はほとんど進んでいないと聞き、「野生動物で、普通は見るきっかけもないようなヤマネが、人知れずいなくなってしまうかもしれない。その前にきちんと調べてみよう」と決めた。

 ヤマネは絶滅危惧種ではあるものの、基礎生態がわかっていない状態では「ヤマネを守る」などと簡単には言えないと思った。もっと調べたい、もっと生き物のことを知りたいという気持ちが強くなり大学卒業後、山形大学の大学院に進んだ。

ヤマネ専用の巣箱を観察
手のひらに乗るほど小さいヤマネ

チャレンジの道のり

 大学院では、玉手英利教授(当時)の研究室に入った。ヤマネは山形県でも絶滅危惧種に指定されていたが、最も多くヤマネの文献が残されていた山形県西川町の大井沢自然博物館の周辺で調査を開始した。

 東北で調査するのは初めてで、1年目は長野県での調査と同じように地上から約150センチのところに巣箱を100個ほど設置したが、1匹も捕まえられなかった。そんなときに地域の人との話の中で、「豪雪地帯の大井沢では、もっと木の上のほうでヤマネを見かける」と聞いた。翌年、木の高いところに巣箱を設置すると、日本で一番、ヤマネの個体密度が高いといわれている長野県と同じレベルの密度があることがわかった。

 人間も動物も、どんな小さな生き物でも、それぞれの地域に適応した生態があると再認識し、山形県ならではのヤマネの「食う・寝る・棲む」ところをきちんと明らかにして、今後ヤマネを保全していくべきなのか、どのように関わっていくべきなのかを考える基礎資料をつくろうと、山形県での本格的な調査をスタートした。大井沢だけでなく蔵王や最上地域でもヤマネが生息していることがわかり、各地で調査をおこなうことになった。

 こうしてヤマネの調査に熱中していたとき、玉手先生から「NPOを立ち上げてはどうか」と助言された。当時はまだ、学生が起業したり団体を設立するのは珍しかったが、野生動物のことを知ってもらえる機会を増やして活動の幅を広げたい、調査研究の成果を地域に還元する場をつくりたいと考え、2007年に「NPOやまがたヤマネ研究会」(以下、研究会)を設立し、同じ研究室の仲間と3人でスタートした。

 研究会では大井沢自然博物館を拠点に、ヤマネを中心にしたイベントを開催したり企画展をおこなった。最初は全く参加者がなく、博物館の学芸員の方から広報の仕方のアドバイスを受け、試行錯誤を繰り返した。しかし、イベントの内容や展示の工夫を続けていくうちに企業や学校の先生などとのつながりができ、そこから少しずつ広がって次第に参加者が増えていった。

モモンガの調査
ネイチャースペシャリストクラブの活動
(大井沢でのヤマネの生息地でのガイド)

 

 また、山形県の絶滅危惧種のレッドリストを改編する際の掲載種選定委員に選ばれた。哺乳類担当だったが、魚や昆虫など他の分科会の方たちと交流する機会になり、異なる分野の調査にも参加させてもらった。研究会はヤマネからスタートしたが、この委員会がきっかけとなって、活動がさまざまな動物の調査研究に発展していった。

 この当時は大学院の博士課程に在籍し、研究課題のためのフィールドワークと研究会の運営で忙しい日々を送っていたが、さらに結婚・出産が重なった。夫は研究会の仲間で、学生結婚だった。妊娠がわかり、研究や活動を続けながら育児ができるだろうかと悩んだとき、応募していた助成金を受給できることになり、「続けていいよ」と言われた気がした。

 出産後は、学内に育児スペースを設けてもらうなど、周りの人たちのサポートが大きな支えになった。学生・研究会代表・母親と三足のわらじを履く生活で確かに苦労もあったが、逆に気持ちを切り替えることができ、今になって「あのとき、研究だけだったら行き詰まっていたかもしれない」と思う。

現在の活動内容

 今、研究会では、調査研究と環境教育を中心に活動している。以前は、教育の面にはあまり力を入れていなかったが、自分が子育てをするようになり、未来を担う子どもたちに野生動物のことをもっと伝えたいと思うようになった。イベントやツアー、展示会などを通して、野生動物や自然を身近に感じ、知るきっかけづくりの場を提供している。みんなで一緒に調べて、新しいことやおもしいことがわかったら、もっと楽しいというのが原動力だ。イベントなどが終わった後、子どもたちからの「もう終わっちゃうの。もっとやりたい!」「また来る!」という声が一番うれしく、何よりの励みだ。

 子どもたちには、「野生動物のことをちょっと知っていると、おもしろいことや幸せがプラスになるかもしれないよ」とよく言っている。しかし、野生動物の世界では、弱肉強食で弱いものが強いものに襲われ、死ぬこともある。子どもたちには、そうした綺麗事だけではない自然の摂理、嘘のない姿をきちんと伝えることを大事にしている。

 2025年度からは、河北町児童動物園で「河北町鳥獣救護所サポート事業」を立ち上げ、ボランティアで活動を始めた。研究会では、これまで調査やイベントで多くの人たちの協力を得て捕獲や救護の技術を培ってきた。その技術を活かし、現場の役に立てればという思いからだ。

 河北町児童動物園は、山形県から野生鳥獣救護所として委託されていて、リニューアルオープンに伴って救護室が設置された。傷ついた野生鳥獣の応急処置や野生復帰を支援し、野生復帰が難しい鳥獣は動物園で終生飼育している。研究会では、救護された野生動物の処置や放鳥訓練などのほか、イベントやHPを通して「傷ついた野生鳥獣を見つけたらどうするか」といった普及啓発活動にも取り組んでいる。例えば、「巣立ちビナ」と呼ばれる、飛ぶ練習をしている野生の鳥が地面に落ちているように見えることがある。親鳥が近くで見守っていても、人が近くにいると親鳥は警戒して見捨ててしまうので、その場から離れるように、ヒナを拾わないように呼びかけるなど、対応を知ってもらうことも大事な活動の一つだ。

※河北町鳥獣救護所/研究会では、河北野鳥救護所および野生獣類救護所を統合して「河北町鳥獣救護所」としている。

河北町鳥獣救護所での健康診断
河北町鳥獣救護所で救護個体の解説
河北町鳥獣救護所でのイベント

今後の目標・メッセージ

 小さい頃にイベントなどに参加してくれた子どもたちが成長し、大学生になり、教育者や研究者になった人もいて、今ではわからないことがあると「教えて」と何でも聞ける良い相談相手になった。これからの目標は、こうした次の世代にバトンタッチできるよう研究会の活動を続けること、自分自身がワクワクするほうに常にチャレンジして調査研究に取り組み続けることだ。

 これまで調査研究や研究会の活動、結婚や出産、子育てと、さまざまな場面で先輩や後輩、先生や企業の方たち、友人やパートナーなど、たくさんの人に助けてもらい、今の自分がある。その自身の経験から、大変なときには、ためらわずに周りの人に助けを求めることが重要だと実感した。今度は、周りに大変な人がいたときには、お節介かもしれないが、自分から声をかけ手を貸したいと思っている。

 初めは自然や野生動物に興味がなくても、きっかけがあればどんどん夢中になる子も多い。しかし、イベントに参加するのは、女子と男子の割合が1対4くらいで女子が少ない。潜在的には生き物や理科に興味を持っている女の子がもっといるのではないかと思う。親御さんには、子どもの性別に関係なく、さまざまな体験をさせてあげてほしいと願っている。

子ども会向けのカクレトミヨの生態学習会
放課後理科学くらぶ

 

大学生や高校生と飛島で調査
山形市・霞城公園での野鳥観察イベント

(令和8年8月取材)