大蔵村議会議員・副議長
早坂 民奈さん
チャレンジ分野:

プロフィール

1953年、米沢市生まれ。

結婚後、夫の転勤とともに秋田市・山形市・酒田市などで暮らし、1997年に夫の実家がある大蔵村へ移住。

大蔵村の学校教育相談員、行政相談委員、民生委員を務めたほか、さまざまなボランティア活動を通して地域に貢献。

2012年、最上総合支庁が実施した、最上地域の女性団体ネットワーク構築事業「ふるさとを元気に ~女性から輝くもがみの地域づくり 初めの一歩~」の講座に参加。

2013年、「地域づくり応援団 キラッとO~RA☆DA」を発足し、翌2014年から2024年まで11年間、会長を務める。

2015年、大蔵村村議会議員選挙に出馬し、当選。大蔵村では村政初の女性村議になる。

現在3期目で、2025年度より副議長。

チェリア塾修了生

チャレンジのきっかけ

 大蔵村出身の夫と結婚し、4人の娘に恵まれた。夫は転勤族で、家族で各地を転々としていた。しかし、夫の両親が高齢になったため、末の娘が中学に入学するのを機に自分と娘たちが夫の実家のある大蔵村に住み、夫が単身赴任することになった。

 それまでは、転居した地域で、保育所の保育士や子ども劇場の事務局など子どもに関わる仕事をしていた。大蔵村に来て最初は専業主婦をしていたが、やはり人と関わりたいと思い新庄市の生協に勤め始めた。

 数年経って、大蔵村から学校教育相談員を委嘱され、週に3日、中学校に出向くようになった。その後、行政相談委員や民生委員を頼まれ、地域の人からちょっとした困り事などの相談を受けるようになり、地域と関わる機会が増えていった。また、コーラスのサークル活動に参加したり、ボランティア団体の代表を任されるようになったりして、地域の人たちとのつながりが少しずつ広がっていった。

 その頃、友人から最上総合支庁主催の講座に参加しようと誘われた。「ふるさとを元気に ~女性から輝く最上の地域づくり 初めの一歩~」という講座で、最上地域の50代から70代の、曾祖父母と子ども夫婦・孫に挟まれた“真ん中ばあちゃん世代”の女性が集まり、女性団体のネットワークを構築しようという事業だった。そこで、当時、東北公益文科大学の教授だった伊藤眞知子先生(山形県男女共同参画センター館長)と出会い、「出る杭は打たれるけど、出過ぎる杭は打たれない」という言葉を聞いて強い衝撃を受けた。

 4回の講座を受講後、地域における男女共同参画を推進して地域課題を解決していくために、自分たちで何ができるかを考えるアクションプランを発表し、事業は終わった。しかしメンバーから「せっかく学んだのだから、このまま終わらせてしまうのはもったいない」という声が上がり、翌年の2013年に「地域づくり応援団 キラッとO~RA☆DA」を発足し、2年目から11年間、会長を務めた。

 この「地域づくり応援団 キラッとO~RA☆DA」は、後に地域での男女共同参画の推進に貢献したとして2016年度の山形県男女共同参画社会づくり功労者等知事表彰(チャレンジ賞)、2021年には内閣府の女性のチャレンジ支援賞を受賞した。現在も活発な活動を継続しているが、これは裏方として運営を支えてくれる事務局の坂本静香さんの力が大きく、感謝している。

「地域づくり応援団
       キラッとO~RA☆DA」
山形県男女共同参画社会づくり功労者等
知事表彰(2016年)
「地域づくり応援団
      キラッとO~RA☆DA」
内閣府の女性のチャレンジ支援賞を
受賞(2021年)

チャレンジの道のり

 大蔵村の学校教育相談員などを引き受け、ボランティア活動や婦人会などを通して村の女性たちとの関わりが深くなると、周りから村議になるよう勧められることもあったが、「政治には関わらない」と言ってきた。

 ところが2015年、村議会議員の選挙が近づいた頃、議員定数10名に対して立候補予定とみられるのが10名で、今回も無投票になりそうだった。周りの女性たちからの「このままでいいのか」という声を聞き、自分自身の中にも確かに「選挙をせず無投票でいいのか」という疑問が生まれていた。しばらく悩んでいた時、思い出したのが伊藤眞知子先生の言葉「出る杭は打たれるけど、出過ぎる杭は打たれない」だった。その言葉に背中を押され、村議会議員選挙へ出馬する決意を固めた。初めての選挙戦は何もわからず大変だったが、支援者の方たちの協力を得て当選することができた。1889年(明治22年)に大蔵村の村政がはじまって以来126年、初めての女性村議だった。

 村議になったばかりの頃、「自分に何ができるだろうか」と思ったことがあった。その時、知人から「女性のあなたが議会の場にいるだけで、小さい針の穴だけれども風穴は開いたのだから、自信を持って」と言われた。また、ある人からは「あなたがやりたいことの軸だけは動かすな。その一本をしっかりと守って動けばいいのではないか」とアドバイスされた。その時、これまで関わってきた学校教育相談員や行政相談委員、民生委員の経験から、自分の軸は特に教育と福祉の分野だと考えた。そして、議会でも女性の視点で見て、考えたことを質問し、「村政に女性の声を届けること」を第一に議員生活をスタートした。幸いなことに、当時の村議の方たちは全員知り合いだったので、不安感はなかった。

 村議になってからは、村のことについてより関心を持って勉強するようになった。議員1年生ではあったが、行政相談などで得た知識や経験が役に立った。さらに、地域のさまざまな課題を解決するために必要な勉強会などには積極的に参加し、ときには仙台まで出かけたりした。

現在の活動内容

 村議3期目の今も、“女性の視点”をベースに考え、行動していることに変わりはない。村民の皆さんとの対話が重要なので、会合の案内がきたら可能な限り顔を出して話を聞くよう心がけ、ほとんどの会合に出席している。頼まれたことはどんなことでも断らずに引き受けることも、村議になって以来、大切にしていることだ。

 具体的な議員活動としては、少子高齢化が進む中で、高齢者や子育て世代が住み続けられるための福祉の充実に向けた活動などに力を入れている。例えば、村議になった当初から交通弱者の救済について議会で質問し、※デマンドタクシー(利用者の希望する乗車場所から目的地まで、乗合タクシーで移動する公共交通サービス)の導入を提案してきた。車中心社会の大蔵村では、運転免許を持たない高齢者は通院や買い物などの移動が大変だ。当時は、デマンドタクシーという言葉を知らない人も多く、「家族が連れて行けばいい」という考えが一般的だった。だが、女性同士のお茶飲み話の中では、「日中仕事している家族に、仕事を抜けて病院に連れていってくれとは言えない」といった話がポロポロと聞こえてきた。そうした女性の声を行政に届けるため、年に一度は必ず、議会でデマンドタクシーについて質問している。なかなか進展せず、残念ながらまだ具体化に至っていないが、高齢者が安心して村で暮らしていくためには移動手段の確保は重要だと考えているので、これからも提案を続けていくつもりだ。

 大蔵村が、通院や買い物の足があり、除雪の心配もなく、高齢の親が一人でも安心して暮らせる村になるのが理想だ。そうすれば、離れて暮らすその子どもたちが年をとった時に、自分が生まれ育った土地に戻りたいと思うのではないだろうか。

 他にも、人口減少に伴う若年層の定住についてや、災害が発生した場合の女性の視点を反映させた避難所運営についてなど、さまざまな課題について問題提起している。

 大蔵村は雪は多いが、自然が豊かだ。多彩な食文化や地域に根ざした伝統芸能も素晴らしいものがある。よく「ここには何もない」という言葉を聞くが、マイナス面だけを見ていても何も始まらない。この村で暮らしている一人一人が、もっと自信を持つべきだと思う。それには、やはり他を知ることが大事だ。他県には若い人たちが移住してきている町村もあるので、実際に視察に行き、大蔵村も「この自然豊かな土地に住みたい」という人が暮らしやすい環境にするにはどうしたらいいかなどを他の事例から学び、外からの視点も取り入れていきたいと考えている。

 議会では、広報委員長や他の委員長を経て、2025年度から副議長に選任された。2年後の改選に向けて議会改革にも取り組んでいるため仕事が増えたが、同時に、より積極的に発言する機会も増えた。

 大蔵村では、2021年度から村内の防災情報の発信や地区回覧のデータ配信などへの活用を目的に、全世帯へ防災タブレットを配付し、防災アプリ「くらっち」を導入して、村からの情報やイベント情報なども広く発信している。議会広報常任委員会では、議会の定例会ごとに「議会だより」を発行し、審議状況や活動の実態などについて報告しているが、年4回の発行で、紙面も限られている。そこで、 この「くらっち」を活用して、議員がどのような仕事をしているのか、議員一人一人がどんな活動をしているのか、より詳しくタイムリーに情報を掲載して村民の皆さんに広く知ってもらおうと取り組んでいるところだ。

今後の目標・メッセージ

 大蔵村の村政初の女性議員になったが、自分から議員になりたいと思ったわけではなく、周りの人から推されて議員になった。いろいろな役を引き受け、いろいろな人と出会った結果が議員だったと考えている。自分を推してくださった皆さんの期待に応えられるよう、これからも力を尽くしていきたい。

 “ファーストペンギン”として一歩踏みだすには勇気が必要であったが、議員にならなければできない貴重な経験をさせていただいている。これからは大蔵村はもちろん、各市町村に必ず女性議員がいるようになり、行政に女性の声を届けてほしいと願っている。

ボランティア活動で、小学校で本の
読み聞かせ
山形県男女共同参画社会づくり功労者等
知事表彰受賞者の活動発表

(令和7年6月取材)